11月18日 〜紅葉を見に高尾山へ〜      辻 淳二

 ゆっくり寝て起きると、外は久しぶりにスカッとした晴天だった。翌日の日曜日は約束があるが、この日は新宿伊勢丹で開催中の「第2世代AIBO(ソニー製の娯楽用ロボット)のお披露目展」を見に行く積りの他は何もない。それで気持ちが前向きになり、とっさに「高尾山に紅葉の写真を撮りに行き、当ホームページ次号の表紙のスベリ止めを確保しておこう」と決めた。新聞を読み食事を済ませ、河野二郎さんの健康気功塾で指導を受けている「動功」を30分やって、正午少し前に家を出た。

  京王線・高尾山口駅に着くと、駅前の2本の大きなイチョウが紅葉の最盛期で、青空の下で鮮やかな黄色を見せていた。数百メートル歩いたケーブルカーの駅前の木々も赤に黄にと色付いていて、さらに駅前の人出を見て「この週末が、今年の紅葉の見頃なんだ!」と直感した。

  ケーブルに一両待ちして乗り込み、山頂駅に着く。駅前から動植物園に向かう道筋の樹々にも目を見張る色付きが見られ、「今日のテーマは、紅葉の写真」と思い直してリュックからディジカメを取り出す。動物園の前で時間は1時過ぎ、まだゆとりがあるので「さる山に寄るか」と一瞬思うが、今日のテーマではないと浮気心を断ち切る。

  秋の山 行き交う顔に 青空が

 吊り橋の辺りの紅葉を見ようと、コースを4号研究路に取るが、そこは大したことはなく通り過ぎる。この路でのこの日の特徴は下りて来た人たちと行き交いで、急で狭い坂道ではいっときに30人位の人を見送ってから上る程の賑わいぶりだった。舗装路を外し山道を選んだ割には紅葉の劇的シーンは見られず、前日までの雨で滑りやすいコースを登り切ると、頂上は座る場所を見つけるのが楽ではないほどの人出だった。

  頂上の紅葉は、遮るもののない青空の下でなかなか見事だった。高尾山口駅の近くで買った「おこわのオニギリ」を食べながら辺りを見回すと、登山者の顔ぶれはカップルやお年寄りグループはもとより、外国人、妊婦さん、大小の犬等々と多彩だった。ここでは、あちこちに屈託のない笑顔や会話がはじけていて、青空と見事に調和していた。

 何枚か紅葉の写真を撮って、出掛けから「今日は城山辺りまで」と決めていたので、縦走路の方向へと向かう。時間は2時前、下山したら新宿の伊勢丹へという目論見から、「これが、今日の納得の紅葉」というのが撮れたら引き返すことにして直下のやや急な路を下る。すぐ下の紅葉台下の分岐で、去年植物観察で案内して貰った横道へ寄り道をする。時節は違うが、前に草花がいろいろ見られたこの道がいまどんな姿なのかを見ておきたいと思ったからだ。ところが、特に目に付く花などはなく、しばらく進んだ所で左(山側)を見上げると小山の先に青空と赤・黄の紅葉のコントラストがきれいに見えた。

  青空に 黄紅緑 茶屋の秋

  その写真を撮ろうと山肌をよじ登り、アングルのいい所を探す。所々でシャッターを押しながら、結局その小山を登り切ってしまうと、上は縦走路で紅葉台の茶屋のすぐ近くだった。下から見えた「青と黄・紅・緑の輝き」のシーンは、この茶屋のベンチ周辺の光景だったのだ。

  ここで何枚かの写真を撮ると、何となくこの先にこれ以上の出会いはないような気がして、「紅葉台の紅葉が一番きれい」と“落ち”がついた感じにも納得して、少し先の相模湖方面を展望できる所まで行って引き返すこととした。ここは、春先の桜の時期にはちょっとした見所なのだが、この時期は特別の見物はなく、夕方にかかって雲が出始めたこともあってあらたな感動はなく、先の判断が揺るぎないものとなった。

  秋深く 輝いて見ゆ カップルが

  帰路は高尾山頂には寄らず、先の紅葉台下の分岐から5号研究路に入り、薬王院上に出てメインの下山路をたどる。道端で、河野塾で「中国医学では代表的な健康食」と聞いていた百合根をお土産に買い込む。この時間帯になると、路行く人もずっと少なくなってきたが、行き交うカップルの顔が総じて輝いて見えたのが印象的だった。

  4時過ぎにケーブル上駅まで来て、一休みした所で上がってきたケーブルカーに乗り込む。下駅前の土産物店を眺めながら、高尾山口駅へと向かう。そこで、店内からTVの大相撲中継がチラッと見えて、たまたま私が「情報化による町創り」の構想立案でご縁があって親しくしている町から出たヒーロー「隆の若」が勝った(今場所は好調で、結局11勝4敗だった)のを確認できて気をよくする。これで「ここまでは全てOK」という気分になって、買い物はやめにして一路新宿をめざすことにする。京王線の中では、外が暗くなり、程よい疲れもあって、明大前を過ぎる迄グッスリと寝入ってしまった。

  6時頃に新宿に着いて、地下道を伊勢丹に向かう途中で、この一年近くここで良く見かけて関心を持っていたことを思い出した。午後の早くとか夕方とかにこの地下道を通ると、新宿の高野に入る位置に行列ができている。何かと見ると、「クリーミーメロンパン」の個数限定販売だという。その内に終るのだろうとその時間帯に通る時は注意して見ていたが、ずっと続いている。そこで「いつか買ってみよう」と思っていて、ちょうどいい時間帯だったのである。その位置まで進むと6時15分過ぎで、やはりこの日も並んでいて、ちょうど「この位置から後の人は、買えないことがあります」というプラカードを持った係員が立ったばかりだった。その人に聞くと、「この位置なら間違いなく買えます」とのこと。そこで、「今がチャンス」と判断して並び、家族分(3コ)だけ買った。

  ロボットも 心を持つか 秋の夜

  伊勢丹に着くと、すぐAIBO展示フロアに直行する。いくつかのコーナーを設けて、そこに2匹ずつAIBOを置いて、女性の説明員を付けてガイドしたり、触れさせてくれたりしている。

  重さは約1.5kgで、身体の色は金色、グレー、黒の三色あって、赤いボールを検知する目や「お手」とか「ダンス」とかの声を聞き分ける耳を持ち、きちんと反応した時に首の背中側をなでてやると学習して賢くなるとのこと。

現に、「お手」と言った時に気に入らない時は首を振ったり、同じ「ダンス」と言っても状況によって違うダンスをしたり、とワンパターンでない反応をするので、「癒し系」のロボットとしていい線いってるなと親近感を感じた。ただ、ここを訪ねた目的の一つにソニー側の関係者に挨拶をしたいと言うことがあり、「30分くらい前には居たのですが・・」と言われて会えなかったのは唯一残念なことだった。クリーミーメロンパンに並ばなかったら会えたとしたら、「ちょっとした遊び心が裏目に」のケースになってしまったことになる。

  その後、折角新宿伊勢丹に居るのだからと、同店がデパートとしては先駆してユニクロ型の売り場をこの春から開いている地下2階のBPQC(フランス語でBonPrix,Bonne Qualite,Bon Chicの略)フロアに下りた。時間帯が閉店間際のせいか、レジに並ぶ人は少なく、一番お客が多かったのは私も入ったコーヒーショップだった。

  帰宅して、夕食後のデザート代りに、家人と娘と3人でクリーミーメロンパンを食べた。クリームを包み込んだユニークな食感はあったが、「ようやく手に入れた!」との私のワクワク感の割には家族の反応はイマイチだった。 [2000.11.23]

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