200422627日(木、金)         辻 淳二          
 

 久しぶりに東京ディズニーランド(TDL)へ

 この両日、私たち夫婦は、長女夫婦の招待を受けて、東京ディズニーランド(TDL)に出掛けた。実は、26日夕は当研究会とぶつかっていて、100回を超える会の開催の中で初めての欠席(終了後の飲み会のみ参加)となった。私にとっては、ディズニーランドへ行くのは、約30年前のアメリカ出張時と、子供たちが10歳台前半だった約20年前に続く3回目で、久々でもあり、孫娘の好みに合わせたゆったり参加だったこともあって、結構いろんな気付きがあった。そこで本稿では、その気付きについて書くことにしたい。

 初日、私以外の4人は、前夜から長女宅に泊まった家人も含めて、孫が今回の演し物で一番の楽しみにしている「シンデレラブレーション(シンデレラの戴冠式を模したショウ)」の座席を取るために、朝早く車で会場に向った。私は、仕事上の用件を一つだけ片付けて、昼前に会場内で合流した。JR舞浜駅を降りると、好天で暖かく、ディズニーランドの入り口を入ると、週日なのに目の前の広場はもうかなりの混雑ぶりだった。建物と案内マップを照らしつつ、人の流れを縫って落ち合う場所まで行くと、先に見つけた孫がほっぺたにカラフルなシールを貼ってぴょんぴょん跳ねながら手を振っていた。午後になって風が出たため、座席が取ってあった上記のショウは中止になり、このショウは夕方6時過ぎから遠くの立見席から観ることになったのだが、それでもまあまあのアングルから見れて、孫の熱望も叶った。私としては、この日は、この2つのシーンに臨場できただけで十分に満足だったのだが、「TDLのビジネスモデル」等について現場感覚で好奇心や連想を駆り立てられた所もあって、期待以上に楽しめた一日となった。

 垣間見えた「TDLのビジネスモデル」

 すぐに感じたのは、「ここは、中に居る間は日常のことを忘れて、夢に浸れる場だ」ということ。入り口から合流地点へと歩き始めただけで、10歳台の女性を中心に、ミッキイマウスのキャラクターの帽子を被ったり等、普段と違う自分に浸っている人たちが目に留まる。「ここは、そういう世界なんだ」と、私のような年配者でも分かる。中に入っただけで、雰囲気というか、文化というかが一変してしまう「ドリームランド」ということに、先ずは感嘆した。

次に、「ポップコーンを売っているような、他愛ないスタンドでも行列ができている」こと。その昔に人気の乗り物に1時間も並んで乗ったのは、今でも憶えている。しかし、ポップコーンのスタンドがどうだったかは記憶がない。聞けば味付けもオリジナルとのことだが、コーンを入れる容器の大きさやデザインもここならではの売り物”で、それを持っていることで「夢の世界に居る」との参加気分を高めるように作用するらしい。

また、「演し物(アトラクション)のバラエティが、一日ではごく一部しか体験できないほど、分厚くなっている」こと。比較対象の前回の記憶が遠くなってしまってはいるが、集積度および質/量が明らかに進化したとの印象だった。工夫されていたのは、行列して乗り、そして去っていくという「流れに乗るタイプの演し物」が多い中で、トウーンタウンというミッキーやミニーやドナルドの家や舟が集まっていて小さい児がマイペースで遊べるようになっている一画。面白かったのは10分くらい並べば乗れる乗り物のバラエティで、「イッツ・ア・スモールワールド」のように世界の四季をaudio visual 感覚で明るく楽しめるものから、「カリブの海賊」のように我が孫などは入り口の薄気味悪さを見ただけで背を向けてしまうものまで、多岐に選択可能になっていること。

さらに、「レストランやシアターで、ミッキーマウス等のぬいぐるみに人が入ってお客をもてなすサービスが、大きな付加価値を産む源泉になっている」こと。昼食をとった場内のレストランでも、翌朝に食事をしたホテルのレストランでも、46体のぬいぐるみが各テーブルに順に回ってきて、家族やカップル、仲間との写真撮りに加わってくれる。私たちにとっても、これは、シャイな孫が自分からぬいぐるみの所まで歩いて行ってテーブルの方に呼んで来ようとするほどの、ウエルカムなサービスだった。出される料理に「他にはない」といえる程のメニューがある訳ではないが、料金は結構な額になっており、このサービスが付加価値として組み込まれていることを示していた。

かくして、ディズニーランドとは、大は「ビッグサンダー・マウンテン」や「スペース・マウンテン」のような目玉施設から、中は上記の「スモールワールド」や「カリブの海賊」のような手軽に乗れる多様な施設、小はポップコーンまで、さらに、レストラン等での人気キャラクターぬいぐるみとの握手/写真撮影も組み合わせて、「ここにしかないものとサービスの、徹底した集積地」で、これらを挙げて入場者が夢の世界に浸れるようにナビゲートしている場とあらためて認識し、納得した感があったのだった。

 苦闘するライバル施設を想う

27日(金)は、隣接のホテルがチエックアウトが12時と遅い(ゆったり過ごせるように設定されている)ことを活かして、孫を私たち夫婦が預かって、ディズニーランドとディズニーシーを上から見ることができるモノレールに乗った。これで、前日に部分的に歩いた施設とその周辺を含めた鳥瞰イメージを持つことができた。その帰路に寄ったみやげもの店では、ありとあらゆるディズニーグッズが集積していて、「都内で孫に買おうと思っても、近くにはお店がない」日常との対照をクッキリと見せていた。

この散策の間に、私の脳裏をかすめていたのは、「トヨタとTDLとのアナロジー」だった。ここ数年来、日本企業の輝きが後退傾向にあるのを私なりに懸念しながら、「でも、このお手本があるから大丈夫だ」と信じるよすがにしているのがトヨタだった。厳しくなる世界市場を相手に、独自の経営により、コストダウンと付加価値の向上の両面の努力を継続的に進め、「日本企業でも利益1兆円企業になれる」と証明して見せたのだから。その下地があって、この日に歩きながら連想したのは、トヨタがモノ作りの世界で実現したと同様の高いレベルを、夢を売るサービスビジネスでTDLが実現しているとの思いだった。そして、日本の製造業の再生のモデルをトヨタにイメージするのと同じ連想で、日本の他企業や自治体などが経営主体となって苦境に喘ぐ「エンターテインメント施設」の再生モデルをTDLに求められないか・・と考えさせられたのだった。
 これらの施設とTDLとの違いは、「何回も来てくれるリピート客の獲得力」である。TDLの強みとなっているのは、子供や若い女性を主客としながら高齢者までが同伴するという世代間ブリッジ性、目玉となる演し物の(一回では見切れないほどの)分厚さ、「中に居る間は夢の世界」を実現できているレベルの高さ、これらのトータルとして、経済的な余力や諸事情によって一年に一回か数年に一回かは違えど、リピート利用者層である子育て世代が、「親や子を伴い、ここに来た時はいつもより財布の紐を緩めて、それぞれに夢の世界に浸る場所」として脳裏に留めてくれるだけのレベルをキープできていること。苦闘している他施設でも、結局この基本に立ち返って、経営体力見合いで目一杯の努力と工夫をした独自の個性が輝くミニTDLを実現し、利用者に夢を与え続けて欲しいなと思いつつ、昼過ぎに帰路についた。[2004.2.28


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