|
99年 5月22日(土) 辻 淳二
|
今日は、大学での講義に関連し、3年生の有志の企業訪問に同行するため新潟で過ごす日。同行する学生は、男子4人、女子6人で、前日までに決めていた。この同行者選定で「さっと手を上げることをしない」県民性(と大学関係者は言う)が垣間見えるのは例年のことで、今年は自ら申し出たのは男子2人だけ、後は追い込みの呼びかけに主として女性軍が応じる形となった。ただ、メンバーが決まると当日の動きは皆きちんとやるのは彼らの良さで、昨日顔合わせをした後では、私は早や楽観した気分になっていた。 訪問先のコンビニエンス大手DY社の地区本部への訪問時間は午後3時なので、図らずも午前中が全くフリーな時間となった。そこで、ホテルをチエックアウトした後、ちょっと落ち着いた雰囲気の喫茶店でノンビリと新聞を読む所から気ままな行動を開始した。その後は、通りすがりに見た駅近くの美術館に寄る積もりだったが、新聞を見ていて日本サッカーリーグのJ2で「アルビレックス新潟」と言う県民期待のチームが目下首位にいてこの日1時から県の陸上競技場であの岡田監督率いる「コンサドーレ札幌」と試合することに気づいた。 夏を思わせる好天、昨夕は駅頭で「トキのひな誕生」の号外を受け取って"郷に入っては・・"の気分にもなっていたので、「今日はこっちが正解」と気持ちを切り替えた。タクシーで駆けつけ新潟側の観覧席に入ると、次々とファンが到着して開始前に9割近くが埋まった(札幌側は3割程度)。ゴール後ろの席周辺にはホットなサポーターが陣取り、チームのオレンジ色の旗とカネやタイコで雰囲気を盛り上げていた。程なく試合開始、前半は0対0だったが、大勢としては新潟は劣勢、決定的なゴールチャンスが相手側に何回かあり、新潟ではGKの吉原君の健闘だけが目立つ感じだった。背広を手に持っているのは私くらいで格好悪かったが、それでも、久しぶりのサッカー観戦を十分堪能した。約束の時間が近くなったのでハーフタイムで退出し、翌日新聞を見たら1対0で札幌の勝ち、新潟は首位転落となっていた(「にわか応援むなしく」残念!)。 さて、企業訪問の方は時間通り全員が集まって、地区本部の幹部層と隣接の直営店の店長に各1時間「コンビニ・チエーンの経営と情報システムの関わり」について生の当事者の実感を話して頂いた。事前の手はずでは最初の場作りと切り出しの質問を私がやって、途中からは学生諸君が自分の関心事について自由に質問することにしていた。しかし、10人ともがコンビニでバイトもしたことがない集団だったせいか、ややよそ行きの姿勢になってしまって、学生らしい伸びやかさが出せなかったのは残念だった。ただ、現場に接することの大切さは、素直な彼らにはズシリと伝わったと思う。さらに、最後に彼らの4、5年上の人生の先輩に当たる若い店長が「この仕事は、売れ筋を切らさない発注や売れる品揃え等にコンピュータからのデータと自分の経験を組み合わせるほか、人間関係とか人事とか経理とかの勉強にもなり、店(の評判や業績)が良くも悪くも自分の責任となるのでやり甲斐がある」と話してくれたことが、学生達が何年か先の自分をイメージして気持ちを引き締める何よりのメッセージになるだろうと私には思えた。彼らは、このメッセージをどの程度の当事者感覚で受け止めてくれただろうか。 訪問先の関係者は、土曜の午後遅くまで仕事をする忙しさの中で、オープンに我々を迎え入れて下さった。組織を挙げて「若い人の意見を聞きたい」という気持ち/関心を持ち、歓迎して下さったようだった。同社には今回でもう四年目、真に有り難いことである。 5時過ぎに辞去し、6時前には新潟駅前に戻れたので、近くの飲み屋で食事をすることにした。ここでは彼らももう肩の力が抜けて、明るい会話が弾む飲み会となった。話し始めて、例年に比べ、「資質はいいのに、自分の旗色を出すのに慣れていない」純粋な人が多いように感じた。そこで私の方からは、「毎回何か、こちらの働きかけにえらく素直に応えてくれるなと感じることと、見事に読みを外してくれるなと感じることがある」と言った、週1日通う非常勤講師側の手の内を明かす話をした。そして、「今回の企業訪問もその働きかけの一つ、参加した君たちは現場を知る良さを実感できたけど、他の仲間たちはまだそれに気づいていない。だから、次の講義の時に、一人5分ずつ、何でもいいから今日参加して感じたことを皆に話してくれるといいのだが」と問い掛けた。これに対する反応は交々で、「やらなきゃな」と受け止めた能動派も「皆の前で話すなんて絶対ダメ」という拒絶派もそれぞれあった。そこで、「やるかやらないかは10人の相談で決めていい」と結論を彼らに委ね、8時11分発の新潟発新幹線に飛び乗った。彼らは、これにどう結論を出すだろうか。その連絡をいま、私は楽しみに待つ気持になっている。 |