「経営と情報通信」研究会(第13期第4回)記録
文責: 辻 淳二
2000年11月28日(火)に開催、出席者20人、2次会参加8人。今回は、2年前の再開後初めて参加者が20人の大台に乗るという嬉しい機会となった。当会会長の新田謙治郎さん(日本電気(株)常任顧問)自らの話題提供だったことから、「新田さんに会いたいから来た」人も5人くらい居られて、久々の盛況となった。
内容は、新田さんが親しくされている寺島実郎さん(三井物産戦略研究所長)が今年出版された『1900年への旅』(新潮社)が「歴史認識の射程を長くとり、地理的空間軸を広くとると、時代認識は深まる」との持論を実践された好著なのに鑑み、北米でのビジネス/生活体験の長い新田さんの目でその論旨/エッセンスを取り出し解説して頂いて、そこから更に絞って、「参加者による討議」の話題を切り出して頂くという趣旨に沿ったものだった。
[注] この思考過程を書き記された「レクチャーメモ」を、本HPの「耳より目より情報」欄に搭載しています。
こうして切り出された「討議したい話題」は以下の通りだった。
1 情熱と使命感をもって国家の将来を思索し、行動する人がなぜ減った?
2 「脳力」、「思索力」の衰えは何に起因しているか?
3 情報戦争にもならない国家の情報収集、諜報活動の低下は?
4 国際会議での相変わらずの発言力の無さは?
5 多国間外交にいかに対処できるか?
6 21世紀を方向付ける種は何か?
7 21世紀にもファシズムは台頭するか?
8 市場競争至上主義のアメリカ的資本主義か、欧州的市場経済下での社民主義か?
9 日本が19世紀の欧州に学び得なかったことは?
10 日本を世界に正しく理解させる情報発信力の強化の仕組みは?
お話を受けての、質議応答の要旨は以下の通り(討議時間は30分あったが、議論が尽きない感じで、さわりの討議に留まった=今後の回で 、関連の話題をまた取り上げましょう)
<質議応答の要旨>
桑門: 身近なところで「国を考えた議論がされている場所」を思いつかない。意外に少ないのではないか。所属組織の利害関係で、あるいは事情通的に話している場ばかりに見える。「国を考えた」場はないのだろうか?
新田: 企業でも利益優先で考えて失敗した例は一杯あるから、そういう場だけだと明らかにまずいのだが。思い出したことが二つある。一つは、一年ほど前にNHKで教育基本法のことを放映しているのを見たが、これの制定の時に当時のそうそうたる人たち(重光、芦田、天野など)が侃侃諤諤やったと報じていた。アメリカは「個の尊重」を前面にと主張したが、日本側ではそれに不安があって、「公共心の醸成」との両立てになったとのこと。残念ながら両方とも活かされていないという結果がいま出ている訳だが、その後の日教組の動きなどは読めていなかったかも知れない。もう一つは寺島さんの話で、「NPO、NGOの効用」にふれていて、アメリカでは一千万人が(そこそこのお金を貰って)これに貢献し、失業対策にもなって、社会的なコストを下げるのに役立てているという。且つ、それに携わっている人達が「社会に貢献している」と意識している意味は大きい。自分の体験でも、年末にホームレスや孤児への寄付を社員が持ち寄ると、部屋が一杯になる程だった。日本でも、そのような活動を真剣に考えるべきなのだろう。
椿: お話のような活躍をした人は、みんな若い時だったのでは? 年寄りをうまく取っ払ったのか? 今は年寄りが居て、若い人を動きにくくしているということだろうか?
新田: 鈴木大拙など、高齢になって活躍した人も居る。多くの人は藩から13〜20歳で海外に送られた。岡倉天心などは、28歳で東京美術学校(今の芸大)の校長になり、35歳で辞めてボストン美術館の東洋美術部長になったという、今では考えられないキャリアを進んでいる。
辻: 第2次対戦後の復興期も、若い人が抜擢されて力を発揮した例になっている。
石井: 幕末に若い人を海外に送って、国造りを彼らに任せるしかなかった。いま、その「任せる」がなくなっているのも問題なのかも知れない。
辻: たまたま読んでいる本に関連の話が出ていて、陸軍の上層部から乃木希典は「箔をつけてこい!」と言われ、児玉源太郎は「勉強してこい!」と言われて出かけたと、人によってミッションの託し方を変えていたと見られることが書かれている。
新田: 「企業のため」と「国家のため」は明らかに視点が違うから、そういう方向付けは大切だ。
橋本: 企業レベルでは、7〜8年前にアメリカのベンチャー企業を回ったことがあって、その時にソニーや松下がすごい投資をしているのを知った。あの頃、企業は結構(時代を捉えて)動いていたのでは?
新田: ソニーは日本企業では別格で、松下などは「パッシブに情報を受信する」レベルだったと思う。NECにも、「日本に進出したい」「日本の製造技術やお金を活かしてビジネスを」という話はいろいろ来たが、受け身の情報ばかりだった。そこで、米国のベンチャー・コミュニティーに積極的に足を踏み入れて情報を主動的につかむためにベンチャー・キャピタルを立ち上げて帰った。そこからの情報には宝の山が含まれている筈だが、日本側で対応できたものは非常に少なかった。「not invented here」の感覚が邪魔をしたようだ。
黒木: 今の日本は、やはり指導者の問題が大きいだろう。特に政治家だ。加藤氏もハイジャックで政権を狙った感じで、ガッカリさせられた。明治の頃は「食うか、食われるか」で踏ん張ったが、今は世界とやれる指導者がいない。その育成システムを何とかしないと。
岩田: 結局、教育の問題に行き着く。平等主義が行き過ぎて、伸びる力をそいでいる。ロシアでも、スポーツ等を見るとエリート教育で有能な人を伸ばしている。ここを直さないといけない。
黒木: 今日の話からも、「エリートを作らないと国はもたない」のでは?
新田: 昔の仕組みがそのまま残って、時代に合っていないのが問題だ。クリントン大統領が「在任中に日本の首相7人と会った。日本は指導者なしでやっていけるすごい国に見える」と皮肉ったと聞いたが、リーダーシップを取らせないように全体が機能してしまっている。
桑門: 泥船に乗っているのに、本気で活動している人は一割くらいだろうか。もっと沈まないとダメなのか。
橋本: 日経に出ていた「日本の教育を考える」という記事を見たが、英国病というのか、指導層が「子弟をいい学校に入れる。汚い仕事をさせない」と発想している内は、(大変革は)難しいのでは?
− 以上 −