「経営と情報通信」研究会(第13期第5回)記録
文責: 辻 淳二
2001年1月17日(水)に開催、出席者13人、2次会参加5人。新年初会合だったが、直前に欠席に変更となった人が5人も出て、人数は13人に留まった。
内容は、椿正明さんが(株)データ総研の社長を退かれ代表取締役会長にご就任されたのに伴い、15年に渡る社長体験を振り返ってのエッセンスをご開示頂いて、参加メンバー一同にて長年の経営トップとしてのご苦労を労うという趣旨に沿ったものだった。
[注] 『おかげさまで15周年と3ケ月』と題した「レクチャーメモ」(内容の構成は以下の通り)を頂きましたので、内容を読みたい方は事務局にご連絡下さい。
・ きっかけ
・ コンセプト
・ こだわり
・ 言い分
・ 思い込みと鈍感で耐える
・ 学んだこと
・ 期待
・ これから
お話を受けての、質議応答の要旨は以下の通り。
新田: システム構築の現場を離れて20年近いが、最近「WEBコンピューティングを使って短期間にシステム開発する」と聞いた。こういう開発法とDOAとの関係はどう考えたらよいか?
椿: WEBコンピューティングに詳しいわけではないが、ビジネスモデルつまり「I/Oと人間がいる世界」は100年経っても変らないので、WEBだからと言って特に変わったことはないのでは? つまり、データは、例えば"発注品番"をとっても、荷姿込みだったり別だったり、また特許などを含んでいたりというようにいろいろあって、データ項目はエンティティに位置付けて見ないと定義されたことにならない。帳票上のデータも、名前でデータ項目の意味がわかることにならないし、帳票上の名前が同じでも指図用と計画用とでは意味が違うことがある。
倉石: ERPを主業としていて、今はもはや自分でシステムを作る時代ではないと認識している。今日のお話と関連付けて考えれば、データとプロセスとあって、データはユーザーが作る必要があるが、プロセスはERPパッケージをベ−スに作るという形で、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を支えるシステムの実現においてDOAとERPは両立すると受け止めた。但し現実には、データ定義の仕方が各パッケージで異なるとか、パッケージがめざす、BPRに必要な機能/性能を満たしていない等の隘路があって、うまく行っていないようだ。お話にあったERP−U(2010年)では、このような問題はうまく解決できるのだろうか。
椿: ERPはソフトの作り方の一つで処理ロジックを提供してくれるが、データの定義はユーザー各社で登録しないとダメだ。多くの会社では部署間やシステム間にデータの偏見や矛盾を抱えているので、偏見を調整するように設計し直さないときれいなデータにならない。従って、「最初にリソースデータを固める」が基本原則となり、例えばERPでデータ項目として用意されてない項目は新たに用意しないとダメということになる。当社でもERPを知っていないと仕事ができないので勉強に行かせているが、行った社員らはERPパッケージをデータ構造図に引き直して理解しようとしていて、両者の関連は掴めて来ている。そこから推察して、ERP−Uではユーザー企業の欲しいデータを全部表現できるようになると思う。
辻: 実際にその辺を実現してくれるのは後継者たちでしょうね。
椿: 人は育ってきているので、"脈あり"と信頼している。
倉石: 今のERPの世界では、日本ユーザーは外国のパッケージに合わせている。打破するには日本から発信しないとダメなのに、ベンダーの足並みが揃っていない。お話の中に「日本から発信」があったが、何とか頑張って道を拓いて頂きたい。
椿: 日本ではこれまでメーカー主導、つまりシステム・アプリ重視で実現手段寄りでやってきている。ところがこちら側は陳腐化が早い。当社は逆に長持ちするビジネス側からアプローチしている。その間をどう繋ぐするかがポイントで、ここで日本が主導できるようにならないといけない。
新田: 5年ほど前に、ERPパッケージのSAPをアメリカの会社で導入した経験を話そう。前にシステム部門主導でやらせてダメだったので、その時は「エンドユーザ(EU)主導」「ビジネスプロセスを変えろ」「パッケージを使え」を明確に指示して、短期間に成果を出すためにコンサルタント会社を最大限に活用した。この時に12億円のシステム化投資をしたが、内訳はハード2億、SAP関連4億、コンサルタント会社(アンダーセン)6億だった。コンサルが大きいのは、「短期実用化だが、失敗は絶対に許されない」と脅しをかけてSAPの世界中から経験豊かな人を集めて貰ったりしたためだ。彼らはさすがに優秀で、約1.5ケ月でEU代表にヒアリングしながら教育し、その間にパラメータ設定をして、仮のシステムを立ち上げた。これまで発注から売上までのorder to cashの流れが分断されていたのを一連させ、一人でやれるように変えたのだが、それを上記の仮のシステムをEU代表に使わせながら改良し9ケ月で実用システムに仕上げた。これで大きな効果を上げることができたが、SAPの中に部品がちゃんとあったことが効いているのだろう。
椿: リソースデータの一元化ができていたのでしょう。
倉石: SAPは世界の優良企業のベストプラクティスを部品として持っているので、海外企業では即効力があるのだろう。日本企業では(例えば)「手形があるからカストマイズ」となって、即効力を活かせない。
− 以上 −