「経営と情報通信」研究会(第14期第1回)記録
文責: 辻 淳二
2001年6月13日(火)に開催、出席者17人、2次会参加5人。今回は、第13期の決算報告をし新しい期に進むための総会と、話題提供は倉石英一さん((有)ケイアンドケイ・コミュニティー・代表取締役)の「ERPの展望〜第2世代への胎動始まる〜」、この2つを合わせて開催した。
内容は、先ず総会において、議案2「決算報告」について久しぶりの4万円余りの黒字、議案3「役員選任」について前期通り再任、議案4「予算」について研究会およびホームページ発行を主に収支ほぼトントンの計画を、それぞれご承認頂いた。次に話題提供は、近年「ERP研究推進フォーラム」研究員としてERPの思想および同用途のパッケージの日本企業への普及状況を諸角度から調査研究し、そのベースの上に今後の普及や次世代ERPの可能性を感じておられる倉石さんのお話だった。
お話を受けての、質議応答の要旨は以下の通り。
山田: 「ERPはBPRとセットで普及」とのお話だったが、企業経営は時々刻々の進化を求められている。ERPは導入にかなりの力を要するが、導入企業が「dynamicに進化する」のにどれほどのパワーになっているだろうか。
倉石: 入れるのにかなりのエネルギーを要するのは確かだが、ベンダーも次々と機能を強化している。例えばSAPはモジュール(コンポーネント)という概念を持ち込んで新しいニーズに対応しており、ある程度追随できていると見ていいのでは。椿さんは「DOAをきちんとやっておけば、ERPを入れても対応はし易い」と言われていて、それも対策の一つかと思う。
山田: 今のところ、日本ではベンダー主導?
倉石: ユーザーでもworld wide の戦略で動いている所などは、主導的だ。例えば、製薬など業種別のユーザーグループができて、要求を出す動きになっている。ユーザーの多い所では、ベンダーも前向きに対応の構えだ。
山田: 東大の藤本先生は企業の競争力を次の3つの切り口で評価しておられる。
@ スタティックな能力
A 改善能力
B これらの能力を向上させる進化能力
そして、トヨタに関しては「世界レベルで見て、AとBが優れている」と言っておられる。一方で「かんばん方式は世界で導入されているが、多くは効果は中途半端でトヨタとは画然の差」とハーバード・ビジネス・レビューで読んで、B項のdynamic な進化力の違いと見ているのだが。そこで、先ほどの「ERPをdynamicに進化するのに活かせるか」の質問になった。
倉石: トヨタでは、コアコンピタンス部分にERPは入らない。「うちの方がいい」と思っているし、思想がマッチしないと入れる話にならないから。実際、会計と人事では入れているが、ここはコアではなく、「早く、安く実現」の合理性で行ける所だからだ。
一方で、売上げ100億規模の企業には業務プロセスも分かっていない所が多く、そこでは導入して現状認識ができるだけでも意義がある。
これからはSCMでもCRMでも企業間のコラボレーションが必要で、これらにdynamicに応えるには次世代ERPが必要になろうが、それでも「しょっちゅう改革」の企業には対処できないだろう。
新田: 示された企業アンケートデータは、“BPRが先49%”と“ERPが先34%”とあったが、実態は逆だと思う。中小企業では理屈通りにできることはごく少なく、アンケートだから格好つけたのでは? また、自分自身の経営者としてのR/3導入体験を言うと、「パッケージに業務を合わせろ」と強く指示して効果を挙げた。例を挙げると、導入前には「受注処理、納期回答、代金回収など一連の業務の担当者が別々で、システムも別々だった」のを「一人が受注処理から回収までやる」ように変え、大きな効果をものにした。
倉石: アンケートについては、バイアスがかかったかも知れない。当然、中小企業の方が“パッケージに合わせる”筈だ。日本の商習慣上なくてはならない機能(例えば、手形とか、値段を決めないで受注とか、製番管理とか)も少なくないが、カスタマイズできるのは大企業だろう。
また、カスタマイズのし易さもパッケージによって違うから、R/3向きか、Oracle
Applications
向きか、当該の業務だとどちら向きかをかなり早い時点で判断する力も必要だ。この2つだと、Oracle
の方が生産性向上ツール的に使えてカストマイズもし易いと言われている。もう一つ、対応できる機能があるのに「勉強不足のままパッケージを変えてしまう」という例も少なくない。
浜田: 先日出版した『IT文明論』に「何故、ERPは経理/人事での普及に留まるか」について、「ベンダーが提供しているテンプレートは、スーパーモデル用のウエディングドレス」と書いた。つまり「普通の会社は着られない」ことがパッケージ側の問題で、使う側では「コンセプトを理解しないで入れている」のが問題と書いたが、これについてのご意見は? もう一つ、ERPクロスの話があったが、いまAPSを業務で担当していて、製造業では避けて通れないと思うのだが、ERP以上に認識が薄いと感じる。これについてのご見解は?
倉石: APSは製造業固有で、その分、知れ渡っていない。詳しくは知らないが元々MRP−Uから発展した筈で、日本の国際競争力ある企業は「パッケージを入れなくても・・」と自信を持っている所があるのでは? 最初の質問は、「第一印象でそういう判断をしてしまい、多くは競争部分でない会計/人事に入れ、販売/在庫に一部が入れている結果になっている」と見ている。パッケージベンダーを見ても、生産管理に強いBAANが苦戦し、「何でもやります」型のOracleが(DBMSを入れている所が多いことも効いて)伸びている。
新田: SAPは「コンサルは第三者に任せて」と、オラクルは「SIに進出」との違いでは?
倉石: いまITコーディネータ関連の資格を取る研修を受けているが、設立されたITコーディネータ協会がERP導入のコンサルをする上で、ベンダーにデータ提供の協力を求めないといけないと感じている。いまは、契約して初めて、備えられている機能が公開されるが、ユーザー企業側は決める前に知りたい。いま、協会側で「標準のプロセスモデルに各ベンダーの機能を当てはめよう」と動いているが、それ以上に、ベンダーの開発姿勢、成り立ちの背景、売り方、顧客ベース、主な活用実績などの情報を提供する方が大事と自分は感じている。ITコーディネータは、ユーザー企業の実態を良く見て判断すべきで、社長の独断的な決定を止められる力が必要だ。
− 以上 −