「経営と情報通信」研究会(第14期第7回)記録    文責: 辻 淳二                         

5月14日(火)に開催、出席者15人、2次会参加6人で、産業界の人がほとんどの当研究会メンバーが久しぶりに「最近の大学事情」を身近に引き付けて考える格好の機会となった。

 この回の話題提供は益田隆司さん(電気通信大学教授・電気通信学部長)で、『大学改革への危惧と希望』と題して、東大教授だった数年前に大学当局の「東大教授の定年延長」方針に対して反対の論陣を張られた時の各層の大学関係者の反応などを交えて、改革の機運の中でなかなか「確たる方向」を見出せていない現下の大学事情についてお話して頂いた。

 上記の「話題提供」を受けての質疑応答の要旨はおよそ以下の通りだった。

新田: アメリカにおける人のモビリティは、大学間だけでなく、産―官―学間でもすごい。交流のあるE・ヴォーゲルさんは大学と政府との間で活動の場をしょっちゅう切り替えているし、クリントン政権の国務長官はいまハーバードの学長になっている。日本ではこれができなくて、教授だった中谷巌さんがソニーの社外重役になるために大学を辞めて話題になった。同氏はいま多摩大学の学長だが、社外重役の体験を大学経営に活かしているという。このように、大学人が企業を知ることも大切なことだ。

 お話の中で一つだけひっかかったのは運営協議会の人選の件で、ここは外部の人を選ぶことが大切だと思う。当社も、アドバイザリー・ボードを作ってアメリカの有識者に年2回指導を受け、鋭い指摘を頂いている。日本では「社内が分かっていない人は役に立たない」という見方が強いが、それは間違っている。

益田: 非常勤の外部の方に権限を与えてうまく機能するのかと考えていたが、鋭いご指摘だと思う。ただ、日本のこれまでの風土にあまりないことで、われわれ大学内部の人間も相当の意識改革が必要になる。

高村: 大学の人だけで考えない方がいいということだと思う。中だけだと、大学を自分の研究や生活の糧にしている立場の議論が強くなってしまう。私の関心事から見ると、「学生が大学でどう動機付けされるか」が大事ということになるが。

益田: 現在の大学はどこも、昇格などの時の評価の基準が、研究になっている。教育が評価される仕組みにはなっていない。

高村: 大学は、民間に出て活躍できる人材を拠出して欲しいのだが。

益田: 現在の大学の教員は、多くのところで研究業績を基準にして選ばれており、たとえば、教育において優れている人、産業界での実務経験が富んだ人などを、素直に採用できる仕組みになっていない。大学に多様な人材を揃えるには、既存の評価基準の枠組みを崩すことが必要になる。そのような方向を目指すべきかどうかは、私にはわからない。

高村: そこを崩しても、学生をmotivateする大学になって欲しい。

益田: 世間では、大学と産業界の間の人事交流の必要性が強くいわれている。この点に関して、現在の問題点は、第一に、交流が産業界から大学への一方向である点だ。第二は、下手をすると、産業界から見ると、大学が産業界の技術者、研究者の老後の生活場所、言い換えると養老院と考えられている傾向があるということだ。働き盛りを産業界で生活して、役に立たなくなってから大学に移るというケースが圧倒的に多い。このような交流では大学は決してよくならない。働き盛りの年齢で、大学と産業界に双方向の人の交流が必要だ。

石井: 企業が先端分野の共同研究などで、大学ともっと切磋琢磨する方向も必要では?

益田: 日本の有力な企業はアメリカを向いていて、大学を向いてくれない。

新田: お話にあった小林久志さんから、「日本では教育の評価が低い。アメリカでは学生が教授を評価し、これが良くないと講義時間が貰えない。また、大学から貰う給料は9ケ月分で、残りは企業から寄付を貰わないといけない。従って、企業に魅力のあるテーマを研究テーマに選ぶように動く。教授の仕事の4〜5割は寄付集めだ。」と聞いた。

石井: お話を聞いて、大学の改革はまだお家騒動的な状況にあるように聞こえた。MITなどではコンテンツを公開しているが、日本ではその点でもまだまだ内向きでは?

新田: MITには、宣伝の狙いもあると思う。

新田: 日本人の、アメリカに向かって動くモビリティの質も問題だ。留学生は中国人も日本人もアメリカに約5万人いるが、大学院への留学は中国が72%に対し、日本は17%と低い。つまり、お金持ちの子息のundergraduate+語学修得目的の留学が多く、高等教育を受ける志は低い。

益田: 本質的な問題ですね。

高村: お話の「東大理学部のフラットな組織風土」には、好印象を持った。

                                 〜 以上 〜

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