「経営と情報通信」研究会(第15期第5回)記録    文責: 辻 淳二                         

月15日(水)に開催、出席者16人、2次会参加人で、新田謙治郎さん(NEC冠顧問、当会会長)『年初に、21世紀に生きる糧を考えよう〜寺島実郎著「歴史を深く吸い込み、未来を想う」を読んで〜と題する話題提供&それを受けての討議を行った。
 昨秋に出版された寺島実郎著「歴史を深く吸い込み、未来を想う〜1900年への旅、アメリカの世紀、アジアの自尊〜」の内容に学ぶ話題提供で、参加者も16人と久しぶりの活況、前もってこの本を読んできた人もあって議論は弾み、楽しい一夕となった。

 上記の「話題提供」を受けての質疑応答の要旨はおよそ以下の通り。

[質疑/討議記録]

黒木: 日本は大戦後、平和を米国から与えられたと書かれているが、これは日本と米国という帝国主義国家同士の衝突で日本が敗れた結果としてもたらされた平和であると思う。米国には、テキサス、ニューメキシコ、ハワイ、フィリピン武力で次々と獲得してきた歴史があり、「平和を与えられた」というのは甘すぎはしないか。

新田: フランクリン・ルーズベルトが「帝国主義の終焉」を唱え、その考えの基にマッカーサーが日本に駐留して、母国でも実現できなかった理想的な民主国家を目指して「日本国憲法」を作り、復興を支援したという捉え方だと思う。

黒木: 米国はハワイのカメハメハ王朝をつぶし、近年になって謝罪決議をしているが、ハワイを王朝に戻すことはやっていない。結局、自国に都合のいいように振舞っているのであって、日本への支援もその脈絡に沿ってのことではないか。

新田: 寺島さんも、「駐留は米国の防衛政策上のことで、いざという時に日本を守ってくれるという保証はない」と論じておられる。

黒木: 日本は「有事法制」も準備できなくて、「いざという時に守ってくれ」といのは虫が良すぎる。もっとも今はミサイルの時代だから、駐留に絶対的な意味は無くなっていると思う。

新田: 寺島さんも、戦後50年以上も経って外国軍隊が駐留していることを疑問視していて、これに反対の立場をとっている。

黒木: 現実は、経済とかも絡んで日本は米国頼みになっているのであって、軍事面だけで駐留してもらっている訳ではないと思う。

新田: 駐留費用の75%は日本の負担という現実もある。

黒木: その意味からは米軍は日本の傭兵という意味合いになるが、いざという時に守ってくれる保証は無くとも、経済とかいろんなことを絡めた結果として現在の形になっているのだと思う。

新田: 日本にとっていま見逃せないのは、中国が日本を抜く勢いになってきていることだ。米国から見て、対日に比べて対中の重みがぐっと高くなってきていることだ。

平井: 日本人の文化論が好きなのでその観点から言うと、陳舜臣が「人の力を自然が圧倒的に凌ぐ中東では神を信じ、自然と偉人の力が拮抗する中国では偉人を尊ぶ、自然があまりにも穏やか過ぎる日本では神、偉人共になく強いてあげれば、ものあわれ、わび、さびである」と論じている。そのように恵まれた自然環境により外敵からも保護された中では聖徳太子の「和(ヤワラカ)なるを以(もち)て貴しとし、忤(サカラ)ふること無きを宗(ムネ)とせよ」に象徴される抑制型の制度で平和を維持する事が出来た。長い歴史を通じて培われた国民性では、突出した軍部を抑えることが出来なかった。

それと先ほどの情報戦で負けていた話だが、これもペリー来航まで恵まれた自然環境に保護されてきたため、国際社会における政治、経済、軍事、外交での経験・訓練・技術が不足していたためとも考えられる。この本は、敗戦後もアメリカの保護により同様に恵まれた環境が続いたが、今後はそのような保護が弱まり/無くなることも想定し、わが国が国際社会で本当に自立するために「この課題を解決することも大切」と問題提起していると受け止めた。

新田: どんどん外国との接し方を深くしていく必要があると思うが、明治の時代の方が若い人が海外に出て行き、「日本とは」「日本人とは」について懸命な情報発信をする気概は強かったようだ。いま、そういう人が少なくなっているのが問題ではないか。

平井: それは、ハングリーでなくなったからだ。日経の大機小機に、「人生における最も大切な目標は何かと問うアンケートをとったところ、日本人の若者の6割強が人生を楽しんで生きると回答している」と書かれていることが、それを裏付けていると感じた。

高村: 平和ボケは確かにあるが、そういう層が6070%居ても、目覚めた層が710%いてリードすれば変われると思う。危機感を持って一部の人たちが動き、敗北主義を脱することが大切だ。

黒木: 大戦中には「鬼畜米英」と言っていたのが、戦後は態度を一変させてしまった。先の大戦の責任をA級戦犯だけに負わせて自分は無関係と装う態度こそ、問題にすべきだ。

高村: 教育で、「リーダーは・・でないといけない」ときちんと身につけさせることが必要だ。教育を「国民が・・を望むから」の視点で議論してはダメだ。軍の突出を抑えられなかった、ある方向に行き始めたら抑えられない国なのだから。倫理観を教え、それを守らせる事が必要なのに、日本には守らせるルールがない。

黒木: 「守らせる」を超えて、「自発的にやる」ように持っていきたい。

安藤: この本につき書評のようなものを書くとして、特に「この点が」と批判的に論ずるようなことはない。史実、文献を克明に集め、深くかつ広く論じられているからだ。ただ、「歴史」について特に、表層ではなくその底流を見抜くことが強調されているが、その「歴史の底流・本流」は必ずしも正義・条理にかなっているわけではない。強盗のように領土を切り取り合うことが本流だった時代もあった。間もなく、米国によるイラク攻撃が始まるかもしれない。この局面で日本はどう対処すべきか。現時点ではこれを自分のこととして自立的に判断することが差し迫った問題だが、「歴史」はこの問題にどう答えてくれるのだろうか。簡単には答えが出ない。

                              〜 以上 〜

 
研究会報告 表紙へ