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99年2月18日(木)に開催、出席者16人で今回のテーマに関心の高い人が多く、中身も密度も濃い会合となった。この回の話題提供は戸田忠良さん(戸田ソフトウエアオフィス・代表)で、「サプライ・チエーン・マネジメント(SCM)の意義」と題して、ご自身の研究に基づくスケールの大きな捉え方で本テーマを考える枠組みや核となる考え方を提示された。その後、このSCMの考え方を自社に適用するヒントを得たい参加者から、現実の課題に引き付けた問いかけがなされ、討議も活発で余韻を引きずりながら散会。 論旨をざっくり掴まえると、およそ以下のようだった。 『2000年を節目に、産業界のビジネスモデルが「大量生産/消費/廃棄」から「地球環境と利便性の共存」へと、画期的に変わろうとしている。それは即ち、「スループット重視」の考え方に立ち、それを「最終利用顧客に売れる物だけを求められるリードタイム内で作り、供給できる仕組み」で実現する経済社会というモデルだ。ここに、資材調達から最終消費者までを視野に入れたSCMが、21世紀の経営手法としてクローズアップされてきた背景がある。これを実現する企業戦略としては、@全体最適生産とリードタイム短縮、A部品標準化、Bアウトソーシング がキーファクターになる。ここで、上記の仕組みを持つことで少ない製品在庫で済ませつつ需要に即応できる「仮想在庫」能力というものが競争力のポイントとなり、情報技術はまさにそれを可能とするものだ。』 まさに、「戸田流に仮説を立て、パソコン産業や自動車産業でその裏付けをとって検証した」大きな構想力に、皆が感服しながら聴いたひとときだった。 |
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「サプライ・チエーン・マネジメント(SCM)の意義」 戸田忠良 〜「もう一つの2000年問題=21世紀型ビジネスモデルへの転換」との関連 1 SCMとは何か @ サプライ・チェーンとは製品の調達・製造・販売の全サイクルのことで、製 品がユーザーに届くまでの部品の調達・製造・流通・販売などの一連のプロセスの連鎖を指す。 A SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の概念は、生産管理のための情報システムの発展とともに出現した。1970年代に登場したMRP(原材料所要量計画)では、計画された製品の生産量を賄う部材の所要量を計算する機能はあったが、各工程がそれらの量を生産できるかがどうかの計算をすることは出来なかった。SCMは各生産工程の負荷まで勘案した実現可能な生産計画を算するシステムに源を発している。このような各工程を企業の壁を越えてサプライ・チェーン全体で最適にしようとする考え方がSCMである。 B このような産業全体の観点で再構成が行われた製品にパソコンがある。パソコンは幾つかの共通の部品(マザーボード、筐体、外部記憶装置、出力装置、入力装置など)を組立てることで生産される。 C パソコン産業のサプライ・チェーンは、最終市場での受注産業化を受けて、上記の部品生産までは見込み生産であり、最終のパソコンの組立部分が受注産業化している。そのため、余剰部品を融通しあう「余剰部品市場」やパソコンの心臓部であるマザーボードをパソコンメーカーに変わって生産する「製造アウトソーシング企業」(代表はソレクトロン社)が急成長し、メーカー系列を越えた再編成が進んでいる。このようなサプライ・チェーンの仕組の上にデル・コンピュータの急成長が支えられている。 2 TOC(Theory Of Constraints)=SCMの中核の論理 @ TOC(制約の理論)=イスラエル人物理学者ゴールドラット博士の提唱する生産スケジューリング・ソフトOPT(OptimizedProduction Technology)の背後にある考え方のこと。基本は、システムの目的達成に障害となるものを制約条件と表現し、この制約条件だけを集中的に改善することで、最小の努力で最大の成果が獲得できるというもの。 A TOCのスループット理論=生産によるのでなく、販売により生み出された貨幣を最大にすることが企業活動の目的であるとするもの。この考え方は、従来のたくさん生産すればコストは安くなるという考え方に疑問を呈し、販売されなければ貨幣には変わらないので、その量の増加こそが問題とする。 B TOCのスケジュール理論=ドラム、バッファー、ロープ:工場のアウトプットは制約(ボトルネック)工程に合せて他の工程も生産を行えば過剰生産に陥ることがなく、その合図を「ドラム」と称する。また、制約工程が100%の稼働率で動くことが重要なので、その工程の前に最小限のバッファーを持つことが有効。ロープとは制約工程に合せて先頭工程に材料投入を行うと過剰仕掛品が発生しないことを指す。 C このような考え方を反映した会計処理=スループット会計という。一番の違いは、資材の加工が進展すると価値が上昇するという従来の原価計算を採用していない点。従来の考え方は、製品が資産勘定に計上されただけで、利益が出たように見えるので、過剰生産の誘因となる。しかし、スループット会計では、加工が進んでも価値を付加しない。販売された段階で価値を付加するので、売れないものは作らないと考えるようになる。 D SCMの考え方が広がることで、3つの動きが顕在化している。その一つが全体最適のSCMの実施で、インターネットを介した企業間情報交換がインフラを提供している。二つ目が部品標準化で、メーカー系列を超えて量を確保する意図で部品メーカーにより推進されている。三つ目がアウトソーシングの活用で、設備投資をした企業は、その設備の稼働率を上げるために、他のメーカ ーの同様の作業を獲得し、一方、設備投資を必要とするメーカーは既に投資されている他のメーカーの活用が有力な選択肢となる。 3 もう一つの2000年問題=21世紀ビジネスモデルへの転換とSCM @ 「もう一つの2000年問題」とは、大量生産・大量消費・大量廃棄、資源浪費の20世紀モデルから「地球環境と近代社会の利便性が共存できるビジネスモデル」(これを「21世紀モデル」と仮称する)へと転換する動きを意味する。この課題は、環境問題、資源の枯渇への対処、過剰供給力の解消、個別ニーズへの対応、グローバル化などである。 A 今日本では、「確定性経済」から「確率性経済」への転換が起っている。 「確定性経済」では、資産価値の上昇が期待でき、先の見通しが効く。一方、「確率性経済」では常に資産価値が変動し、リスク回避のためには行動にスピードが求められる。 B このような変化を筆者は「知の闘いの時代」(合理的・論理的経営に立脚する時代)への転換と表現する。そして、この変化の特徴は、21世紀型への転換が情報通信技術を利用する形で起ってくるということだ。このような全体最適を模索する動きが、QR(アパレル)、ECR(日用品、食品)、CALS、SCMという形で起り始めている。 C 例えば、自動車産業では21世紀へ向けた変化が起り始めている。一つは環境問題への取り組みとして、ガソリン車から燃料電池+電動モーターへの転換が展望されている。また、販売体制も顧客本位の方式への転換が試行され始めている。 D このような変化に情報技術が貢献する理由として、筆者は「仮想在庫」という新しいコンセプトを提唱している。仮想在庫=顧客が許容する時間内に生産・配送することが出来る能力があれば、その分だけ製品在庫を保有していることと等価というもの。つまり、製品ではなく、組立前の必要部品の手当てと迅速生産・配送能力の組の形で持っておけば、効果は同じで、しかも売れ残りの リスクが減少する。これが情報技術を活用することで生み出される効果と考えることができる。このような「仮想在庫能力」を情報技術を活用して生み出すことで、資源浪費のない産業活動が生み出されると考える。 |
[質疑応答] 椿: 仮想在庫を創り出すシステムが、世の中のスピードに対応できないとダメなのでは? 戸田: その通り 黒木: スループット会計は、キャッシュフロー会計と似ている? 戸田: スループット会計は、2000年から会計上の債権評価が時価になるので、注目され始めた。キャッシュフロー会計でも、売れない在庫があるとお金は支払っているからマイナスになる。仕掛かり在庫は、(スループット会計ではリスクと見るが)キャッシュフロー会計では今の会計と変わらない。 黒木: これは確立された概念か? 戸田: TOC(Theory Of Constraints)やSCM(Supply Chain Management)に関心を持ち、会計も分かる人が提唱しているもので、会計学会ではオーソライズされていない。本は、いくつか出ている。 椿: (実例で言えば)パソナ等は、仮想カンパニーを支えるビジネスだ。顧客企業は役立たない人を抱えないで済むのだから。 戸田: 日本企業の最大の過剰投資は、人を抱えたこと。TOCの見方だとそうなる。 黒木: 当社は製造も販売もある。そして、需要の季節変動が大きくて、売れる寸法や色などを予測して先に作り、在庫している。SCMではできないのが現実だ。デルでも対処できない所はあるのでは? 戸田: デルは企業ユーザーの比率が高く、規格品でやれる所が多い。それを活 かしている。さらに、例えば、ソフトのインストールやシール貼りのような、顧客がハードを受け取ってからやることを引き受けて(アウトソース)、すぐに使えるようにしている。瞬発力を支えているのは、生産計画や変更を即行うためのソフトで、「注文から納品までの期間を短くする(売れない物にお金を使わない)ことこそがリスクヘッジ」という考え方だ。日本企業の、今までのやり方とは全く違う。 戸田: SCMは、工場で使われていたロジックを外界で使えるように拡げたものだ。例えば、注文が入って処理して返すオンラインプログラムは、仮想在庫を扱っている。システム畑の我々は、ノウハウを持っているのだ。 黒木: 需要変動をこなすために、ピーク量をこなせる設備/コンピュータがいるのでは? 戸田: 「オプション製造契約」というか、「・・のキャパシティーを引き受ける契約」というようなものが出てくるのでは? 先物契約的なマーケットとか、できなかった時の保険の仕組みとか。 黒木: 金融は抽象概念でいいが、製造には設備がいる。 戸田: 一得意先では食えなくなって横に拡げたり、グローバル化して季節変動を緩和したり、知恵を出していくしかないと思う。そのツールとして、情報技術(IT)が活用できる。 椿: 部品の標準化は、どっちが主導権を? 戸田: 両方だろう。部品メーカーが提案するのもある。 久保: セレクトロンはマザーボードも作っている? そのメリットは? なぜ、セレクトロンが日本から出ない? 同社のトップは日本人だよね。 戸田: マザーボードを作ることでサービス範囲を拡げた。最近は、設計も始めている。 倉石: 最初のOHPの絵で、開発も含めているが、現実は? 戸田: 最終的にはここまで行くという意味で、今はまだかも知れない。コンカレント・エンジニアリングとか、プラント・エンジニアリングでは含まれているが。 |