サホロで受けた感銘     島田 正雄


 私達は、
2004.6.26から4日間、北海道の狩勝高原にある「地中海クラブ・サホロリゾート」へ行ってきた。サホロは今回が5回目、その豊かな自然環境とGO(ジーオー。従業員のこと)たちの明るいサービスぶりで、私達のお気に入りの場所である。  

 朝は12〜13度、最高気温でも22〜23度というさわやかな高原で、私達は毎日テニスを主体に楽しんだ。仲良しのテニスGOと、交流を深めたかったからである。彼とは、5月にカビラ(石垣島)で会ったばかりなのだが、その人柄に惚れ込み、生まれが同郷ということもあってすぐ仲良しになり、6月にサホロに転任する事が分かって「それじゃ、6月にサホロへ行くよ」と約束したのだった。  

 幸い、人柄もウデもいいテニス仲間に恵まれ、コートに出るのが楽しくなった。こんな事は、15年にわたる地中海クラブの利用体験の中でも初めてである。別れ際には、次回の再会を約したほどであった。  

 この4日間の中で、私達は、ビックリするような事を見聞して嬉しくなった。次に、このささやかな見聞を記す。


1 網走の小学生の修学旅行  

 2日目から、網走の小学生数十人が、修学旅行の一環としてサホロに来ていた。1泊2日のあと、他所を廻るのだそうだ。みな、とても楽しそうに行動している。サッカー・バレーボール・ピンポン・テニス・ゴルフ・マウンテンバイクなどを思い思いにこなしており、空中ブランコに挑戦する子供もいる。  

 その子供達の言葉遣いがとても正しくキレイであることが、私達の驚きだった。挨拶も、自分の方からキチンとできる。向こうから「お早うございます」と挨拶してくる。「テニスはどうだった?」と聞くと、「とても楽しかったです。次はゴルフをやろうと思います。」など、ハッキリ、鄭重に答える。都会の子供が、ぞんざいな言葉遣いをするのと雲泥だ。質問にはキチンと答えてくれる。「アア」「ウン」はひとつもない。  

 レストランの中でも礼儀正しい。事前に教育されてきたのかもしれないが、「他のお客様の迷惑にならないように」という行動をとっている。「頂きます」から始まって「ご馳走様」で帰るまで、バイキング方式の食事を、静かに楽しく食べている。食材を探し回って他の客に触れたりすると、ちゃんと謝る。騒がしい声を出す子供がいると、先生より先に、仲間のリーダー格?が「静かにしようぜ」とたしなめる。久しぶりに、礼儀正しく、秩序ある行動を取る子供達の姿を見て、嬉しくなった。  

 思うに、子供達にとっては、フランス系の会社である地中海クラブでは、フランス風のショーもあるし、食事も世界各国の料理が食べられ、GOや客も世界各国から来ているので、世間を広くする上で役立つのではないか。また、地中海クラブにとっても、特定の客筋だけでなく、地域との交流を深め、地域との融合を図る狙いがあるのだろう。  

 聞けば、地中海クラブがサホロに開業したとき、そのやり方が地元の考えと合わず、地元からの批判の的になり、地元メディアに叩かれたそうである。その教訓もあって、地元との交流を深める事とし、修学旅行を受け入れる事にしたようだ。地中海クラブの強みは、すべてのスポーツに、専門の訓練を受けたGO(インストラクター)がついていて、懇切な指導をしてくれるので、生徒の安全確保にも心配がなく、先生方も安心して同行できる事が、サホロが繁盛する理由のようである。サホロ側としても、客数の少ない時期に地もと学校を受け入れる事は、営業的にも効果的だし、地もとの好意を得る上でも役立っているのであろう。私たち、ヨソからの客にしても、孫のような子供達と、わずかではあっても交流できるし、孫が元気に動き回り、礼儀正しく行動しているのを見ると、とても嬉しくなって、「サホロはいいな」と思うのである。年配者にとって、とても嬉しいのは、若者や子供がスクスク成長して、着実に一本立ちしていくのを見守れる事であり、老人だけが集まるよりも、老・壮・幼が一緒に交流するほうが、よほど人間的に楽しいのである。  

2 帯広の養護学校生徒による空中ブランコ  

 3日目から4日目にかけて、帯広の養護学校の生徒が、先生と一緒に1泊2日で来た。体が不自由な子供ではなく、精神発達の面で少々障害のある子供だったようだ。私達がビックリしたのは、その子供達が空中ブランコに挑戦していたからである。  

 生徒のT君は、高い所に行くのが好きな子だそうだ。そして、他の子供は、T君を見習って行動する傾向があるという。T君がしっかり前向きに、ルールをわきまえて行動すれば、他の子供たちもその真似をする。そこで、主にT君を鍛える目的でサホロに来たらしい。先生の話によれば、「ブランコや滑り台などの遊具を備えた公園ならいくらでもあるが、空中ブランコはここにしかない。これにチャレンジさせることは、生徒の励みになる」「空中ブランコをやるからには、安全確保のためにも、守らなければならないルールがある。そのルールを叩き込みたい」「しかし、空中ブランコは危険なので、先生だけでは手に負えない。ここには専門のGOがいるので、安心して任せられる」 ということだった。とかく引きこもりがちの障害者を、空中ブランコに挑戦させる事は大変な事だし、それを受け入れるサホロ側も大したものだと思った。  

 地上8メートルの高さで行う空中ブランコは、高いところの好きなT君にとっても初めての体験であり、怖かったらしい。出発前は、「やりたい、やりたい」の連発だったが、イザ梯子を上るとなると、フルエがくる。壇上に立ってブランコにつかまると、泣き出しそうになる。それを見て、他の子供達がみな泣き声を上げる。  

 それでも、周りの励まし(先生・GO・子供たち・観衆)でT君は思い切って飛び出す。大成功。うまくいったので、T君は晴れ晴れした得意顔になる。T君は「もう1度やりたい」と愚図るが、それは許されない。聞けば、出発前に「1度だけチャレンジ」と約束したので、いかにうまくいっても2回目は「NO」なのだそうだ。こういうしつけも徹底している。  

 そこで、仲間のS君が、恐る恐るチャレンジする事になる。しかし、梯子を上る事がなかなか出来ない。やっと上ってブランコにつかまっても、腰がひけてどうしても飛び出せない。ブランコにさわりはするが、すぐ手を離してしまう。あまり怖そうなので、やむなく飛び出しはあきらめ、命綱を緩めて下のネットにおろす事にした。みな大歓声。降りたS君にも笑顔があった。  

 そのあとで、先生方(男性2人、女性1人)が、子供たちに続いてチャレンジする。みな初めてで、ドキドキだったようだが、どうやら成功してほんとに良かった。子供たちに「やれば出来る」ことを示したのだが、もし子供たちの前で失敗したらさぞ辛かったろうに。その失敗を覚悟してのチャレンジであった。この先生方の態度も、見上げたものであった。  

 高いところの好きなT君は、空中ブランコを1回しかやれなかったことが残念だったのか、先生の目を掠めて、近くのドーム状の室内プールの屋根の梯子を上りだす。それに気付いた先生がすぐ追いかけて、梯子からおろす。全く油断もスキもない。「先生って、大変だなー」と、つくづく思った。  

 以上は、私達の感想だが、他のお客様も似たような感想を持ったようだ。同行のMさんなどは、養護学校の生徒が毎日空中ブランコに挑戦しているのを見て、すっかりT君やS君に肩入れするようになり、自分の孫を見るような気持ちで応援していた。他の人たちも、みな似たような感触を持ったようである。繰り返しになるが、老人だけの集まりよりも、年代を超えた交流のほうが、よほど刺激的で楽しい。まして、子供たちやそれを支える大人たちが確りした行動をしているのを見ると、心から嬉しくなるのである。[2004.7.26


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