中村紘子さんの話を聞いて感じたこと   島田 正雄
 【すぐれたピアニストになるために】
 

 
 
2007年5月20日 テレビ朝日放映の 「題名のない音楽会」で、中村紘子さんが演奏し、また、羽田健太郎氏の質問に応じて自分の考えを述べて居られた。質問の趣旨は、「すぐれたピアニストになるためには、どんなことが大切なのか」ということである。中村さんの答は、次のような趣旨であった。(これは、私の受け取り方であり、完全に正確とは言えないが・・・) 

1 子供の頃(2〜4歳くらい)の音楽環境が大切

 一流のピアニストになるためには、4歳くらいまでの音楽環境が大きく影響する。この時期に音楽一家のような雰囲気で育ち、いい先生についてしっかり練習を続ければ、10歳にしてコンクールに入賞できるほどの、大人顔負けの演奏が出来るようになる。

2 イマジネーションを育てることが大切

 好奇心を持ち、構想力を燃やし、自分なりの構想を築くことが大切である。「この曲で何を表現するのか」「聞く人にどのようにアッピールするのか」「自分が語りかけたいのはどんな心なのか」など、日頃からイマジネーションを育てておこう。

3 肉体を鍛えることが大切

 ピアノ演奏には筋力が必要である。よって、常に筋力トレーニングを続けていこう。ピアニストは、野球のピッチャーとよく似ているそうで、手首・肘・肩を痛めることが多い。そんなときには、ピッチャーのトレーナーのところに駆け込むといい、とさえ言われている。 

(総合) 以上の中でもっとも大切なことは、「自分が何を語りかけたいのか」を、心の中にハッキリ持つことである。「人の心の中に入り込んでいける力」をつけることを、日頃から心がけようではないか。 

 私は、この話を聞いて感動した。私が日頃感じていることがピタリと言われており、私たちのコーラスボランティアグループである「コール有朋」の成長のためにも、とても役立つ助言であると思ったからである。「コール有朋」はプロの合唱団ではなく、合唱団設立の理念がプロとは違うので、上記1
(子供の頃からいい音楽環境の中で鍛えよう)という点については少し別の考え方をしなければならないが(その詳細については後述する)、2(イマジネーションを育てること) 3(肉体を鍛えること) そして総合(人の心に入り込んでいける力をつけること)は、全く中村さんの発言通りだと思うのである。「人の心に入り込んでいける力」こそ、コーラスの基本であろう。しかも、その力は完成する時はない。常に努力を必要とする「永遠の課題」なのである。

 「コール有朋」の現状を考えると、いま有朋に必要な音楽環境としては、次のようなことが大切なのではないかと思う。 

 我々はプロの合唱団ではなく、アマチュアによる、地域ボランティア活動を目的としたコーラスグループである。「主として、クラシックコーラスを通じて地域活性化のために貢献しよう」という気持ちの人達が、指揮者・島田恵美子の気持に共感して集まったグループである。「歌のハーモニーの前に心のハーモニーを」を合言葉に、地域の要請に応じて訪問コンサートを行い、年10回にも及ぶ地域活動を行なっている。「コンクールに出ていい成績を上げよう」とか、「自分たちの成果を聞かせるために発表会を開こう」とかいう気持ちは、少しも無い。活動のネライは、訪問先の人達や聴衆を元気づけ、少しでも長く、健康で充実した前向きの人生を送れるように手伝いをすることであり、その活動や練習を通じて、自分たちも元気になり、チャレンジを忘れない豊かな人生を生きられるようになる。これが、結果として「地域全体の活性化に繋がる」というわけである。 

 だから、我々は、子供の頃の音楽環境の良し悪しや現在の歌唱力に関係なく、ボランティア精神の強い人に参加してもらって、日頃の練習を積み重ねているのである。一流のグループに比べれば、実力は遥かに劣るので、練習してもモノにならない歌曲は沢山ある。しかし、我々は常に「ありふれた曲だけに満足せず、クラシックを中心とした心に沁みる名曲にチャレンジし続け、それを聞いた訪問先の人たちに喜び、かつ若返って貰えるように」と思って努力しているのである。 

 我々には、「このような努力がより大きく実るように、現在の音楽環境を整える」ことが大切なのだ。そのために今、コンコーネを継続したり、基本的な発声訓練を重視したり、常に録音を取って反省材料にしたり、少々難しいなと思う曲にも挑戦したり、外部からのコンサート依頼には極力応ずるようにしたり、練習後には茶話会を開いたり、指揮者の自宅を開放して食事会をしたり、旅に出てはハダカの付き合いをしたり、指揮者も伴奏者も無償奉仕をしたり、メンバーも自分に出来ることで協力したり等の、普通のグループでは考えられない活動をしている。

 「コール有朋」は、来年、創立20周年を迎える。この間に、以前では考えられないくらいにみんなの力が向上し、曲目も高度化し、歌のハーモニーもよくなってきた。まだまだ不十分な所だらけだが、節目を迎えた今、私は、「現在のレベルが高い」ことよりも、「継続は力なり」を信じて「少しずつ確実にレベルを向上させていく努力を続ける」、そして「メンバーも若々しく、訪問先の人たちも若々しく、人生を豊かに生きられる」ようになることが大切だ、と感じている。そこで何よりも基本となるのは、「指揮者とメンバーとの間で価値観が共有できていること」「それをベースとして、全員の心のハーモニーが漲っていること」ではあるまいか。「全員が、まるで大家族のように心が繋がる環境を作ること」が我々に必要な「現在の音楽環境作り」だと、あらためて確信した思いである。


[2007.5.25]


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