八幡平紀行          椿 正明  


 今年2月から腰痛がひどくなった。磐田整形のコルセットと痛み止めではごまかしきれない。5月15日に湘南鎌倉でMRI検査をしたら、3番4番腰椎の間の脊柱間狭窄症とか。1995年7月に4番5番のすべり症手術により固定したのが影響したのかもしれない。ヘルニアに効くPLDD手術では効果はあまり期待できないとのことで、6月20日以来、関東労災病院の夏山名医(?)−1ヶ月に1回、2時間待ち5分間診療を受けられる−の検査を受けているところ。

6月4日に箱根の金時山に登れた、6月16日−17日の霧が峰ハイキングもできたから4,5時間の軽い山歩きならできそう、温泉のはしごがいい、偕子もそのくらいがお望みということで、八幡平を選んだ。盛岡から東八幡平、後生掛、玉川、田沢湖経由盛岡に戻るコースだ。

 7月29日(日)曇り

 参議院選挙を済ませ、東京10時56分発のはやて15号で盛岡に向かう。3時間ほどで盛岡到着、バスで東八幡平交通センターに着いたのは15時11分。温泉民宿「こせ川」の主人が車で出迎えてくれた。主人は 小平市 で公務員をしていたが、定年前に温泉民宿がやりたくて退職し、始められたとか。

遅くならないうちにとりあえずと、付近を散歩する。ペンションなども混在する東八幡平の別荘地で、標高はあまり高くない。小ぶりのスキー場が見える。晴れた紅葉の時期はいいだろうなと思いながら、小1時間も歩く。近所に熊が出たとか聞いたり、無料の足湯場をみたりして帰り、露天風呂つきの小さな温泉に入る。

ザックを調べたら、折角今回用に集めた地図がない。出発時、大きめのザックに取り替えた時に詰め替え損なったらしい。「地図はありませんか」と聞いたら、なかなか良い地図を「どうぞ」と。助かった。東北の方からはいつも親切をいただく。夕食は、岩魚の塩焼き、紅鱒のお刺身、山菜のてんぷらなど、心のこもった作りたて。

 7月30日(月)曇り

 朝食は7時。ほかのお客さんが8時なので、その対応が終わったところで、車で茶臼口まで送ってもらう。6時ころは雨が降っていたが、出るときは止んでいた。タクシーを覚悟していたので、半額2千円も払いたいと思ったが「これもサービスのうち、受け取れない」とか。東北の人はみな純朴だ。

茶臼口から1578mの茶臼岳まで、等高線は狭くはないが北西へ直登なので結構急。しかし立派な木道がついていて歩き易い。「国立公園になったからかな」などと話しながら登る。誰にも会わない。茶臼山荘で今日始めて出会ったのは、女12名、男2名の大阪から来た年配者パーティ、東八幡平ハイツからとか。茶臼岳まで往復し黒谷地湿原に向かう。

熊の出そうな森の中から、急にニッコウキスゲの咲く湿原に出る。チングルマはもう終わっていて、ぼさぼさ頭だった。水場があるはずと思いながらいくつか湿原を過ぎるとウッドデッキがあり、そこに枝道があった。この先のはずと少し下ると、やはり水場「熊の泉」があった。八甲田清水にはかなわないが、これに次ぐおいしさだ。ウッドデッキになぜ「水場あり」と書かないのか、不満を述べ合った。

      

  ↑熊の泉                 ↑八幡平大沼

また登りになり、森の中を行く。源太森(1595)を過ぎ、八幡沼に到着。この辺に来ると、アスピーテラインから近いので人が多い。沼のほとりに出て、こせ川さんに作ってもらったおにぎりの昼食にする。東北大や山梨大の学生たちが沼の水質調査をしている。ガマ沼を経て、ハクサンチドリの咲く平坦な道を経由し八幡平頂上へ。突出していないので木のやぐらができているが、雲が多く遠くは見えない。夏休みとあって家族連れも多い。鏡沼などいくつかの小さな火口湖を経由して、見返峠のバス停に下る。

1時間ほどバスを待ち、多少視界が開けて秋ならばすばらしいだろうなと思われるアスピーテラインを後生掛温泉に下る。早速お風呂だ。泥湯、かけ湯、蒸気湯など7湯がある本格的な東北の温泉だ。一昨年の黒湯の露天混浴も良かったけれど、雰囲気はこっちが良い。40分ほど浸かって部屋に戻り、偕子は自然研究路の地獄巡りに行ったが、私は新幹線に乗ってから読み始めた「生物と無生物のあいだ」を読み終えた。ここでも地図を所望したら、なかなかよい地図を頂くことができた。夕食は、はたはた、きりたんぽ、山菜各種の秋田尽くし、結構だけど連泊すると飽きるのではと思った。

  7月31日(火)曇り一時雨

 7時に朝食を済ませ、なるべく早くにと焼山に向かう。昨夜多少腰が痛いかなと思っていたが、登り始めるとほとんど痛くない。ときどき木道の混じる、大きな石のごろごろした森の中を通る。国見台を過ぎると、やがて視界が開け毛せん峠だ。しかし残念ながら雲が低く垂れ込め、遠くは見えない。立派な避難小屋、焼山山荘を過ぎしばらくすると左に火口湖が見える。「おかしい道を間違えたか」とバック、結局さっきの道標が「鬼が城」だったのに「焼山」と読み違えていたことからきた勘違いであることが分かった。このころから雨が降りだす。偕子はゴアテックスの雨具、私は汗で中から濡れるので、といつもの傘。硫黄の露頭で子供づれの4人に会う。玉川温泉から登ってきたという。

 

  ↑霧の毛せん峠             ↑ブナ林

森の中なら傘が良いのだが、両側の背の高い草を掻き分けて進む道は、相性悪い。シャツもズボンもたちまちビシャビシャ。しかし幸い、ほどなく森の中に入る。きれいなブナ林だ。秋はいいだろうな。雨も小降りになる。思ったより時間がかかってから水場に到着。ここで先に会った4人組に抜かれる。焼山頂上まで行ってきたという。続いて地元出身の年寄り2人組みにも抜かれる。やがて玉川温泉の地獄が見える。人がたくさん歩いている。傘をさして岩盤浴をしている人もあちこちに見える。川の水を触ってみたが、すごい温度だ。PH1.1の酸性という。

バスには1時間以上あるので、自動販売機で券を買って念願の玉川温泉大浴場に入る。一人600円。酸性が強いので、半分に薄めた湯とそうでない湯がある。打たせ湯はあるが露天はなかった。多少傷があったので、そこは沁みる。痔も痛い。後生掛に劣らず雰囲気のある温泉だ。聞くところによると、半年前でも予約が取れないとか。焼山を越えてきて良かった。

13時54分のバスで玉川温泉発、こまち22号で田沢湖15時26分発、東京18時36分着、「東北は近い」。お土産を買う暇がなかったけれど、順調に帰ってくることができた。天気がいまいち、八甲田、秋田駒はもちろん岩手山、岩木山すら姿を見せない山旅だったけど、腰痛は障害にならず無事温泉巡りもできて、幸いというべきか。

  ↑秋田玉川温泉の地獄
                    
 

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