四国石鎚山系・瓶ガ森登頂記 瀬川 滋
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四国を担当することになった私に渓流釣りで沢の奥に入るのはお手のものだという友人から一度西日本最高峰の石鎚山に登ってみたいという申し出があり、前々から紅葉の面河渓とセットで登りたいと思っていたので、頃を見計らって実行に移した(10月28日(月)〜30日(水))。
車で西条から寒風山トンネルを越えて、瓶が森林道に入ったのが夕方。チラチラみぞれ混じりの雪が降り出し、最初は風情があって良いなあなんてのんきなことを言っていたが、林道のピーク辺りに来ると積雪4cmで外気は0度を切る状態。もう辺りは真っ暗。途中林道から横転している車を目の当たりにしていたので、慎重に慎重にエンジンブレーキを効かせてハンドルを切っていたが遂にストップ。
宿泊予定の土小屋に電話を入れると、迎えを検討するという。そこに1台の車が。犬をお伴にした女性の一人運転。聞けば、「目的は手前のしらさ峠の山荘で、4WDなので何とか行ってみる」と、そろそろ通過していった。やがて土小屋からは、迎えに行くのは危険なのでJAFを手配するとの返事が。そのJAFは、麓からの出動なので到着まで2時間以上かかるという。それなら、彼女が目指したしらさ山荘まで徒歩で小1時間位だろうから歩いた方が良いということになる。そこでその山荘に宿泊依頼の電話を入れると、歩くのは非常に危険だから迎えに行ってやるとのこと。正に神のお告げを感じた。
山荘では、彼女と岡山から紅葉の瓶ガ森の写真を撮りに来た2人が酒盛りの真っ最中。我々もこれに加わる。聞けば彼女は高知新聞の女支局長で、初雪の瓶ガ森の写真を記事にするため、高知国体でバタバタしている合間を縫っての取材宿泊という。「今年の初雪は例年より半月早い。遭難の記事を書くことにならなくて良かった良かった」と再会を喜んでくれた。さあて明日の予定をどうするか。この雪では時間的にも面河に下るのは無理で、石鎚往復が勢一杯。それよりも瓶ガ森の笹原の霧氷の方が良いんじゃあないかと、急遽予定変更を決意して早いお開き。
翌朝、高知からしまなみ街道巡りの帰りに寄ったという夫婦が我々2人の登山姿を撮りたいというのでカメラに収まり、山荘の支配人に丁重にお礼を言ってから出発。昨夜通った林道に並行してそれを見下ろすようについている登山道を登る。全体的に黄が多いこの山の紅葉にこの辺りだけ朱があり、そして昨夜降った雪の白も加わりとても気持ちが良い。特に途中道に大きな一枚岩もあり、その黒色が迫力を増している。 そして山道からのとりつきが、いきなりロープの急勾配の子持権現山。少し離れてみると、釣鐘を伏せた形でなかなかの迫力。
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やがて、大きな駐車場のある瓶ガ森の登山口。だだっ広い笹原にぽつんぽつんと白い枯枝の木々が立っている。霧氷の関係で白い枝が尚更白く、笹の緑と空の青とのコントラストが大変美しい。枝振りが何ともいえない形をした大木もあり、芸術的でもある。これらをここでは白骨樹というそうだ。うまい名前を考えたものだ。頂上へと登っていけばいくほど、回りの木々の樹氷は大きくなっていく。頂上付近では、もう大きな雪の塊といっても良い位だ。
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男山の頂上からは東方向が一瞥される。東黒森、寒風山、伊予富士、笹ガ峰と四国の山の特徴であるゆったりとした頂上に笹がずっと繁っているのであろう黒い連なりが続いており、それらをを結んで白糸のような雪の尾根道がくねくねと延びている。そしてその尾根道に沿うように、昨夜苦労して運転した林道が続いている。その下は、黄色に色付いた急な斜面。ずっと土佐の山々が土佐海の方まで広がっており、四国の山は奥が深いということが実感出来た。
雪山と化した尾根を少し北上すると瓶ガ森頂上。頂上はどこがピークかわからない位、ゆったりと広い。女山といわれる所以であろうか。山荘を出た時からその頂きを隠している石鎚は、頂上は相変らずガスの中。 |
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土小屋からの尾根道はやはり霧氷に覆われているのであろう、白くうねっている。昨年11月石鎚登山の時通った西ノ谷からのロープウエイ、成就社、スキー場もすぐそこに見られる。遠く今治、瀬戸内海も見下ろせている。そこで2人で征服のというよりはなかなか見られない景色を味わえた感激の握手をし、スープを沸かしての昼食。 下りは道を変えて山小屋を目指す道を選んだが、途中頂上方面を見上げると、だだっ広く広がる笹原の中に満開の桜の木があちこちと立っているのが見えるではないか。と思いきやそれは錯覚。白い桜の花と見間違う程枝の葉に立派な霧氷がぴったりと貼り付いた木々だったのだ。まるで樹氷のようで、青空に走るガスの灰色と相マッチしたこれほど立派な霧氷は見たことは無い。 |
下山後、昨夜置いてきた車に戻り土小屋を目指すが、もうすっかり林道は緩んでいるものの日陰は未だ凍結状態で慎重運転。途中、しらさ峠から瓶ガ森への今日歩いた尾根道全体が見渡せる所があったが、頂上付近の白の比率は低く全体的には紅葉一色なのが良く分かる。石鎚スーパー林道に入ると、道は突然良くなり窓からすっかり頭を現した石鎚の尖った頂上が見上げられる。
下りきると面河。本来は石鎚からここに下ってきて渓谷をゆっくり堪能する計画だったのが、コース変更でその時間も無くなったがちょこっと寄ってみた。紅葉には若干早いという感じ。30年前に足を踏み入れた時には狭い渓谷の道を奥に入る毎に水の色が周囲の景観に応じて微妙に七変化し、その色の繊細さに感激に涙したのを思い出した。さすが車社会に突入した今それを望むべくも無いが、それでも往時の片鱗を感じさせる程水はきれい。その水と渓谷のどでかい巌と、そしてその間に点々とある松の緑と紅葉の朱は昔の面河を髣髴とさせるものであった。
せっかく伊予に来たのだからと車を急いで道後温泉の人となり、2人で思わぬ事態に無事に臨機応変にくぐり抜けられたのと又と見られぬ景を味わえたことへの感慨の祝杯を上げた。
後日、山荘で同宿した高知の方から、家でTVを見ていたら我々2人が頂上目指して登っていくのが写っていたとの添え書き付きで高知新聞のコピーが送られて来た。新聞には初雪の瓶ガ森の迫力ある写真の解説の中に「神戸から紅葉狩りに来た観光客が難渋し山荘からレスキュー」という記事も載っており、一人はにかんだ次第である。