今年のウォーミングアップ ー丹波3山登頂ー     瀬川 滋

 
 
 

 今年の正月は休みが短く、年が明けてからも週末に不幸があったりで、全く山に登る機会が無かった。ゴールデンウィークには「昨年のアンナプルナ・トレッキングのリベンジにエレスト・トレッキング」との話もあり、トレーニングをしておかねばといささか焦っていて、1月最後の土日がチャンスと狙っていた。この日に我が山仲間は、兵庫県北部の扇ノ山の西にある兵庫一の秘境と言われている青が丸と仏の尾に金・土で雪山登山するという。同行したいのは山々なれど、かなりの雪山なので技術的に無理がある。そうこうしていると週間天気予報で当日は荒れそうという予報が出たので、それを口実に諦めることで納得していた。

 ところが前日になると予報が急に変り、29日だけは晴れで暖かく、30日から寒くなるという。じゃあ雪山の雰囲気だけでも味わって来ようと、急遽、丹波篠山付近の関西百名山に登ることとし、雪山用靴、ワカン、アイゼン等を持参して早朝に車で出かけた。  

 1/29  白髪岳 (関西百名山)

 白髪岳は、かつて丹波・立杭焼の里を訪ねた時に眺めた三角錐の山で、別名「丹波富士」と呼ばれている秀峰である。とりあえず白髪にと、車を1時間半程飛ばして丹波に。住山という集落が切れた辺りに登山口があるが、未舗装の道をもっと上まで詰めると東屋があり、そこが上の登山口。残念ながら山には雪は無さそうなので、普段のスタイルで8:15登山開始。上り道脇の岩に横穴が開いているが、大正時代まで掘られていた銀鉱掘の跡だという。杉林の中をジグザグ登ると、やがて尾根道に。良く踏まれている尾根を進むと、所々に雪が残っている。やがて、鎖のある岩場を越えて9:05に頂上。

 あっけなくて山に登った気はしない。北斜面に少し雪が残っているが、頂上には全く雪が無く拍子抜け。若干靄がかかっているが、360度の眺望が見渡せる。未だ早いので雲海が低く広がり、その奥に山々が。南側には北摂や六甲の山、北東方面には雲海越しに篠山の町と多紀アルプスがすぐそこ。人は誰もいなくて、とても静か。独り静寂を楽しんだ後、元来た道を下り、車を飛ばして篠山の町へ。昔の商家が並んでいる道が前に比べてとてもきれいに整備されていて見違えたが、電柱が邪魔をしているのが惜しい。

 1/29  三岳山 (関西百名山)

 余り高さに関係なくて起伏の激しい岩峰が連なる山を○○アルプスと言い、日本のあちこちに見られる。篠山の北部にも多紀アルプスというのがあり、岩尾根が続く東西20kmの堂々たる山塊である。この山は陰陽の分水嶺になっており、南の沢は加古川を経て瀬戸内海に、北側の水は由良川に注ぎ日本海に向かう。以前から一度はその最高峰の三岳山に登りたいと思っていたが、高さが物足りないのと、自宅からの距離が中途半端なのでなかなか登る機会が無かった。白髪岳に引き続いて登るのならちょうどいいと、カーナビを登山口の火打岩バス停にセットして車を飛ばす。その指示通りに走るのだが、徐々に道が狭くなっていく。やむなくそこいらの家で尋ねると、谷が一つ違うという。田舎のこと、エリアが広過ぎて地名を入れても間違ってしまうらしい。どうも最近はカーナビという便利なものが出来た結果、それに頼り過ぎてろくろく地図を見ない癖が着き、目的地を失することが多い。反省。小さな駐車スペースに車を止めて仕度をする。雪の装備をするかどうかで迷ったが、南面からでもあり、頂きを見ても雪の気配は全くない。よしんばあっても白髪岳程度だろうと、夏山スタイルで11:40登山開始。すぐ、人が生活している茅葺の民家の脇を抜ける。茅葺はもうこの辺りでも見られなくなっているが、刈られた枯れ稲田との対比が丹波篠山の山家の何とも言えない雰囲気を醸し出してくれている。杉林の山道を暫く登ると、尾根道に。尾根道は鳥居堂跡を過ぎた辺りから道が山陰になり、結構雪もある。冬山の雰囲気が味わえる。それも一時のことで、すぐ歩き易くなり、やがて大嶽(ミタケ)寺跡。先の堂跡といい、こんな山上にどうしてと思案すると、道脇に案内がある。それによれば、昔は修験道で有名な吉野大峰に繋がる修験道の地で、堂塔も多く、非常に栄えていたそうだ。ある時その大峰に造反したことから滅ぼされ、焼かれたのだという。山の名前もお寺の名前に由来しているという。そう言えば、バス道にあった観光用の道標が「三岳道」で無く、「御嶽道」とあった。ということは、山名は大嶽から御嶽そして三岳にと変っていったのかも知れない。

 少し進むと、鎖のある岩場。ガイドブックでは大袈裟に注意を促しているが、大したことは無い。そんな注意をしないといけない程にポピュラーだということだろう。ここを越すと杉の林に入るが、結構雪が深い。踏み跡をトレースするのなら何てこと無いが、冬に折角来たのだからと道を外して登ると、夏山用の靴では少し苦しい程だ。そこをやり過ごすとまた明るくなり、12:55に頂上。一面雪だが、大したことは無い。360度開けている。東に多紀アルプスが連なり、遠く北方と西方の山は雪に覆われている。南には、篠山の町が広がる。大坂の団体が登ってきており、大変な喧騒。雪で大地に座れない中、急いで昼食を取る。白髪の静寂とは大変な違い。  

 1/29  西ヶ嶽 (多紀アルプス)

 三岳頂上でこのまま下ろうかとも思ったが、時間があるのでこの連山の最西端の西ヶ嶽にも足を伸ばすこととし、主尾根の急坂を西に下る。下り切った鞍部から、今度は登り。開けた明るい道だが、結構雪があり滑る。注意して最後の急登を登ると、14:00に頂上。殆どのガイドブックでは、三岳からの縦走コースとしては東側の小金ヶ岳が紹介されており、そちらは登る人が多いと思われるのに対して、この山まで足を伸ばす人は少ないのだろうか頂上は大変地味。雲が出て来て遠くは見えないが、北方すぐ下の道は結構車が行き来している。下界の動に対して、こちらは静。ほっとする。

 頂上に暫く居て、元来た道を鞍部まで下る。そこから、昔栄えたという修験道を偲んで「西の覗き」まで足を伸ばし、急降下してみる。しかしそこは名ばかりで、大峰の覗き程の迫力は無い。ここから三岳頂上までさっき下った急坂を登り返し、頂上からは主尾根を逆に、東の小金方向に下る。この道の雪が、思いのほか深い。ふみ跡はあるが、夏の靴ではすぐ滑ってしまう。ワカンまでは必要としないものの、折角冬山用の靴を持ってきているのにと悔やまれる。ずっと下に林道が見えているので、慎重に慎重に下る。大タルまで下ると、大きな駐車場がある。道はここから小金ヶ岳に向かって登っていくが、時間も時間だからと林道を下る。全く車は通らないし、雪も全く無い。舗装してあるくねくね道をブラブラ歩くと、先の茅葺屋根が見えて来て16:40に車に辿り着く。そこから車を飛ばし、折角丹波篠山に来たのだからと篠山の町で「ぼたん(しし肉)」をたっぷり買って、神戸へと急いだ。


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