2005年に登った「日本二百名山」(その4)     瀬川 滋

 
 

 私の山仲間は、そこに東京から移り住んで定住している人もいることから、八ヶ岳の麓の 原村 に良く集まる。従って、その近辺の山には高い低いにかかわらず登ることが多い。しかし、小海にある「佐久の幽巒」御座山(おぐらさん)は比較的近くにあり、また日本二百名山でもありながら、なかなか登る機会が無かった。「幽巒」とは奥深い山並みといいうことで、とにかく西上州から佐久にかけての最高峰である。一度登ってみたいものだとずっと思っていたが、何しろ関西からの交通の便が悪い。何とかならないものかとネットで調べてみると、小諸行きの夜行バスがある。これを使えば何とかなるんじゃあないかと時刻表を繰ってみると、小海線で小海に出、そこから地元のバスを使えばOK。早速決行することとした。


 
10/2  御座山 (長野、2112m .168   

 早朝、小諸から小海に入る。元々この土日は天気が悪いということだったが、朝の天気予報では、午前中は持って午後から崩れるという。そんなことで、列車は八ヶ岳の麓を走るが、山はガスに覆われさっぱり見えない。過疎の村のこと民間のバスにも見放されたのであろう、この駅からは 北相木村 村営マイクロバス。お客は私1人。ひとりでに運転手と会話。彼は村と最高峰御座山に誇りを持っており、神戸からわざわざ訪ねてきたことに感激し、色々問いかけてくれる。話題の中心は若者が村を離れることへの嘆き、いくら秀峰御座山を持っていても交通が不便、都会から人を呼べないばかりか、長野新幹線・佐久平開業で中途半端に便利になった結果、若い者が逆に東京に出て行ってしまうと嘆息していた。町村合併が盛んな今日、この村にも話はあるが、中心となるべき 小海町 は沢山の箱物を作って財政が大変、逆に隣村はダムが作られてうるおっている、という具合でなかなかうまくまとまらないと嘆いていた。  

 そんな会話をしながら私は、今日のコースを最短の山口往復とするか、それより先の白岩まで入って白岩ー頂上ー山口の周回コースにするか迷っていた。運転手の意見は、道は先週小学生も行事で登った白岩からの方が良いが、天気予報は午後からは危ないとのこと。白岩まで入ると登山開始が約1時間遅れるのと、アプローチが30分長いので上り下り都合2時間程余分にかかる。これではもし午後天気が崩れるとまずいからと、山口で降りることを決断。 

  窓外の景色は、正に収穫の秋。田の米は深く頭を垂れ、秋の喜びが満ち満ちている。山口が近づくと、バスの窓に御座山が急峻にぐっと迫る。運転手は、「ここが御座山が最もかっこ良く見える所」と解説してくれた。 山口公民館というバス停で降ろされ、バスは、あの道を行けば分かると言う言葉を残して去って行った。9:10登山開始。家族で収穫作業をしている閑かな風景をやり過ごし、隣村に繋がる道と分かれると、道は急に悪くなる。  

 もし車があれば、おちゃのこさいさい。車が来たらヒッチをと思うが、この登山道、現在は白岩コースに押されて人気が無く、全く車が来ない。カラマツの樹林の中の標識がしっかりしている林道を約1時間歩く。車だと腹をこするのではないかと思う程道が荒れてきた所に車2台程止められる小さな駐車スペースがあって、ここからが登山道。  

 昨年の台風で痛めつけられたのであろうか、あちこちで倒木が道を塞いでいる。また踏み跡の薄くなっている所も多くて、相当歩き難い。しかし道標だけは、山用の小さなものでは無く、林道に据えてあったのと同じものがしっかりつけてある。カラマツの緩い登りが急になった辺りにカエデの木が多い所があるが、全く紅葉の気配も無く、緑が若くてまるで新緑の頃のようにきれい。道はトウヒ、ツガ等鬱蒼とした原生林で、全く展望は効かない。ただ1カ所だけ、頭上にお椀を伏せたような岩が見える所がある。「多分あれが頂上」なんて思いながら進むと、樹間に小さなカヤトが広がる鞍部に着き、やっと人に出会う。

 そこから一登りすると立派な避難小屋が現れ、白岩からの道と合流。そこからは、今まで樹林に覆われていたのが、そう大したものでは無いが岩場に一変し、周りの景色がパッと見渡せる。足元に注意して暫く進むと、小さな祠のある頂上。11:10。360度の眺望。空は晴れているのに、すぐそこに大きく見えるはずの浅間、八ツはガスに覆われて見えない。しかし東に妙義始め上州の山々が、南には遠く金峰・瑞墻・茅ガ岳等々の奥秩父の山が、西方・北方足下には 北相木村 が箱庭のように一望される。  
 天気は安定しているようだが、天気予報の「午後から危ない」を信じて、昼食もそこそこに下山開始。
 ところがどうしたことか、右足親指付け根辺りが痛い。靴も靴下もいつも通りなのにどうしたことか。足先をかばって下っていると、今度は右足付け根が。痛いっていっても歩けない程でもないので、かばいながら下る。道が悪いのでかばうと言っても限度があり、つらい。やっと登山口に。良く見ると、この辺りは所々で柵がしてあり、コンクリートの構造物の下から水の音が聞こえる。村の水源地のようだ。白岩コースを整備し、逆にこちらは出来るだけ人が入らないようにしているのだ。それでコースが荒れているのを納得。足の調子が徐々に悪くなり、バス停までの下り道、上りと同じ1時間かかってしまい、バス停に着いたのが14:15。お天気は崩れるどころか益々良く、またとてつもなく暑く、これなら周回コースを取れば良かったと舌打ちした次第であった。

 足には後日談があって、翌日は右足だけでなく左腰にもいつになく鈍痛があり、昨日かばいながら歩いたので、あちこちに疲労が残っているんだろうと思っていた。その翌日になると、右足は元に戻ったが、左腰の方は未だ残っていた。それでも、特に気にとめてはいなかった。が、その夜、左背筋に眠れない程の激痛が走った。翌朝、結石でもあるのかとあわてて病院に飛び込んだが、検査の結果は白。やはりあの日右足をカバーしたのが原因だったのかと痛め止めをもらったら治まり、暫く山をお休みすることとした。


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