スノーシューのテストクライミング 瀬川 滋
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昨年氷ノ山に雪山登山した時、私は輪カンを持っていったが、同行した仲間は山スキーをやるというので、持ってきていたスノーシューを貸しくれた。全く初めての経験だったが、輪カンよりとても歩き易かった。是非欲しいと暮に買っておいたが、なかなか試してみる機会が無かった。正月に入って挨拶回りが終了した22日(日)は空いており、絶好のチャンスと仲間の山行の計画を聞くと、この日は長距離のスキー登山という。私はゲレンデ用のスキーを持っているが、山用のは平坦地及び登りでも使えるようにビンディングが踵が上下に動くようになっていて、違う。スノーシューとゲレンデ用のスキーで参加しようかとも思ったが、つけはずしをこまめにやる必要があり、諦めてスノーシューのみでも登れる山に行くこととした。
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生野高原・段ガ峰(1103m、兵庫、日本百名山)
早朝に自宅を出発。空は快晴だが、陰陽国境の生野トンネルを越えるとそれまでの景色とはうって変って深雪景色。タイヤチェインを履いて、麓の登山口・生野高原ゴルフ場に到着。早速支度をして8:15登山開始。既に車が1台止まっており、先行者がある。その踏み跡があるのでスノーシュー無しで歩き始める。吹き溜まりでは2m程の積雪があり、オーバーハングしている所もあるので慎重に歩く。達磨ガ峰に着くと360度展望が利き、見晴らしが良い。そこに望遠鏡がセットしてあり、女性が1人それを覗いている。バードウオッチングをしているという。白い雪に覆われてなだらかに続く遠い行く先にフトウガ峰、その奥に段ガ峰も見通せる。鳥は肉眼では見えないが、これだけ晴れているのだから良く見えるのだろう。
踏み跡は彼女が作ったもので、ここから先は無い。純白で何のけがれも無い雪のパウダーの上をスノーシューで道筋をつけながら進む。新雪の上を歩くが、沈みが少ない分輪カンより楽だ。尾根をはずさないように慎重に歩く。やがて樹林に入るが、霧氷がとてもきれい。登山道は雪に埋もれて全く分らないので、木に付けられている赤か黄色のテープが目印。それを見失なわないように確認しながら、慎重に進む。直角に曲がらないといけない所はロープがしてある。植林のための伐採で樹林が切れる所で、テープに従って進んでいたのに下りが続き過ぎる。頂上目指して登らないといけないのにおかしい。変なところに迷い込んでしまったようだ。分岐の標識が埋まってしまっていて途中で道を外してしまったのだ。あわてて引き返すと、案の定、上り方向にもテープを見つけ、それに従って進む。前を見るとただ雪・雪・雪、後ろを振り返ると自分が作ったスノーシューの踏み跡。全くの静寂。
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坂を登り切ると平坦になり、木々も低くなる。頂上部のだだっ広い雪原を進むと1033mフトウガ峰頂上。ここまでずっと、スノーシューを履いてのラッセル。いくら沈みが少ないとはいえ雪の抵抗はあるし、シューそのものの重さもあり、いささかくたびれた。しかし、快晴の下360度一面の銀世界の展望はそれを忘れさせてくれる。行く手西方には、谷の向うに目印の1本の木が聳える段ガ峰頂上がすぐそこ。北方には、多分スキー客で賑わっているであろう鉢伏・氷ノ山の峰々。南方の播州の山々も雪を抱いている。 |
やがて、後から登ってきた人々が到着。買ったばかりのスノーシュー初歩きだという夫婦もいれば、前にラッセルしてくれた跡があるからと、スノーシューを車に置いてきたというチャッカリ組もいた。ここで昼食。
鉢伏に雲が現れたのとくたびれもあって、ここから引き返そうとの誘惑にもかられたが、気を取り直して先に進む。またまた先頭。峰を一旦下ると雪原が広がる。この辺りの木々は、通称海老の尻尾と言われるまで樹氷が育っている。樹木につけられたマークを慎重に追って注意深く進むが、突然またマークが消える。どう探しても見つからない。えいままよと、遠く先に見えている頂上を目指して樹林の中を真っ直ぐ進む。雪が無ければ多分藪コキとなり、夏山ではとても出来ない芸当だ。
進むと小さな沢があり、これを越えるのに難儀する。今度は、吹き溜まりのかなりの雪の中の登り。登り切ると、またまたなだらかな平原。その先には、先程見えていたこの山のシンボル的存在である頂上の1本のマツの木が黒と白のツートンカラーで立っている。この辺りにしては珍しい程、大きな樹氷に育っている。13:05、段ガ峰頂上に到着。快晴だったフトウガ峰から1時間も経ってないのに、雲が相当出てきた。時間も時間だし、景色もフトウガ峰には及ばないと早々に引き返す。
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下りは、登りにつけた踏み跡があるのでスノーシューをはずして歩く。足が軽くて楽チン。フトウガ峰まで戻ってきたらかなりの雲が出てきており、遠くの山はもう見えない。頂上から続くなだらかな下りで、風が強くて雪が飛ばされたのであろう、踏み跡がはっきり見えなくなった。木に付けてあるマークを追って、慎重に進む。樹林の中を下っていくと吹き溜まりになるが、ここで踏み跡が全く無くなる。風で消えてしまったにしてはおかしい。しかしマークはきっちりある。スノーシューを履いて、マーク通り慎重に進む。林が途切れて少し見通せる所に出ると、登りに見た伐採地がかなり遠くに見える。どうも道を間違え、1本東の尾根を下っているようだ。途中どこかに分岐の標識があったんだろうが、雪に隠れて見逃したらしい。定石に従えば、分岐まで引き返すしかない。しかし、それにしてはかなり下ってきてしまった。地図では、この尾根沿いに下ったら林道に出るはず。戻っていては時間がかなりかかり、下山までに暗くなってしまうかも知れない。長考の末、このまま下ることとする。
マークを追っかけて尾根に沿って慎重に下る。ところが突如マークが消える。尾根上にある最後のマークから谷に下っているのだろうが、いくら探しても見つからない。谷に迷い込むと大変なので、そのまま尾根を突き進むこととする。夏山ではとても出来ない芸当。
それまでの歩き易かった尾根が傾斜もきつくなり、また行く手を大木が遮り、急に歩き難くなる。最後はスノーシューを脱ぎ、持っているピッケルを使ってグリセード(尻制動)で一気に滑り降りる。大木が邪魔をしてなかなか前に進まないが、何とか下り切ると、目指す林道に辿り着く。林道は、スノーシュー無しには歩けない程の積雪。暫く林道を下ると、本来ならここに出て来るのであろう「菖蒲沢出合」の登山口標識。空模様は雪に変る。山の天気はコロコロ変る。これだから怖い。半時間程下ると林道に車の轍が現れ、人里に出る。ヤレヤレ。スノーシューをはずして、後は普通のつまらない林道歩き。ゴルフ場入口まで出て、今度は車道を30分、標高差100mの登り返し。朝車で上った時にはチェーンを付けないとスリップする程だった急坂、歩いて上るとなると、くたびれているだけにとてもつらい。最後の力を振り絞って、16:15に登山口駐車場に。
今回の冬山登山、スノーシューが無ければ、多分フトウガ峰往復で終わっていたろう。本当に役に立った。それにしても、冬山は道の同定がとても難しい。地形的には非常に分り易い山だったので、道を外しても、スノーシューのお陰もあって何とかなった。そうで無ければ、遭難騒ぎを起こしていたかも知れない。冬山の怖さを経験出来、大変勉強になった。そういう意味では今回のテスト山行、テスト以上に十分価値があったと言える。