「思いがけない花」の中蒜山 瀬川 滋
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中蒜山(岡山、1122m)
近所の同好の氏から、この20〜21日、蒜山登山と周辺美術館見学の計画に参加しないかとの誘いがあった。元々この日は二百名山の笈ヶ岳(加賀)登山の計画があり断ろうと思っていたが、それが来年に延期になり、家内共々参加することとした。かねて「大観」の絵と庭園で有名な安来の足立美術館に行きたいと思っていたので、行くなら足立にと幹事にリクエスト。メンバーは8人で、山の方は、その力量から上・中・下三山縦走はとても無理なので麓からの展望の良い中蒜の往復、美術館の方は、松江ティファニー美術館に行きたいと言う人もいて、足立組とティファニー組に分かれるということになった。
20日、2台の車に分乗して神戸を出発。朝の内は小雨というので、本日美術館、翌日登山ということになり、我が車は中国道から米子道を足立美術館目指して走る。途中の小雨模様も、到着時には晴れて爽快。
館に入ると、山を借景にした手入れの行き届いた枯山水の広大な庭が歓迎してくれる。石庭に松とかツツジ、カエデの新緑が眩い程映える。丁度花の端境期で、ツツジがちらほら赤い花を覗かせている程度なのが残念。ただ、ここの景色は、殆ど館内からのガラス越しなのと、庭自体あまりにも綺麗に整備されており、侘び寂のようなものが全く感じられず、何か人工的で違和感が残る。
館内の展示の方は、「大観」を中心に日本画の逸品が目を楽しませてくれる。地方の一美術館の収集とは思えない程の圧巻。それにしても、こんな田舎から都会に出て財を成し、この美術館を創立した足立全康なる人物のデカさにただただ驚嘆するのみであった。
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小泉八雲邸等には全員が前に訪ねていたので、最近開発された松江城の堀を船で周回する「堀川巡り」をしようということになった。船からは、水の向うの石垣越しに低い位置から藩の重臣邸や小泉八雲邸を眺められ、地面から見る景色とはまた違う。石の上で亀が折り重なって甲羅干ししているのが見え、船の行く先には青サギが大きな羽を広げて飛んで来る。船には屋形がついているが、一部の橋はそれがつかえてしまう程低いので屋根が下りてくる。最も低い橋では乗っている者全てが横にならねばならない程だ。この船巡り、新緑の木々と相まってとても風情があり、江戸時代にタイムスリップした感じが味わえた。 |
ここでティファニー組と待ち合わせ、中海に浮かぶ牡丹の大根島を経由して境港の漁港へ。この町は「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏の出身地。町中に鬼太郎のモニュメントが飾ってある。ここで漁師料理の夕食をして、大山のコテージへ。ここでやっと酒にありつけ、宴会。そしてバッタン。
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21日朝、ホテルでゆっくり朝食。山行とホテルは合わないが、今回は登山が添え物。食事後、車で登山口に向う。途中、大山、烏ヶ山、先月雪の藪コキで苦労した皆ヶ山、そして蒜山三山が晴天の下でバッチリ。南面が見えているので、雪は沢の所々に見える程度で、先月の雪山が嘘のよう。同行の2人は足の調子がもう一つだからと高原散策に切り替え、途中下車。残る6人、登山口の塩釜に車を置いてスタート。ロッジ横の登山口脇から冷泉が出ている。日本名水百選に数えられているという。暫く牧草地を抱く草地を進むと一合目。ここから沢に沿って進むと斜面はきつくなり、広葉樹の下をただ登る。 |
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ほぼ10分毎に合目の表示があり、五合目には小さな祠がある。眼下には蒜山高原が大きく広がり、山は新緑の中に赤いツツジが点々と見える。暫く登った足元の濃い緑の草地に、イワカガミのピンクが小さくひっそりと広がっている。この時期、こんな山で高山植物が拝めるなんて思ってもみなかっただけにとても感激。1ヶ所鎖場と1ヶ所ロープ場を越えて急斜面を登ると九合目の縦走路稜線へ。 |
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頂上は西側すぐそこに見え、東側には稜線を一旦下った先に下蒜がこんもりと盛り上がっている。頂上目指して進むと、足元にカタクリの花が紫色の特徴ある形で迎えてくれる。カタクリというと、大きな樹林の下のだだっ広い陰地に紫の絨毯を敷いた様に群生するというのがイメージなのだが、ここのは、日が射す稜線の草の下に一花一花がここに俺がいるんだと個を主張している。まさかこんな山の上でカタクリが拝めるなんて、想像もしていなかった。 |
| やがて頂上。登り始めて2時間。360度のパノラマが広がる。西には、上蒜が大きく座している。北側は春霞がかかっていてぼんやりしているが、すぐ下に関金・倉吉の平地が、遥か彼方には微かに日本海が望める。静かだった登り道に比して、団体がいるのだろう沢山の人。日差しと人を避け、避難小屋に入って昼食。食べていると、気分の悪くなった人が入ってきて横になる。多分脱水症状を起こしたんだろう、奥さんとリーダー格の人が心配そうに付いている。まあ、暫く休養すれば大丈夫だろう。熟年登山ブームの今日、この手の話が多い。 |
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暫く休憩して、元来た道を引き返す。下りの急坂は足を痛め易いので、メンバーがメンバーでもあり、いつものペースの半分位のゆっくりしたペースで下る。改めてカタクリ、イワカガミを拝んだことは言うまでも無い。下り切った沢の近くで、ルリ草の群落も。塩釜の冷泉まで戻り着き、このまま帰るのはもったいないと衆議の結果、手打ち蕎麦を食べて帰るということになった。ところが、この辺りの有名な蕎麦屋は手打ちした分が売り切れると閉店ということで、この時間どこも店が閉まっている。ところが、蒜山ICすぐ近くの最後の1軒が、店前には閉店の看板を出していたが、無理に入ると何とかしてくれるという。私は定番の冷たいおろし蕎麦を、皆も思い思いに注文。次の客が入って来るが、体良く断わられていた。蕎麦も旨かったし、特に蕎麦湯が濃くて何とも言えない風味。おなかも満足したところで全員高速の人となり、神戸に急いだ。花と名画と食い物、最高の山行であった。