2006年に登った「日本二百名山」(その2)     瀬川 滋

 
 

 9/6  白砂山群馬・長野・新潟、2140m  .176   

 白砂山は群馬、長野、新潟3県の県境をなす山で、秩父の「甲武信岳」に倣って「上信越岳」とでも名付ければいいのにと思う。その山名からは白い砂に覆われた山稜を類推するが、実際はそうでは無くて、麓を流れる白砂川の名前が由来とのことである。この山はとても深くて交通も不便で、とても簡単には登れなかったが、草津温泉のずっと奥に東電が野反湖を作ってからは道が整備され、日帰り登山が可能になった。 

 前日高崎に泊り、早朝吾妻線 で長野原草津口駅 まで列車で向った。白砂往復は結構時間がかかるので、始発に乗り込んだ。しかし、ローカル線のこと列車間隔が少ないからだろう、車内は通学の学生で一杯。車窓を楽しむ余裕も無い。駅に到着しても早過ぎて、肝心のレンタカー会社の事務所が開いていない。仕方無く待合室で待っていると、鈴虫の声。この近くに鈴虫の里があるらしく駅で飼っているという。ホっとする。9時の開店を待って早々にスタート。ただひたすら北上し、途中いくつかの鄙びた温泉地を通り抜け、山名の由来の白砂川にそって細い道をくねくね登り切ると野反湖。晴天の下、湖畔は明るく開けている。湖の最北奥が登山口。  

 登山道入口には、平成14年8月に皇太子が登った立派な記念碑がある。仕度をして10:00スタート。レンタカーの開店が遅れた分出発が遅くなった上、田舎のこと閉店時間は早く、実質登山に使える時間が少ない。コースタイム通りではとても間に合わないので急ぐ。

 山道を進み、沢にかかっている橋を渡り、山腹から尾根道をアップダウンする。途中、木々の間から野反湖が大きく見える。道の分岐点の表示はちゃんとあるが、ガイドブックに載っているハンノキ沢とか地蔵峠、野反湖見晴台とかのポイントに何の標識も無いので、今どこを歩いているのかさっぱり分らない。それだけ俗化していないということだ。兎に角急ぐ。

 急坂を登って下りにかかる辺りで、高度計からここは堂岩山頂かなと思うのだが、樹木があって見通しが利かず、全く分らない。もしそうならかなり早いペースだと安心出来るのだが・・・。そこに下山してきた人が現れ、彼も「標識が無いのではっきりしないが、多分ここが山頂。もう少し進むと見晴らしが良くなり白砂山が見えますよ」と教えてくれた。少し進むと言われた通り、樹木が無くなって視界が開け、ずっと続く尾根道の向うに目指す白砂山が見えている。今まで何も見えなかっただけに感激はひとしお。  

 その尾根道には、低いハイマツとこれも低木の石楠花が笹と一緒に広がっている。沢を見下ろしても、ずっと笹原が続く。時期が時期なら多分高嶺花が一杯広がっているのだろうが、花が無くて熊が最も好みそうな笹原で、熊が徘徊してるんじゃあないかととても気にもなる。足元の笹の間にはあちこちに、秋の高山植物のエゾリンドウの蕾が濃い紫で開くのを待っている。地味な色の多い中、フウロの淡いピンクがとてもかわいい。ナナカマドも、葉こそ未だ紅葉していないが赤い実を沢山付けている。山には秋がすぐそこに迫っているって感じだ。

 前方山頂にはガスが走っている。早く登らないと何も見えなくなると急ぐ。尾根道をアップダウンしながら進み、最後の急登にかかる頃にはガスが視界を遮ってしまう。12:40頂上。思ったより早く着いた。ガスで何も見えない頂上には誰もいない。

 ここから、これも二百名山の佐武流山に縦走出来るはずだが、大変な藪コキを強いられるという。確かめてみると、微かな踏み跡が残っているが、「通行禁止、ここから登山道が無いので遭難の恐れ」の標識が立っていた。昼食を取っていると、霧雨が降ってくる。あわてて下山開始。元来た道を引き返す。往きは回りが見えていたのに、何も見えない。ただ踏み跡を辿るのみ。往きは良い良い、帰りは怖い。堂岩山まで戻っても小雨。ただひたすら下る。往きに見えた野反湖も見えない。

 15:30登山口着。やれやれ車返却時間に間に合うとホっとする。ここまで下りてくると雨も上がり、晴れている。車で野反湖畔まで下ってみると、意外や意外、人造湖の石積みのダムは北側最奥のこちら側にある。聞けば、この湖は、信濃川を経て日本海に注ぐ中津川の源頭だという。往路に長野原から添ってきた白砂川の源頭と思っていたが、そうでは無い。白砂川は吾妻川、最後は利根川と名を変えて太平洋に流れ込んでいるという。とすれば、あのつずら折りを登り切った野反湖の南端が分水嶺ということになる。  

 その分水嶺まで戻ると、湖畔の草原に萩・尾花がそよいでいて、秋の到来を告げてくれている。また、すぐ南に榛名、浅間隠がくっきり、その両サイドに雲を被った赤城、浅間の裾野、そして草津温泉の町並みが見えている。往きには時間を急いでゆっくり見るゆとりが無かったが、なかなかの景色だ。ただ、浅間の頂きが見えないのが残念。駅に着くと、「今日は天気が良くて良かったねえ」との声。正にここは表日本の気候。改めて、あの野反湖が天気の分け目でもあったことを改めて認識し、到着した列車で渋川に向った。


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