2007年に登った「日本二百名山」(その1) 瀬川 滋
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仙台にいる大学1年生の時の下宿で一緒だった友人が、定年退職を機に環境のISO審査員の傍ら市を巻き込んで「生涯現役塾」というのを主催し、シニア層を集めて活発に活動している。以前からその友人に、現役しながら山を続けている私の生き様を塾で一度講演してほしいと頼まれていた。この下宿仲間は、何年かに一度集まってダベっているが、今年春に静岡の山奥の梅が島温泉に集まって、旧交を暖めた。この時にその話が具体化し、七夕祭り明けの10日にやるということになった。タイトルは「日本百名山登頂と我が生涯現役を語る」。講演そのものは、会場から質問も沢山出て、盛況の内に終わった。
折角仙台にまで行くのだから、例によって南東北の残っている二百名山を1つでも登っておきたいと考えた。当初はその友人も1山同行登山するということだったので、仙台から近くて登山が楽な船形山を一緒に登り、そのあとで山形・新潟国境の以東岳に、そしてなお余裕があれば山形・秋田国境の神室山に登ろうと計画した。
8/11 神室山 (秋田・山形県、1365m) No.180
ところがその友人、体調不良で登れそうに無いという。しからばどうするか。当初の予定通り先に船形山という手もあるが、遠くて難しい山を先に済ませた方が後が楽と、逆に神室山から登ることとした。この山は、その名の通り古くからの修験者の霊場で、信仰の対象として親しまれてきたと同時に、標高はそう高くは無いが南北に約20km連なっていて、豪雪と偏西風に磨かれたピラミダルな山容が地元の岳人にはとても人気があるという。
前日から借りておいたレンタカーでホテルを早朝に飛び出す。東北高速から仙秋ラインに入り、鳴子・鬼首を後にひた走り、秋田の秋ノ宮温泉から林道に入る。西ノ又沢分岐登山口に着いたのが8:00。ここから神室山への登山道は、沢を詰めて直登するコースと、最初に一気に尾根に登り、尾根道をアップダウンしながら頂上を目指すパノラマコースがある。夏は暑いので登りは沢コースと決めていたが、近くで行われている砂防ダム工事の関係からか登山口が分からず、やむなくパノラマコースを取ることとして早速登山開始。
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傾斜は急だが、当初は杉、やがてブナに変わる樹林の中を快調に登る。標高1000m地点に出れば、樹林が切れ低潅木地帯になる。ここからが大変。この日は特別暑く、遮るものが無くて太陽が容赦無く降り注ぐ灼熱地獄。おまけにこの道、あまり使われてないのか下草が刈られておらず、半藪扱き状態。汗がしたたり落ちる。普段水をあまり飲まないが、この日だけは別。前神室まで辿り着くと花が少しあり、ほっとする。またお茶。 |
ここから頂上までのアップダウン、相変わらず太陽が照りつけているが、途中からは道が整備されており随分楽。11:50神室頂上。沢から上がってきたのであろう、随分沢山の人がいる。パノラマを登ってきたと言うと、この暑いのと道の整備が悪いのに良く登ってきたとあきれられた。
西に鳥海、南に月山が見えるが、頂きは雲に隠れて裾野のみ。下に見えるのは真室川という。えらい所まで来たものだと感無量。すぐ下に見えている頂上避難小屋。外見はしっかりしているようだが、中はかなり痛んでいるとのことで、今年から利用禁止。修理しようにも数千万円かかるが、地方の疲弊でその金が工面できないからという。こんな所にも小泉改革の弊害が及んでいるのを改めて感じた。ここで昼食。ところが、登りに飲み過ぎてお茶が足りない。余分に持ってきているペットボトルを車に置いてきたのが悔やまれる。食事してからの下りは沢コースを取る積もりなので、途中に水場はあるはず、喉を湿らせる程度に計算して飲む。
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下り道の途中、御田の神という平地に出るとニッコウキスゲの群落。それにアザミが色を添えている。美しい。喉の渇きを忘れさせてくれる。そこから一気に下って、不動明王という所まで来るとやっと水場。とにかくガブガブ飲む。冷たくてうまい。息がつけたって感じ。あとは、沢沿いに三十三間の滝を見ながら下る。アルミのしっかりした吊り橋を2つ渡って下っていくと砂防堰堤工事の現場に出、そこから林道を少し下ると15:00登山口に。 |
ここから、車で明日の以東岳登山口に向かう。真室川、新庄から月山を巻くように麓を南下し、羽黒山神社の近くを越え、
8/12
以東岳 (山形・新潟県、1771m) No.181
百名山で最も好きな山はと問われて、答は人によって違うが、私は東北の飯豊と朝日と答えている。そんなに高くは無いが奥が深く、静かである。登りは急だが、尾根に出てしまえば、笹・草に覆われたなだらかな山面を呈し、お花畑が格別きれい。そのいずれもが長い連峰を形成しており、縦走するとその良さをフルに満喫することができる。しかし、関西からではなかなか縦走は難しい。それで以前に、飯豊の主峰に登った後、連峰の最日本海側の山杁差岳に登って、連峰の良さを満喫した。その記憶から、朝日連峰も主峰大朝日岳とは丁度反対に位置する以東岳に大変な興味を持っていた。この以東岳、麓には大鳥池という山形県で最も大きな池がある。この池には体長2mもあるというタキタロウという幻の大魚伝説があることでも有名である。
夜中トイレに起きると、多分ベルセウス流星群の片割れと思われる流れ星、幸先がいい。早朝起き出し、5:10登山開始。道は平坦な山道、大変整備されている。回りはブナの大木。これが早春か紅葉の頃であればとても素晴らしい景であろうと想像しながら進む。やがて登りは急なジグザグに変わり、登り切ると大鳥池に。立派な小屋がある。管理人と話すと、今年は7月に雨が多く、やっと晴れたのがお盆前、それに猛暑。そんなことでとても入山者が少ない。人が減っているのは今年だけで無くてこの数年の傾向で、5−6年前がピークだったと嘆いていた。小屋の前には大鳥池が大きく広がり、千古の静寂をたたえており、その向こうに以東岳がゆったりと見える。今日も暑そうなので、昨日の反省から水をたっぷり持ち、登りに直登コース、下りに尾根コースを取ることとする。池に沿って半周歩く。鏡のような湖面に以東岳の影がくっきりき浮かぶ。池の反対側から直登。若いブナの木陰の下を歩くので楽。かなりの傾斜を一気に登ると少し平になり、下が見下ろせる。池がかなり大きく見える。ここからは広い池糖になり、太陽が直射して暑い。どうした訳か、花が少なくがっかり。低いハイマツ帯を頂上近くまで登ると頂上小屋。2階建てで意外に立派。今年は未だ雪渓が残っており、こんな上でも水は豊富。
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10:15、以東岳頂上。少し風があり気持ちいい。北に熊の敷き皮の形をした大鳥池が大きく見える。その奥に月山、南西には飯豊が見える。両山共、頂上は遠慮がちに雲に隠し、裾野が大きく広がっている。そして、南には朝日の銃走路が続き、一番奥には尖った主峰大朝日岳がでんとそびえている。主脈から分かれる支脈も手に取るように分かる。とても静か。ここで昼食。昨日と違ってお茶もたっぷりあり、心豊か。 |
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下りは、オツボ峰コースを取る。朝日連峰特有のゆったりした尾根を歩く。オツボ峰から三角峰までのアップダウンが高山植物の宝庫。チングルマ、ギボウシ等、花々々。ニッコウキスゲの群落が素晴らしい。向こうに広がる月山との対比がいい。その中にピンクの花が2輪。この辺りでしか見られないヒメサユリだ。緑の草地にくっきりかわいい。 三角峰辺りまで下っていくと、マツムシソウの群落が月山を背景にババーンと広がっている。マツムシソウのこれだけの群落は見たことが無い。これだけ暑くても山には秋が忍び寄ってきているのだなあと感慨深かった。 |
あとは、ブナの樹林の中を一気に下る。やがて、水の音が聞こえて来ると大鳥小屋。水場では、ここまで登ってきた登山者が熱中症に罹ったのであろう、ぐったりしていて大騒ぎしている。昨日より少しマシとは言え、本当に暑い。小屋から朝登ってきた道をただただ下る。それにしても、この山のブナの大きな幹にナイフで落書きしているのがあちこちの木で見られるのが気になる。自然保護のバロメーターであるブナ。朝日連峰にはそのブナが特に多く残っており、白神と並んで全国でも指折りの自然が残った山と言われているのに大変残念なことだ。15:25登山口着。
このコース、ガイドブックによれば上りか下りに大鳥小屋あるいは頂上の以東小屋に泊まる1泊2日コース。何とか日帰りで、それもかなり早い時間に降りて来れた。途中泊と日帰りでは荷物が違う。楽ちん。明日のために少しでも仙台に近づいておこうと車を進める。
8/13
船形山 (宮城・山形県、1500m) No.182
船形山群は宮城・山形県にまたがってあり、山頂付近を宮城県側から見ると船を伏せたような山容であることからこの名があるという。山形側では御所山と呼ぶらしい。この山には、山形側、宮城側から沢山のコースがあるが、今回は友人も同行するというので上り2時間、下り1.5時間と最も楽に登山出来る大滝キャンプ場からの登りを選んだ。ただ友人の調べでは、この大滝キャンプ場に入る林道が大変荒れているという。
旗坂キャンプ場までは舗装。キャンプ場の案内板によればこの先4km程林道を入った所に大滝行きの道が分岐するとある。それを信じて真っすぐ林道に突き進んだのが間違いの基。道は悪路なんてものでは無い程、ひどく狭い。大きな石と大きな穴ぼこ。慎重に慎重に進める。ところが、約10km進んでもそれらしき道が見当たらぬない。その内いよいよ道が酷くなり、前進不能。先の掲示板によれば旗坂キャンプ場からでも時間は倍位かかりそうだが、船形に登れるとあったので、最悪それを覚悟してバック。途中、偶々木こりの人に出会ったので聞いてみると、旗坂キャンプ場下に大滝行きの道があるという。確か通行禁止とあったはず。慎重に運転して旗坂まで戻る。言われた道は、案の上通行禁止の表示がしてある。その林道を無理に入っていく。先程より道幅も広く、道路状況も良い。時折大きな穴ぼこや石があるが、道幅があるので何てことは無い。あの表示は、勝手な推測だが、
早速、8:30に登山開始。歩き始めて暫くすると、登山道脇の樹木の下の笹原がガサガサと騒ぐ。音の感じでは、普通の小動物のものでは無い。姿は見えないが、熊ではないかと緊張が走り、持っている鈴を力一杯鳴らして身構える。なおも続くガサガサは徐々に遠のいていくので、早足にその場をやり過ごす。肝を冷やすと言うことは正にこのことを言う。今回の三山は全てブナが多いが、特にこの山のブナは大きくて立派。こんなに仙台に近い山でもブナが多いというのは信じられない。それにしても今日も暑い。汗をタラタラ流しながら急登をただひたすら上る。ブナで展望が効かない中かなり登ると、樹木の間からちょこっと雲海の上に栗駒山が顔を出す。最後の急登を登り切ると道は平坦になり、やがて立派な小屋が見えて9:50頂上。
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今まで殆ど周囲は樹木で何も見えなかったが、頂上は広々としており、邪魔するものは何も無い。そして、遠く真南には蔵王の山並が大きく、その西に安達良、飯豊そして昨日登った朝日連峰と続く。真西には月山が大きく山裾を広げ、その北には鳥海山もデンと控えている。真北すぐには栗駒が。それらの山塊が、一面の雲海の上ににょきっと見えていている。まるで墨絵の世界。 |
鳥海は、登った時も暴風雨だったし、今まで何回か眺められる所に来ているが、いずれも天気が悪くて頂上は見ることが出来なかっただけに感激。その代わりに、すぐそこにあるはずの仙台の街や太平洋は雲海の下で見えない。手前の方には、この山のブナの見事な森がずっと広がる。心が豊かになる。
時間に余裕があるので、このまま元来た道を引き返すのは馬鹿馬鹿しいと、弁沢コースを下ることとする。途中の三光の宮から分かれて大滝キャンプ場に向かうのだが、このコースを麓まで下ると旗坂キャンプ場に行けるとある。と言うことは、最悪の場合はこの道を登ってきていたことになる。どんどん下っていくと、やがて沢に出る。この沢、石がゴロゴロしていてとても歩き辛い。それに、沢と山道を交互に進むのだが、沢から山道に上がる表示が親切でなく、所々思案しながら進む。やがて、弁沢小屋。山の中腹にある小屋としては立派。
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ここからはブナの中の平坦な道。小さなアップダウンを繰り返すと三光の宮。月・星・太陽の3つを祭っているからこの名がある。それよりも、今までブナの林に隠れて全貌が見えなかった船形山の全貌がここから木の間越しに見える。山頂が平に延びていて、正に船底を逆さにしたようで船形の名を納得。ここから分かれて、大滝に向けて下る。小さな沢を渡って上り返せば、大滝キャンプ場。時に12:40。早々に元来た林道を引き返し、仙台まで一走りしてレンタカーを返却。 |
この3日間の走行距離は実に620km。山と走行、今回も良く登り、良く走ったものだ。