北山杉と紅葉を求めて         瀬川 滋

 
 

 11/25    京都北山・雲取山 (911m、関西百名山)

  今年中に二百名山を少なくとももう1山と考えていたが、秋は稼ぎ時なのに色々行事が詰まっていて、時間が思うように取れなかった。少し時間に余裕が出来たなと思ったら鼻風邪を引いてしまい、それが良くなった先々週・先週の土・日は天気がもう一つと、なかなか挑戦出来なかった。この三連休も、真中の土曜日に学会発表があって遠出は不可。そこで二百名山を諦めて、日曜日に日帰りで行ける山ということで関西百名山のどこかにと考え、それならついでに遅れている紅葉をも味わいたいと、山から直接市街地最奥の貴船神社に下れる京都北山の雲取山を選んだ。

 京都北山は言わずと知れた北山杉の里で、廃村八丁、芹生、花背等々ひなびた里として非常に有名で、ハイキングコースには事欠かない。しかし、比良や比叡の影に隠れて山としてはもう一つ食指が沸かず、神戸からのアクセスも悪いこともあって、今迄全くの手付かずであった。山名が東京都の最高峰の百名山・雲取山と同名であるということ、そしてガイドブックには北山の中では標高が高い割に、遠望でも近くからでもその山容を見ることが難しい存在感の無い山とあり、何か秘めたものを感じた。

 未明に自宅からJRで京都に出、地下鉄で北王路で下車。そこからバスで上賀茂神社を経て鞍馬街道に入り、花背峠を越えて花背高原というロマンチックな名のバス停で降りた。途中の車中からの京都の町、紅葉は未だ未だで盛りはこれからというところか。しかし、貴船辺りまで入ると結構色付いている。帰りが楽しみだ。でも、赤が少なく黄色が多いように感ずる。

 9:15登山開始。歩き出してすぐの所に狭いスキー場が現れる。ヒュッテはボロボロで、どうも最近は営業してないんじゃあないかと見て取れる。バス停の名の所以か。しっかりとした登山道の両側は立派な杉林。日が射さず薄暗い。おまけに、昨夜降った訳でも無いのに濡れていて歩きづらい。坂を登り切ると寺山峠。

 峠からの下り道には雪が少し残っている。あの道の湿めり気の原因は雪溶けだったのだ。少し下った所の分岐を一ノ谷に入る。少し進むと小屋が現れるが、周りだけで無く屋根には雪がびっしり積もっていて真っ白。つい先日北海道で4人の遭難者を出した季節外れのドカ雪、北陸地方迄と思っていたが、この辺りでもかなり降ったのだ。この時期にしては珍しい。雪を眺めながら坂道を登っていくと、やがて少し開けた鞍部に出てそこが雲取峠。一面真っ白。向こうの杉の濃緑との対比がとても風情がある。暫くダラダラした上りを歩くと10:35雲取山頂。何ともあっけなく着いた。

 物足らないったらありゃしない。人っ子1人いない。周りはだらだら濃い緑の山が続く。ここで朝昼兼用の昼食。単独者と2人組が通過して行っただけ。静かなこと、この上無い。

 頂上からは、三ノ谷コースを取ってかなりの急坂を下る。ここらにはもう雪は無いが、踏み跡を消してしまう程の落ち葉が続いており、しかもそれが湿っているので、滑って歩きずらいことこの上無い。慎重に下り切ると林道に出る。ここまでずっと北山杉が植わっていて、潅木ならこの時期には葉を落としていて木の間越しに多少なりとも展望が利くのだが、ここではそうはいかず結局雲取山の全貌は見えずじまい。正に、山に登って山を見ずだ。頂上から1時間程で芹生の里。数軒の家しか見られないが、各家には紅葉が植えてあってそれが紅葉しているので、やっと秋に巡り合えたなと感じる。

 ここから、舗装された道を芹生峠に向かう。峠への道は、それまでの若い杉では無い鬱蒼とした杉が密生していて、木ノ間越しの太陽からの光がまるで後光のようで神々しい。

 峠からくねくね道を下り切ると、それまで殆ど見られなかった車が一杯止まっていて、そこが貴船神社奥宮。社の前に神楽殿があって、そこに古の女官が使ったのを想起させるような白の帳が飾ってある。肝心の紅葉は今一つ。「川床料理」で有名な貴船川沿いに歩くと、紅葉見物の人、人、人。狭い道に沢山車が入ってくるものだから、あちこちですれ違いの渋滞。川沿いの料理屋の植木の紅葉には赤いのもあるが、全体としては新緑の緑や黄色が多い。散っている葉は皆橙色。紅葉する前に散ってしまっているのだ。神社本殿辺りに少しましなのがある程度。そのかわり、夏には床が敷かれているであろう川面に花が飾ってある所もあり、とても風情。
 紅葉では不完全燃焼だったので、まっすぐ帰る積もりだったのを急遽予定変更して貴船より標高の高い鞍馬山に回ってみることとした。原生林の急坂を登り少し下ると、それまでの濃い緑世界が錦の世界に。建物も朱色が多く、紅葉も紅色と、背景の山の緑とのコントラストが実にいい。本殿前が広いのでそんなに混雑しておらず、ゆったり出来る。下り道もあちこちに建物があり、紅葉とマッチして味わい深い。仁王門までの間ゆっくり紅葉を楽しんだ後、15:50叡電鞍馬駅着。結構歩いた。
 貴船を過ぎた辺りの叡電の車窓からの紅葉は、ライトアップもされていて、とても見応えがあった。

 今回の山行、山そのものはあっけなかったが、北山の秘めたる味わいに触れることが出来たのと、それよりも何よりも今年の遅い秋をふんだんに楽しめたのが良かった。



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