石原知事に続こう 「価値創造への果断と行動」 辻 淳二
今年になって、金融再生委員長の「地方の銀行向けの手心発言」とか、少女監禁事件に関わる総理/国家公安委員会/警察庁/新潟県警の「隠蔽/身内庇い姿勢」とか、「国を支える筈の組織にこれほど守旧の意識がしみ付いていたら、多少の経済回復があっても日本の本格再生なんて遠い話」と痛感させられるニュースが続いた。そういうやりきれなさの中で、東京都による金融機関大手を対象とする新税課税宣言には、「居合い抜き」が決まったような切れ味とタイミングの良さを感じた。それは、マスメディアが論じているような「税金で支えられながら自己責任意識が見えず、世間に評判が悪い銀行に一矢を報いた」ことへの共感もあってのことである。そしてもう一つ、私自身がビジネスや生き方のモデルとしている『CIM連鎖モデル(CIM = Concept making,Imaging & Mappingの意味)』の見事な実践例となっていることに拠っている。
これは、お客様に価値をもたらすことを業とする情報化コンサルタントとして、「何(いかなる力)でメシを食べているか」をモデル化したもので、
1 まずC(コンセプトメイク)つまり「(懸案を抱える)顧客組織がめざす改革目標設定(宝の山探し)」で顧客の責任者と意気投合し、
2 次にI(イメージング)つまり「イメージ鮮明な(「参加して成功させたい」とワクワクする)実行起案策定」で推進キーメンバー達と協創し、
3 情報システムの実現に当ってはM(マッピング)つまり「関わる組織/人が速やかに当事者意識を持てる」ように後方支援する
という連鎖をメリハリよく繋ぐ能力発揮に力点を置いたものである。
世間衆知の例では、「経営に変革(時代を捉えた価値)をもたらすシステム化」で先鞭を付けたヤマト運輸の変革がこのモデルにフィットしている、分かり易い例に他ならない。1973年の第一次石油ショックの後、運輸業界が生き残るための変革を求められた時に、同社は、
1 先ず経営トップがC、つまり「当社は、(企業を顧客とする)業務用の輸送を捨てて、(個人を顧客とする)宅配で生き残る」とめざす目標(宝の山)を明確に示し、
2 それを受けた改革推進プロジェクトチームがI(アイ)、つまり「その宅配業で最大手の郵便事業を顧客サービスで超えるために荷物の追跡&問い合わせ応答システムを起案」し、
3 その実現に当っては情報システム部門にM、つまり「POSの実用化等に挑戦してのシステム化」を動機付けして実現し、
つまり“CIMを連鎖させて”、今日に至る発展への道を拓いている。
もっとポピュラーな改革事例では、明治維新の際の坂本竜馬の「彼ならではの能力発揮」が、このモデルに適っている。当時志士を自負する人はゴマンと居た中でその代表と評価されるに値する彼の業績は、「薩長連合の仲立ち」と「大政奉還への奔走」と「船中八策の起草」とされている。まさに彼は、「外国の植民地になることなく、国の近代化への道を拓く」という日本の変革目標に向かって、
1 先ずCつまり、「活路(宝の山)は、尊王攘夷でも佐幕開国でもない、“倒幕で開国を、しかも無血で(つまり大政奉還で)”実現すること」と見究め、 [ここで、勝海舟と協創]
2 Iつまり、「その実現のカギは、幕府に奉還やむなしと思わせる対抗勢力を作ること」とイメージし、ビッグ2だった薩摩藩と長州藩の連合を仲介して「これで行ける」と盛り上がりを倒幕側にもたらし、さらに「(大政奉還後に実現する)新しい国の骨格イメージを示した船中八策」を起草し、
3 Mつまり、これをテコに「幕府に恩義を感じている土佐・越前などの列候に倒幕/開国で動くよう説得/動機付けする」べく奔走するという、CIM連鎖のモデルに適ったメリハリの利いた働きをしている。
それでは都の新税案提示がどうこのモデルに重なるかというと、都の経営者として新年度に解決をめざすべき大きな課題である「財政赤字の解消」に直面し、
1 Cつまり、「財源の狙い所(この課題の解決に向っての宝の山)は、外形標準課税」と見究め、[知事、主税局長、あるいは(黒幕説のある)自治省側の人の発案か、彼らの合作による発案かは知らないが]
2 Iつまり、これをインパクト鮮明に成立させ、実施コストも少なくするために、「対象を(今なら世間の目が厳しい)大手の金融機関に絞る」ことを柱として案の骨格を詰め、[この条例を通すことに主眼を置くこのステージでは、国や金融機関の反対意見の根拠になっている「対象を絞った」ことが効いている]
3 Mつまり、味方に付く筈の世論を説得力として、「議会の各会派の支持を取り付け、反対意見を抑え込む
というようにCIMを連鎖させ、(法律に反するとか、不公平とかの批判は潜在しているから判定はまだだが)「大幅な税収増」との価値創造を“奇襲スチールで実現”に持ち込んだと、モデルに照らして捉えたということである。
加えて、この動きに今日的な価値が高いと感じたのは、表記の不祥事に見られるように「臭いものにフタ」「知らしむべからず」で問題の解決へと動かない公的組織が多い中で、所管組織の最大の課題を解決すべくリスクを恐れずにトップ自ら行動したことである。仮にそれがゼロサム(つまり、自分が利を得れば、他に割りを食う側がある)問題であっても、仕掛けられた方が改革に本気になるのを早める効用はあり、守旧型の組織にはそういう切り込みも必要だろう。閉塞する日本の経済社会を再生するために、「価値創造へのこんな挑戦もあるんだと、目からウロコが落ちるCIM連鎖の行動例」があちこちから出てくる流れが生まれることが大切で、自分もまたこのモデルの果敢な実践者であり続けねばとの思いを新たにしている。 [2000.3.18]