日本の改革に私たちが参画するチャンス到来 辻 淳二
改革を看板とする小泉内閣が誕生して2年半経ったが、「掛け声はあれど実態は進まず」の状態が続いて、「この国を改革するのは大変なことだな」と思い知らされている。その中で9月に、自民党の総裁選で小泉氏が圧勝、その一方で民主党と自由党の合併により久々に強力な野党第一党が誕生と、両陣営とも体制を整えてきて、11月9日に衆議院選挙が行われようとしている。そこで今、「有権者として当事者意識を持つに格好の切り口」がこの選挙にあることに気が付いたので、そのことを書くこととしたい。
私には、この2年半を通して、「日本の改革に関して、一つ見えたな」との感を深くしていることがある。それは、「一人のリーダーの下で達成できるものではなく、改革を“起承転結”の4段階くらいに分けて、それぞれの段階に必要な突破力を発揮できる複数のリーダーによるバトンタッチ方式でやらないとできない」との仮説である。
このことを実感し始めた第一歩は、内閣誕生後1年足らずで世間を騒がせた「田中外相解任劇」だった。その時に感じたことは、本ホームページの「投稿広場」欄(02年4月、「政治ワイドショー劇」ヤブ睨み)に投稿している。投稿後、同前外相は秘書給与流用疑惑などが表面化して議員辞職にまで追い込まれたが、この稿に書いた見解、つまり「室長級ほかの工費横領/私物化を許した組織の緩み」や「鈴木議員に錚々たる外務官僚がひれ伏していた実情」などを国民に広く知らしめ、このような情けないレベルにはもう戻らない(だろう)外務省改革へと舵を切らしめた点において、「彼女は同省改革の第一ランナー(“起”の段階の担い手)として、余人に代えがたい役割を果たした」との見方を変えていない。第二ランナーの川口現外相の代になって、結局は改革が官僚主導型に揺り戻され、スピードが遅くなっているように見えるので、「バトンタッチがうまくいったとは言えない」との感を持ってはいるが。
一つの省に過ぎない外務省改革でさえバトンタッチ方式でないとできないとすれば、「いわんや、国の改革をや」と捉えるのが大局的な見方となるだろう。実際に、小泉総理の自民党総裁としての残り約3年の任期の間にこの国の改革が何がしか進むと見ても、それは目指すゴールから見れば「やっと入り口を切り開いた」という程度の到達度に留まることは、ここまでの推移から見て明らかと言えるだろう。とすれば、我々国民としては、小泉氏に期待を繋ぐ一方で、「バトンタッチがうまく行くようにナビゲートする」との役割認識を持って行動することが大切になってくる。
そこへ、今回の総選挙である。幸いにも、与党と野党第一党の力がかなり接近し、かつ「マニフェスト(政権公約)選挙」と謳われるように政策を掲げて戦うムードが今までになく出ている。このマニフェストに掲げる改革に関して、実行主体となる可能性が高い自民党は抽象的に留めていたり、「政権交代」を勝ち取ることが先決の新民主党は結構踏み込んでいるが実行に向けた詰めはきちんとなされていなかったりと、できばえは決していいとは言えないが、これまでに比べれば一歩前進と言えるだろう。
このように舞台背景を捉えれば、今回の票の投じ方を決める「切り口」は次のようになる。それは、この選挙を「小泉氏を日本の改革の第一ランナーと捉え、“起”から“承”へ段階を進める次のランナーを私たち国民が選ぶチャンス」と意味付けることである。小泉氏は、「絶叫ばかりで、内容がない」と批判されながら、道路公団にせよ、郵政民営化にせよ、改革に向けた法案を作る流れには持ち込んできた。それを支えてきたのは、国民の高支持率だった。第一ランナーとしては、同氏は余人に代え難い存在だった。ところが、これから法案等で具体化される改革の内容が「真にまともなもの」になるかについては、信じるに値する働きを国民に見せていない。一例を挙げれば、小泉氏は法案化するといった具体化の段階では官僚依存等のしがらみを断つ所まではいけない、と見えること。上記の外務省の問題や最近の前道路公団総裁の解任騒ぎの過程のイニシャル発言問題などを見ても、政官癒着を国民に露呈する所までは行くが、その先は問題をウヤムヤにして根本からの解決に向おうとしない自民党の体質を引きずっている。日本の改革の“承”の段階の重点課題として「官僚支配からの脱却」を意識するなら、そこに踏み込む段階のランナーとして小泉氏がベストと言えないのではないだろうか。実際にできると保証された訳ではないが、この点では、民主党の方がしっかりとマニフェストに掲げている。
以上の思考から、私は、今回の総選挙を「日本の改革を引き続き小泉氏に託すか、ここで第二ランナーとしての菅・小沢連合の突破力に託すか」を私たち有権者がナビゲートできる稀有なチャンスと捉えることとした。このように視点を定めたことで、この選挙を当事者意識を持ってウオッチして行こうという気になっている。先日の埼玉県での参議院補欠選挙は投票率が余りにも低かったが、今回の選挙戦には、「かってないほど多数の国民が、国の改革に参画する思いを持って投票に行く」という新風が吹くことを期待している。[03.10.25]