倉石 英一
(その1:「何が起こるか」編) ![]()
2000年1月1日0時00分にY2K(西暦2000年)問題がどんな形で我々の身近な生活に影響を与えるかについて個人の立場で考えてみて、それに対してどのような対策をたてればよいでしょうかというのが本文の主旨です。
ただし、書いていくうちにホームページで読んでいただくにはやや長文になってきましたので、全体を2回に分け、今回は(その1)としてY2K問題でどんなことが起こりそうかを中心に書くことにしました。それについてどう対処したらよいかについては、(その2)「対策編」として次回に持ち越すことにしたいと思います。
![]()
最近、Y2K問題がようやくマスコミでも話題になってきて、一般の人にも関心が持たれるようになってきたようです。この問題の複雑なところ(もっといえば恐ろしいところ)は、誰にも正確にその起こるであろう事象とその影響が予測できないことだと思います。
マスコミは別にして、いわゆる有識者の見解でも、楽観論から悲観論までずいぶん幅があって、大体このあたりに納まるであろうという「読み」がしにくい、つまりどう判断したらよいか非常に迷う状況ではないかと思うのです。
これに関して最近非常に面白い本(小説)を読みました。本の題名は『パニックY2K』といい、著者はアメリカの作家、ジェイソン・ケリーで集英社文庫に収められています。国防総省のシステムに対して、当然2000年対策が施されるのですが、それに対して2000年1月1日に誤作動を起こす仕掛けが組み込まれて、米軍関係のすべての機能がマヒし、もちろん最新のコンピュータ制御の兵器が全く使えなくなるという設定です。当然のごとくこの陰謀には黒幕がおり、それがなんと中国だというのです。つまり、ハイテクで固めたアメリカの兵器が機能マヒに陥っている間に、いまだにローテク兵器が主流の中国がアメリカを攻めるというお話になっています。
ストーリー自体は「荒唐無稽」と言ってもよい内容でありながら、電気、ガス、水道などのライフラインがストップしたり、空港の管制システムが異常を起こし、飛行機が墜落するといった、よく言われるY2Kの影響が(考えられる最も極端な形での捉え方ではあるが)リアルに描写されており、その意味では結構恐ろしいとも言える内容になっているのです。
さて、Y2K問題で起こるであろうと予想される現象の主なものは一般に以下のようなことが言われています。
(1) 電力、ガス、通信などのライフラインがマヒする。
(2) 金融システムが機能せず、預金がおろせないとか為替の決済ができなくなる。
(3) スーパーやコンビニのPOSシステムがダウンして買い物ができなくなる。
(4) 空港の管制システムが使えず航空機が着陸不能になりついに墜落する。
(5) 企業内のシステムが使用不能になり、企業活動に支障をきたす。
(6) マイコン組み込み型の電子、電気機器等(車なども)が使用不能にななどです。
これらについて、そのシステムを開発、運営している当事者(主に企業)がどれだけ2000年までに対策を終わらせることができるかということが大きな問題だと思いますが、そういう情報が正確かつ一般市民にわかりやすく提供されるかというと、今の日本では殆ど絶望的に近く困難だと考えられます。つまり、非常に限られた情報で判断せざるをえない状況ではないでしょうか。
一つだけ言えることは、Y2K対策は2000年1月1日までには絶対終わらないということです。その証拠に、政府や企業の最近の言い方は、Y2K対策を促進して2000年に間に合わせることよりも(実際問題、この時期になればもう手遅れと判断せざるをえないが)、問題が起こったときの、または問題が間違いなく起きることを覚悟したうえで、その影響を最小限に抑える「危機管理」、「リスク管理」に完全にウェイトが移っていることからも明白だと思います。
そこで、個人レベルでも、これらに対する防衛処置を可能なかぎりとることが必要だと思うのですが、その前に限られた、かつ錯綜した情報によってでも起こるであろう現象をできるだけ正確に予測する必要があると思うのです。その場合に、情報があいまいである限る最悪の事態と言わないまでも、やや悲観的なレベルで捉えておく(つまり安全サイドで考える)方がよいというのが私の考え方です。
そういう意味で、具体的に上記の予想される事態についてそれぞれ個人の生活にどう響いてくるかについて、(あくまで個人的意見として)以下に述べてみたいと思います。それにつけても、最近、当事者である企業や政府の姿勢がだんだん自信がなくなってきていように思えるのが大変気になるのです。それらも踏まえて「当たるも八卦」で予想してみましょう。
まず(1)のライフラインですが、これらについて電力、ガス会社もNTTなども万全の対策を取っているものと考えられますので、これらの供給が途絶える可能性は低いと思います。ただ、最近、東京電力や大阪ガスなど複数の大手企業が1999年の大晦日にシステム要員を大量に待機させるということを聞いて逆に心配になってきました。これを念には念を入れるという慎重さと評価するか、自信のなさと受け取るかは解釈が分かれるところと思いますが、私は若干ですが自信のなさの現れという受け止め方をしています。
これに対しては一応の対策を考えておくべきと思います。
次に、(2)の金融システムです。これについては、1999年と2000年を挟んで海外との為替の決済についてはケースが多すぎてシミュレーションテストが不可能だという見方をしていますが、そういうことに無関係な庶民はまず考えなくてよい世界と思います。ただ、そういうトラブルが起こって世界の金融システムがどういう混乱を起こすかについては経済的にとんでもないパニックにつながるおそれがあるという別の意味で関心はありますが。
それよりもATMで預金がおろせなくなるかもしれないという直接的な影響の方がはるかに深刻です。都市銀行や郵便貯金などの大手企業は対策済みということですが、Y2Kについての金融監督庁の最近のチェックがひどく厳しいという話があり、どうも異常にナーバスになっているのが気になるところです。これについても一応の対策を行うのが妥当と思います。
(3)のコンビニ、スーパーのレジシステムですが、これはかなりの確率で発生するものと考えてよいのではないでしょうか。理由は、対象の数が多すぎて2000年対策の手がまわらないと予想されることです。規模の小さい地方のスーパーなどは更に危険だと思います。一旦、レジが使えなくなった場合、一昔前なら手作業に戻す手も使えると思いますが、コンピューター漬けの現在はそれも不可能でしょう。この影響はかなり深刻です。
なにしろ食料や日用品がしばらく買えなくなるのです。これに対する対策はかなり明確だと思いますが、その場合にもっと別の問題が起こると考えられます。それについては後でふれたいと思います。
(4)の航空管制システムはある意味でもっとも深刻な問題です。なにしろいったん起これば命に関わる問題だからです。この問題も相当複雑で、時差の関係で2000年になった国から1999年の国へのフライトといったややこしいケースを多国間でシミュレーションすることなど殆ど不可能と見ています。特に発展途上国の空港については不安がぬぐえません。
「2000年1月1日を海外で迎えよう」というキャッチフレーズのもとに越年ツアーを売り出している旅行会社が何社かありましたが、一体何を考えているのかとその感覚を疑っていました。最近になって、かなり海外の情報が入ってきたのか、さすがにこれらの旅行会社が相次いでツアーをキャンセルする動きが出てきましたが当然のことでしょう。個人としての対策は単純で、1999年から2000年をまたがる海外旅行には参加しないことに尽きます。安全を考えれば国内旅行も見合わせる方がよいと思います。
(5)の企業システムの問題は基本的に企業にまかせるべきことでしょう。ただ、影響が企業内に留まる場合はよいとして、何らかの形で消費者に影響が及ぶ場合は要注意です。例えば、医療・病院関係の検査システムなどの異常はその可能性があります。しかし何しろケースが多すぎます。いちいち一般人が関わっていられない分野といえるでしょう。
最後の(6)組み込みマイコンについては種類とその数がとんでもないことになっており、実態把握すらできないと想像されます。かりに対策が分かっても全国に散らばる多数の対象マイコンを手直しすることなどとても無理な相談でしょう。この分野はもっとも何が起こるか予測しにくく、したがって影響度を計ることが困難な領域と思われます。個人としては、動かなくなって最も困る機器、生命・健康に関わるものの優先順位をつけてそれなりに対策を考えることが大切になるでしょう。
これらの現象が起こるか起こらないかは別にして、更に懸念されることがあります。それは、日本人の「パニックに弱い」国民性です。1973年の第1次オイルショックの際にトイレットペーパーや洗剤が店頭から姿を消したという過去
の実績を思い出すまでもなく、ちょっとした噂話でいっせいに一つの方向に走り出すというパターンがあります。Y2Kで最もこわいのは、実際に2000年当初に発生する事象よりも、それ以前にマスコミ等がオーバーに騒ぎ始めた時の日本人全体の反応です。その影響はオイルショック当時とは比較にならないくらい広範かつ深刻になると思われます。実は、Y2K問題の本質はこちらの方が大事かもしれません。個人的にはこういうことに備えることの方が必要性が高いとも言えます。
以上、Y2K問題でどのような事態が起こる可能性があるか、私なりに考えてみました。限られた情報での予想は多分に「当たるも八卦、当たらぬも八卦」的かもしれません。情報を持っている会員の皆様のご意見(特に反論)をホームページ上に提起していただければ有難いと思います。
次回は、続編として、上記に対する対策として、個人および家族の生命、財産、生活を守るためにとるべき手段について具体的に考えてみたいと思います。