不良債権考              岩田 朋之

 先月のペンリレーの筆者が石島君なのを見て一瞬ヤバイと感じた。彼は、先輩に向かっても「次に書け」と平気で言う人物である。案の定、10日の火曜日夕方、「元NECの石島さんという方から電話です。繋いでいいですか」と言われ、出ない訳にも行かず、「珍しいね、なんか用?」ととぼけたが、「何を書いても、何行でもいいんだよ。これ断ること出来ないんだよ」と言って押しつけられてしまった。かくして、酒の話も、ゴルフの話も既に書かれているので、困って「不良債権考」なる暴論にした次第。

 小泉内閣になって「聖域無き改革」が叫ばれ不良債権は2〜3年で処理すると明言しているが本当だろうか。

 臨海副都心に業界のTビルが稼動しているが、業績不振りで昨年4月より(株)Tビルを冬眠化した。この冬眠化の説明会に2回、また今年6月にその後の業績の説明会に出席して、改めて日本の不良債権問題の重大性を認識させられている。(株)Tビルは、都、業界の持ち株会やその他の企業が出資して資本金25億円弱の不動産会社である。所有するビルはこのTビルだけで、借入金は500億円弱である。ビルの稼働率もほぼ100%になり、平成11年度は単年度で収支が均衡したが損益ベースでは黒字化せず、創業以来の債務が溜まり、累積債務額は110億円強で銀行からの融資が困難になった。そこで財務内容の良いA社にビルの運営をして貰うという事である。

 この冬眠化案は、銀行の金利を一部減免して貰い、土地借用料の猶予等の便宜を請けた上、ビル会社の要員を1名残し全員をA社に移し、役員は経理担当だけとし、ビルをA社に一棟貸しし(信託リース?)、借入金と金利を返済し続けると、単年度の損益ベースで黒字化に10年強、累積債務一掃に30数年掛かるというもの。蛇足だが、臨海副都心のFタウン社も業績不振で同じ措置がされた。

 このビルがほぼ100%の稼働率なのに単年度収支可でも損益ベースで黒字化しないのは、減価償却費による。ビル(固定資産)は完成した時から法律で定められた期間で10%まで、定率か定額で減価償却されていく。この減価償却費は金銭の支出を伴わないが損益計算上原価として扱われる。また貸借対照表左側の固定資産の減価償却費は右側の資本の部に反映されバランスが図られる。この減価償却費が損益上吸収出来なければ、資本金は食いつぶされて債務超過になる。

 日本は敗戦後オフィスも住宅も灰燼と化し、ビル建設や住宅建築が一大産業となり、不動産は40数年間インフレそのものだった。我々日本人は、彼のオランダ人からウサギ小屋と揶揄された西洋式長屋でさえ2〜3年住んで売却すると本来減価償却されて資産価値が減るのが正常なのに売価が購入価格より高いという異常さに思考回路が誤作動して正常な判断が出来なくなっていたのであろう。土地も建物も不動産は常にインフレ傾向にあり、最初は減価償却費が吸収できなくとも何れ土地は値上がりし賃貸料も値上げできるから利益が出てきて事業として成り立つと考えていたに違いない。

 平成初期のバブル時代にこのように甘い考えで作られた計画書に基づいて、沢山の不動産投資が行われたとおもわれる。宮崎県のシーガイヤ、長崎県の何とか村等のリゾート開発、村興しを期待したゴルフ場開発など、資本が少なくて多額の借入金で企業化されたものは、創業と同時に利益がでなければすぐ資本金を食い潰して債務超過に陥り運転資金の調達不能になる。

 バブル期に投資された多くの物件がTビルのようになっていれば、小泉総理のいうように「不良債権を2〜3年で処理する」ことは難しいと思う。

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