サイクリング事始め 山田 俊治
年齢甲斐もなくBMWの折り畳み自転車を購入して1年余りになる。この際、目下流行のマウンテンバイクをと考えたが、実物を見てみると、カタログから想像していた以上にゴツイ感じで、60代も半ばに差しかかろうかという年寄りが乗るにはチョットはばかられる。
ふと隣を見ると、いまや製造中止になったロードタイプが目に入った。マウンテンバイクに比べると遙かに安いし、その上旧モデルだから現品限りで40%オフだという。折り畳みにも拘わらず、ホイールの大きさも、通常の26インチで、私のイメージに合った。何よりも、昨年春、会社の先輩の生前葬の席でお会いした松川さん(NEC OB)が乗っていたモデルである。こんな訳で、一も二もなくこのロードタイプを買うことと相成ったのである。
それにしても、21段切り替えの本格的なサイクリング自転車など乗ってみたことがない。幸いにして、昔の会社の同期入社で、若い頃からサイクリングをやり、いまも続けている友人が隣の我孫子にいるので、彼のコーチを受けることにした。
先ず、距離メーター付きのスピードメーターとトウクリップを買ってこいといわれて、御徒町にある自転車用品の専門店を紹介された。行ってみると、スピードメーター一つにしても、その種類の多さに驚かされた。サドル、ペダル、ハンドルやさまざまな付属品に始まって、ウエアやヘルメットに至るまで、ところ狭しと置かれている。一言でサイクリングといっても、その奥行きの深さに目を奪われたが、マニアの間ではこれはもうファッションである。
トウクリップについては、いざというときに外れなくて、転倒でもしようものなら、危険この上ないので、差し当たりこれは止めて、スピードメーターだけを買った。流石にヘルメットや派手なウエアを買う度胸はない。
早速スピードを測ってみると、われわれが自転車で通常の走りをしている状態のスピードが時速15km、かなりスピードを上げた積もりで20kmである。マラソンの高橋尚子の速さがこれくらいかと思うと、改めてマラソン選手の凄さが判る。
コーチ役の友人は、いまでも平均時速25kmで、走るときは1日に大体70km、多いときは100kmを走るというから驚く。ギアは、前は2/3、後ろは4/7とそれぞれ真ん中のポジションを標準として、ペダルを踏む回転数は毎分90回転にするのだと教わった。このペダルの回転数をできるだけ一定に保つよう心がけながら、その時の道路の傾斜や風の状態などに応じて、ギア比を切り替えていくのがコツなのだそうだ。
仮にトウクリップをつけ、足を引き上げる際にも加速して頑張ったとしても、師匠の域には到底及びそうもないが、このレベルを一応の目標として励んでいる。
幸いなことに、私が住んでいる柏近郊には、江戸川と利根川の堤防沿いにそれぞれ数十キロにおよぶ立派なサイクリングロードがある。手賀沼の周囲を一周しても20km近くになる。問題は、そこに至るまでの道路だ。最近はどこを走っても車が多く、狭くて段差のある歩道を走るのは余り気分のよいものではない。往路はまだしも、帰路のことを考えると憂鬱になる。
そこで「折り畳み」の出番になるのだが、いざ遠出をしようとすると、まとまった時間と気象条件とが合わず、残念ながら余り出かけていない。ただ、この夏には、越谷付近の江戸川沿いに車を止めて、江戸川の堤防を野田からさらに上流に向かって走ってみた。ゴルフの帽子に短パン姿、リュックは好きではないので、後部の荷台にスポーツドリンクを詰め込んだ専用のバッグを掛けて走るのだが、その爽快さは喩えようがない。何よりも車がいないのがよい。自転車専用道路にしては、自転車の数も多くはない。まるでサイクリングロードを自分が独占している気分になる。
このところ、雨が降らなければ、土曜の夕方、車が余り通らない裏道ばかり辿って、自宅から片道10km位の範囲のサイクリングに出かけることが多い。何処を走っても坂らしい坂がないのが助かる。普段、車で通っていては気がつかない田園風景や新興住宅地に出会い、新しい発見があって結構楽しいものだ。
つい先日、何気なく走っていると、数年前に梨狩りに来たことがある梨園の前に出た。たまたま郷里の親戚に梨を送ろうと思っていたので、宅配便で送ることにしたが、手許に住所録をもっていなかったので、住所を覚えている一個所だけ申し込んだ。すると帰りしなに梨園の主人が、キズモノですがといって、送ったのと同じくらいの量の梨を呉れた。例によって後部の荷台には両サイドにかける形の大きなバッグを積んでいるから、悠々もちかえることができた。帰宅したときに、家内大喜びで、曰く、「これからはまとめて買わないで、一回に一個所ずつ送ったらいいわ」。
ともあれ、これからサイクリングには最高のシーズンを迎える。この秋には是非利根川の堤防を上流に向けて走ってみたいと考えている。