情報取得(土地探し)がたいへん!       淺野 友彦


 昨年の2月。会社の組合を通じて突然の通知があった。「現在の経済環境・会社の業績を考慮し、社宅を順次閉鎖します。2004年3月までに退去をお願いします。」というものでした。ある程度、いつかはこのような事も有り得るかな?とは思ってはいたものの、いざ期限を切られて退去を迫られると、ハテサテ何から手を付けて良いのか、途方に暮れてしまった。

 幸いな事に、私の義父は某トップ住宅メーカの一級建築士。結婚した時から「マンションではなく一戸建ての建築」をある程度覚悟していた。むしろ、結婚時の嫁の希望は唯一それだったとも言える。それなりの蓄えも準備していたし、何から手を付ければ良いか義父に相談してみた。すると「家の事は任せておけ! ただし、家を建てるには土地が必要。好きな場所に土地を探してきて欲しい。いろんな希望をじっくり確定するためにも、早くから行動することを奨めるよ。」と指南された。

 「単に探す事なら任してください。得意ですから。」となぜか豪語してしまった。そのとき私は、インターネットを使えば土地情報なんてたくさん集まり、選り取り見取に違いないと思っていた。

 早速、インターネットを使って、いろんな不動産サイトから土地の情報を探してみる。やはり、いっぱいあった。ただし、自分の予算・希望の路線・駅までの条件などを選択すると、当然の事ながら候補は限られくる。それでも20件程度の条件に見合う土地がみつかった。「思った以上に簡単だな」と思った。3年も前から準備しなくとも良いではないか...義父のアドバイスは、足と縁故で土地を探していた前世代的な心配事だと思ったが、すぐにそれは間違いだと気づいた。

  検索した20件の情報を携え、クルマで土地の見学に行ってみた。

 1件目、高いビルのすぐ北側にある、いかにも日当たりが悪い。
 2件目、クルマも通れないような狭いアプローチ。
 3件目、とても条件が良さそう。ただし周りを見渡すと低地。昔、河川だった所らしい。
 4件目、近くのマンション建設に反対運動をしている。
 5件目、とても見晴らしの良い高台。これは良いと思ったら「崖崩れ危険指定地域」の看板。

 どう考えてもおかしい。何件訪ねても同じような「みそっかす」な物件ばかり。ふと、最寄りの駅前にある不動産屋が目に留まり、物件の相談を装って事情をヒアリングしてみた。

「インターネットで土地を探してこの辺りに来たのですが、なかなかいい土地が見つかりません。」と言ったら、「そりゃそうですよ。」と一蹴された。聞けば、インターネットに掲示するような物件は、どうしてもこうしても売れないような物件なんだと言う。

 彼が言うには、地主から売りたいという土地が出た場合、

 1.何はともあれ縁故のある顧客への紹介
 2.はっきりとした予算・希望の提示が有り、建築業者にこだわらない(金払いの良さそうな)即決しそうな顧客への個別紹介。建物とパッケージ化した土地の販売が可能な顧客
 3.あらかじめ登録された一般的な顧客への個別紹介
 4.不動産仲間同士での紹介・仲介依頼
 5.この時点でやっと「全国共通の不動産流通DB」への登録。ただし、このDBは不動産業者しかアクセスできない
 6.それでも駄目な場合にやっと、個別のちらし広告を行ったり、インターネットの不動産サイトに登録するという。

ということでインターネット上に出ている土地の情報は、売れ残り品ばかりなのだという。これは何とも許し難い。何としたことか!。ましてやリクルート社などが発行する住宅情報雑誌は客引きのネタとして掲載するためであって、売れ残り中の売れ残りが多いのだという。

 この歳になって青くさいこと言っても始まらないが、世の中の標準的な動きと思い描いているインターネット社会の理想像とのギャップを思い知らされることとなった。

 かといって、不動産業者も地権者も、効率的かつ高価格にて土地購入希望者に売却している様子もない。一度でもお店に訪問や連絡を入れると、過剰なまでのセールス活動が行われる。大量のFAX・カタログ・物件リストの郵送など、長引く不況と地価安で土地の流動性が低さも手伝ってか、買い手探しと顧客引きつけに四苦八苦しているようだった。それなのに、条件のいい物件が出た場合、何千万円の売価であろうが「あっ」という間に売れてしまうらしい。よくもそんな高額なものを即決できる人もいるもんだなぁと思うが、同時に、そのような物件はもっと高値で売るべきものだったのではないか?と思ってしまう。

  いづれにしても、「売り手」と「買い手」の双方が、各々の相思相愛の相手(物件)を見つけ、双方にとって適正な価格を設定すべく、かなりの労力の広告コスト・情報取得コスト・交渉コスト・価格設定リスクを無意味に消費されているのは明らかなようだ。

 う〜ん。こうした不効率性の隙間に入り、なんとかビジネスにならないものかと思いつつ、まだまだ土地探しは続く。

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