松本東亜のシリーズ投稿(第10回)
現代のこころを詠む
『短歌のページ』
[近詠歌]
思ひ出に人は暮らすや美しき光りの中に若き日を見む
[歌人たちが歌った郷土熊本(シリーズ26=安永信一郎)]
(この稿は、歌誌「すぎなみ」2003年2月号(編集責任:松本東亜氏)から転載しています)
おほけなくいこひて立てば山上の山鳴りの音足につたはる
安永信一郎。明治25年(1892)1月20日〜平成3年(1991)5月4日。
歌人。熊本市生。明治43年『名眸』『極光』に拠り作歌を始め、大正6年尾上柴舟
の『水瓶』に入社、同人となる。13年齋藤劉らと熊本歌話会を興し熊本歌壇の基礎
を作る。15年若山牧水の『詩歌時代』に新進歌人として紹介され歌人としての声価
が高まる。21年『草雲雀』創刊。22年『草雲雀』を解消し『椎の木』発足。歌集
『一年』『大門』『連山』のほか、作歌生活50年を回顧した『熊本歌壇私記』があ
る。勳五等瑞宝章受賞、県近代文化功労者ほか。(熊本県大百科事典より)
掲載歌は、『水瓶』大正13年10月号から選出した。歌集『大門』に納められて
いたが、阿蘇登山の背景や日時が明瞭でないため初出を調査した。大正13年8月
11日、師の尾上柴舟が突然来熊した。翌12日6名で阿蘇に登った際の歌である。
先に、福岡に九州女学校書道講習会講師として来ていた柴舟を訪ねるため、8月6日
朝、信一郎は暴風雨のなか熊本を発っていた。
なりはひのいとまをつくり師に逢はむねがひいちづ
に旅だつわれは
やむとなきあしたの暴れや筑紫路に今日入りまさむ
師がへをおもふ
こうした信一郎のひたむきな思いに、柴舟は応えたのではないだろうか。
(参照、本誌平成14年9月号)
信一郎の阿蘇を歌った作品は、畏敬の念を抱く阿蘇山での実感を率直に表現した秀
歌である。先の柴舟を思う歌とともに信一郎の歌風や人柄を知ることが出来る。
【一相一首】のすすめ(「経営と情報通信」研究会員の皆さんへ)
一相とは、自己のすがた、心の様相を言います。現代社会において、みなさんは仕事や暮らしに多忙を
極めています。その時々に様々な思いを抱かれることでしょう。
そんな時、自由に一首に心を込め、その思いを大切に歌うようにしましょう。数多く作ることは必要あ
りません。自分の力に応じて一首一首を作ることが肝要です。こころのアロマセラピー、癒しにもつなが
り、きっと豊かな人生が送られることでしょう。短歌を上手になりたい方は、志を高く持って、日々向上
に努めるように続けましょう。
[「松本さん紹介ホームページ」の案内(事務局より)]
松本東亜氏については、ヤフージャパンで検索し、調べることができます。
[投稿者の作品]
今月号は一件です。会員の皆さんの参加を心待ちしています(事務局)。
[
辻淳二作: テーマは「正月休みの点描」]
亡き母の友と交わせる年賀状に添え書きなくて案ずる今年は
賀状手に添え書き読みつつ再会に心の動く人ある楽しみ
おめでとう!ベッドに眠る老義父の肩を揺すりて春を報せり
凍てつきし路で滑りし我を見て孫も真似たりおそるおそると
食べないと聞きしリンゴをスライスし孫のフォークの動きに見入る
雪降りし翌朝晴れて向かいたる初春の山に沢音響く
雪煙の富士を眺めし帰路の寺ここぞと引ける御籤は吉
出勤日のびたる髭を鏡に見てしばし手を止む白きの増えしに
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