父の旅立ちを見つめて       新田るり子

 

  
 

  救急の車内の動きあわただしなす術もなくただ父を見る

  
 

  水さえも口には出来ず点滴に命を繋ぎて父闘えり

 
          

  おとうさまと小さくかけし吾が声に父の目元に笑みのたゆとう

 
      

  長旅の疲れも見せず枕辺に付き添う孫に父は和みぬ

 
  

  ボストンへ戻るを告げし孫娘に父は語らずただ瞑目す

 
            

  自らの辛さはついに口にせず父は気遣いし吾が夫のこと

 
           

  ふるさとのメロディー流がるる病室に母の手にぎりて父旅立ちぬ

 
           

  温もりの残れる頬にほほ寄せて父に托せり母の守りを

 
           

  ランタンに安穏と書き流す娘(こ)の異国の空に祖父を弔う


 
 
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