春分の高尾山     辻 淳二
 


    
    浅き春の音を求めて沢筋を今日は選びぬケーブルには乗らず


 
  山道に入れば音の静まりて耳に届くは遠き沢音


    登り来れば木洩れる青空はるか下の沢音やさしき静けさのなかに


    沢をたどり源流近くに登りたり足下に春の水音を聴きつつ


    頂きの斜面にコナラの子木育つドングリが落ちて生まれし生命
 
  


    高尾山眼下に輝くは郊外街かなたにかすむは高層ビル群


 
  富士山は霞の中におぼろなりき刷毛で流せし雲にまぎれて


    山頂に憩える背中に陽射し柔らかメモを取る手は冷たくあれど


 
  山頂より見える林に淡き色陽射しが芽吹きを反しているらし


    山里に黄昏のメロディ流れ来れば下り来し広場に人まばらなり


    

 
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