我がオフィス近くの下町事情     辻 淳二
 


    
    我がいま通うは青江又八郎が決闘の場へと疾駆せる街


 
  主は出前でおかみは店で笑顔良し老舗のそば屋下町に光る


    昼どきの四時間で商うラーメン店我も常連うまくて安くて


    前触れなく閉じたるを見れば切なし行きつけの店も一つまた一つ


    しばし休むと下げ札のまま月が替わる主の病い長くなりしか
 
  


    駅前の宝石店街賑わえど翳りも映すか路上のゴミは


 
  雨の日は駅前のカフェで打合せ訪客も笑顔窓外を見やり


    何代か住みたる土地を離れしか小駐車場増えゆく見れば


 
  我がビルの階下は銭湯自転車を止めて母娘が暖簾の中へ


 
  狭い路地をさらに狭めて鉢植えの紅きアジサイ雨の中に映える


 
  近づけば鰹節の香り流れ来る路を選びぬ晴れ間の散歩に


 
  商店の悩みは駐輪夏姿の少女の漕ぎ行くは絵になれど


 
  

 
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