新田謙治郎さん     山本 勣 

    
    例えば、ここに石があるとせよ。
    大きく背をまげ眼鏡をかけた、
    品のいい知的な石があるとせよ。
    石はいつ語るだろう。

    ここに樹があるとせよ。
    静かに歌に耳を傾ける、
    大きな細身の樹があるとせよ。
    樹は何を語るだろう。

    ここに川があるとせよ。
    穏やかに全てを受け入れる、
    大きな川があるとせよ。
    川はどのように語るだろう。

    ここに海があるとせよ。
    新しい光溢れる海があるとせよ。
    海はだれのために語るだろう。

    ここに風があるとせよ。
    地の隅々に渡る風があるとせよ。
    風はどんな心で語るだろう。

    我々は知っている。

    ここに新田謙治郎さんがいたとせよ。
    我々の兄のような新田謙治郎さんは
    時に応じて語り、
    真実を語り、
    柔軟に語り、
    人々の利益のために語り、
    慈しみの心を持って語る。

    我々はそれ以上の何を望もう。 合掌
 

        
 
「創作」表紙ページへ