ゴン 桑門 正美
7年ほど前から我が家で犬を飼い始めた。それから私の生活が大きく変化した。子供のころよく居たような典型的な和犬の雑種である。名前を「ゴン」という。当時、時折不審な者を見掛けることがあり、“犬でもいれば安心だが”となにげなく言ったら、“子犬譲りますとお知らせがでているよ”ということでもらい受けに行ったのが始まりである。これまで、リス、インコ、ウズラ、鶏、十姉妹、亀、金魚、熱帯魚、メダカ、オタマジャクシ、鈴虫、クワガタ、カブトムシ、カイコ等の動物を飼ってはみたが、犬は全くの初体験だ。早速本で研究したところ、毎日散歩に連れ出さなくてはならないことを知った。誰がそのお相手をするかの相談をしたが、いつまでも健康で元気に働いてほしい最近太り気味のお父さんが適任者と(お父さん以外の)賛成多数で決まった。そのお父さんは、昼は家にいないし、夜は帰宅時間が不定だから、結局朝しか時間がない。ということで、運動不足を心配してくれる家族の心遣いに応えるべく、毎朝一番の早起きをして“お散歩”に出掛けるはめとなった。ところが、ちょっと寝坊でもすれば定刻になると外で騒ぎだす。これは勤労感謝の日であろうが正月であろうが関係ない。事の重大さに気付いたときはもう遅い。永い「ゴン」とのお散歩付き合いが始まった。
(…その後6年、いろんなことがありました。)
さて、少しわがままでお散歩大好きの“相棒”から得たものは大きい。
一つは、体の健康。父さん思いの家族の言葉どおり体が軽くなり風邪も引きにくくなった。引っ張られて走っているうちにジョギングの習慣ができた。一定以上負荷をかけ続けると同じ箇所が痛くなり、自分の体の弱点と限界も分かった。1年余りで東京・京都間を走る勘定になる。日々の積み重ねの大きさを知った。
二つは、心の健康。何かとストレスがたまることも多かったが、散歩で汗をかき、帰宅後汗を流すと清々しくなる。“相棒”のうれしそうな表情をみるだけでもかなり気持ちが和む。うっとうしい気分でいると相手にも伝わるようである。暗くなりがちなときほど明るく振る舞うことの大切さを教えられた。
三つは、頭の健康。人気の少ない早朝に新鮮な気持ちで歩き走っていると、抱えている問題や課題の方向性をつかんだり、盲点に気付いたり、解決のヒントが浮かんだりする。散歩中に得たアイデアはけっこう多い。頭を使う仕事の場合は、発想を生み熟ませる適当な場を職場外で設けることが重要であることを認識した。
四つは、生活の健康。毎朝早起きすることから、夜更かしも減り規則正しい生活になる。食事や酒も美味しく戴ける。生活のリズムというものを常に意識するようになった。
五つは,人生の健康。“相棒”に別れを告げ単身赴任したころは早朝運動をしていたはずだが、お散歩から解放された今(単身赴任1年目)は布団の中で惰眠をむさぼっている。いつの間にか易きに流され、行動せざるをえない状況に己を追い込まないとその気にならない自分というものに改めて気付いた。経験則によれば、この傾向は人という生き物の多くに共通の性質のようでもある。(人の集合体である組織も…?)適度な刺激のある環境にいかに自分を追い込むか、若しくは追い込まれるか、飛び込む勇気の有無と、活躍の場を得る数少ない運を積極的につかみとるかどうかによって、人は成長と退化に分岐するのだろう 。
六つは、…(今回はこれまで)