雪がくれたひと月のメリハリ          辻 淳二

 

 2001年も早や一月が過ぎた。月末に振り返って、「雪が自分のこの一ケ月にメリハリを付けてくれたな」と思い当たった。近年は1月に全く降らない年も多いのに、我が家のある多摩地区で雪掻きをする程の雪が3回も降り、そのせいか、感興を覚えたシーンは殆ど雪絡みだったからである。

 その一:引っ越しの週末だけ降らなかった!

 第一は、自分の(我が家のというべきか)ツキを浮き彫りにして感じさせてくれたこと。雪が降ったのは6日の夜更けから、20日の夕刻から、そして27日の早朝からと、いずれも「土曜日に降り始め、日曜日は銀世界」だった。週末に雪がなかったのは、何と13日だけだったのだ。たまたま我が家は、家の建て替えを今年上半期のテーマとしていて、その節目となる一時引越しを13日に設定していた。そして、寒い日ではあったが雪も雨も降らなかったこの日に落ち着いて移転を済ませることができた。他の週だったらどうなっただろうか・・。結果として、「初春からツイてるぞ!」ということになった。

 その二: 雪掻きで童心に戻った!

 第二に、久しぶりに「雪掻きを結構楽しんだ」こと。これには、移転をしたことで場面が多様化したことが効いている。先ず最初の時は本来の家近くで、初めは義務的に表へ出たのにやりだしたら子供の頃を思い出して乗ってしまい、家の前→ブロックの角→駐車場と次々と“転戦”して存分に堪能した。駐車場では、雪を掻いた後の車輪が通る所が大きく窪んでいて雪解けの水で池になってしまったのを夜に凍らないようにスコップで掻き出す作業まで入念にやった。その間の、いつもはあまり会話しない近所の人たちとのお喋りも結構新鮮だった。

 2度目の時は、土曜日の夕方に家人と取り壊し中の我が家を見に行き、現場に着いた所にみぞれ模様の雪が落ちてきたのだった。これが、「まあ、土地の形はいいんだ」とか「更地になると広く見える」とか話しながら敷地を眺める気分をいささか感傷的にした。雪はそのまま朝まで降って、翌日は快晴の陽射しに輝く雪景色となった。引越したマンションでは初体験ということで、午前中は駅前に用足しに行って駅前の商店の人が雪だるまを作っているのに足を止めたりしながら、様子見をしていた。午後になって、北側(入り口側)の道路はどうやら融けそうもないと分かって、“新参者の名刺代り”の勤労奉仕の気持ちで、雪掻き用のスコップを持って飛び出した。ここでは、道路の日陰に積もった雪を陽射しのある道に投げて融かす単純作業をひたすら繰り返した。その間、引っ越し時に挨拶をした同じマンションの数軒のお宅に人の出入りがあり、あらためて軽く声を掛け合う機会になった。幸いにもさほど寒くなかったので、今度も一時間余りを鼻歌まじりでこなしたが、「まあ、億劫がらずに肉体労働をやれてるのは健康の証拠」と気分は爽快だった。

 3度目は、土曜日中ずっと降り続いたので、この日は我が部屋の南側の庭の植え込みが雪の重みにひしゃげている感じから解放してあげる作業だけを行なった。家人に言われて始めてやったのだが、道路とは違って下から揺さぶって落としてあげるとバネが働くようにフワッと起き上がるのが面白かった。この時も、翌日の朝に雪掻きをした。日向の雪はすぐ融け始めたが、同じマンションに住む子供たちが前日に作ったらしい小さな雪だるまは入り口のフェンスの脇でまだ形を留めていた。

 その三: 大雪の後の百草園はいつもと違った!

 第三に、「雪の中の早咲きの梅」を撮ろうと思い付き、昼ごろに近くの梅の名所「百草園」にディジカメを持ってでかけ、予感通り楽しめたこと。ちょっとワクワクする気分で普段はめったに歩いて上ることがなくなった園の入り口への急坂を行ったのだが、両側の住宅から出て雪掻きをしている人まで楽しげに見えて面白かった。園内に入ると、園内に居る人は数組程度で、入ってすぐの広場のベンチに10センチあまりの雪が降ったまま乗っていて、積雪量がリアルに分かった。梅の咲き具合はと見ると、まだ一分咲きにも満たない様子で、白梅は雪に迫力で負け、逆に紅梅は雪を背景に淡い色が強められてポツンポツンながら目に映えるという感じだった。散策路を歩くと、どこも雪融けが始まっていて、ウオークシューズがすぐビショビショになった。それでも、陽光に映える雪景色の中をゆっくりと歩く気分は快適そのもので、裏山に登ると、遠く新宿の高層ビルが見え、眼下には園内の藁葺きの茶屋を覆う雪や池のシャーベット状の氷が見えた。裏山からの下り路では木々に残っていた雪が自重で落ちてサラサラと葉を鳴らす音が、茶屋の近くに立つと藁葺きの軒先を糸を引くように落ちる雪融けの雫の輝きが、スッと心に入り込んできた。大雪の翌日とあって行き交う人もない静けさの中で、この庭が隠し持っていた自然の営みがチラリと顔を見せたという感じだった。

 写真を撮ろうという動機は、空が晴れてきたので「雪と梅と青空」をテーマにしようと方針を定めた。そこで、園内を一巡しながらこの三つが一画面に収まるアングルを探し続けた。ただ、梅は殆どが開花していないので、梅をアップにすると雪か青空がレンズに入らないとか、三つが面白く収まるアングルは期待ほどはみつけられなかった。今月の「路上観察写真館」欄に登載したのは、辛うじて撮れたものである。それでも、テーマを定めて写真を撮るというのは、撮影会に参加したような緊張感/ワクワク感があって、楽しかった。

 このように、一ケ月の間に雪といろんな切り口で関わったことで、メリハリのあるひと月になった。歳を取ると雪のような自然の力には身を縮める方向になりがちだが、今回はフットワーク良く動けて、結果もいい方に出た。かくして、「これからもこういう攻めの気持ちで行けるよう、心身ともの健康維持を心がけたい」と思いを新たにしている昨今である。[01.1.30]

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