朝の連続テレビドラマまんてんにはまる      辻 淳二


 
10月初めの土曜日、朝食を済ませた頃に、テレビがNHKの連続ドラマまんてんをやっていた。屋久島が舞台で、幼い時に亡くなった父親との想い出を暖めて宇宙飛行士に憧れている日高満天がヒロインということは知っていた。しかも屋久島は、大学4年になった春休みに約一週間、まだ客船が着ける岸壁がなくてはしけでしか島に上陸できなかった時に山登りに出かけた処。そこで、海からは島全体が大きな山のように見える等、脳裏にある島の景色が映し出されたのに懐かしさを感じて、食い入るように観てしまった。

 それが、たった15分の放映時間の中で出てくる映像がこれまでに自分が現場で見たイメージと次々と重なって、ちょっとしたワクワク体験になった。具体例を挙げよう。

一つは、隣の島・種子島の宇宙センターからロケットが打ち上げられるのを、まだ幼児のまんてんが父親と一緒に見上げているシーン。種子島にも私は、上記の屋久島行きの途中で上陸したことがある上に、三十歳台の半ばにもう一回訪ねていて、かなりの親しみを感じている。後の時は、当時勤めていた会社でロケットの飛行を監視するソフトウエアの開発業務を受託していて、担当していた社員(図らずも、いま私が勤務する会社の社長S君)の長期出張のケアのために出かけたもので、その時に打ち上げのための建物や発射台やそこからの打ち上げのビデオ映像をリアルに見ている。ただ、この時には、ここが屋久島に近いということは思い出さなかったように思う。ところが、まんてんが屋久島から目の前でロケットが上がるのを見ているシーンを見た瞬間、ひらめくように「そうだ、屋久島と種子島は近いんだ! それは、すごい迫力で見えただろうな」とストンと腑に落ちた。

 もう一つは、まんてんの祖父・源三と同じ船に乗っている青年漁師・栄治(いずれ、まんてんと結ばれる筋立てらしい)が漁場で海に飛び込んで、網にとびうおを追い込むシーン。これは、上記の時に同行の友人O君が島に滞在中に漁船に乗せて貰って、「海に飛び込んで追い込むのが見ものだった」と目を輝かせて話してくれた記憶とズバッと重なった。またこれは、私が仕事上の縁を得て5〜6年前から親しくなっている長崎県西北部の漁業の町で見聞した体験にも繋がっている。この町では、時代の流れで漁業の後継者難が問題になっていて、私の仕事(IT関連)上の相方だった役場の中堅職員Kさんは漁船員のU/Iターン対策も担当していて、自ら漁船での生活を体験することまでやってリクルートに腐心していた(この話は、別稿に書いた=下記稿をクリック)。まんてんの家でも、漁業を継いで欲しかった彼女の兄が海が苦手の上、それに替わる自分の生き方を定めかねてもがいている様子で、長崎で聞いた漁業の家の悩みとイメージが重なった。
  最近の「いい出会い」

 かくして、この日のシーンが図らずも自分が生きてきた中での出会いと多岐に重なったことに引き込まれて、その後まんてんにはまってしまった。幸いに、衛星放送で土曜日に一週間分をまとめて放映しているので、朝早く出かけた日のも後で見ることができる。そういう点では、前作のさくらも終わり頃はよく見ていたのだが、まんてんの方が自分に重なる点でリアル感があって面白いと感じている。最近では、私に釣られたのか、次女も結構よく一緒になって観ている。

 初めの内は、まんてんと彼女に対して厳しく接している母、そして大阪の合気道場の女師範との、女性同士の、ビシッと音が聞こえそうなくらいの“気合のぶつかり”にシビレていた。そして最近は、まんてん、兄、嫁である二人の母、弟子の栄治をそれぞれに理解し、受容し、柔らかく接しようとしている、三橋達也演じる祖父の滋味に魅かれている。この番組にはまるキッカケが「自分の人生との重なり」だったということからすれば、登場人物という視点から見ればこの人が私に近いのだから、ここに落ち着くのは当然の帰結ということなのだろう。

 いずれにしても、朝の連続ドラマをこれほど自分に引き付けて受け止めたのは初めて。幸いに自分なりの見方も定まったので、これからも、この一家を巡るドラマを自分そして我が家に照らしながら観るのを楽しみたいと思っている。[2002.11.24


 
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