[シリーズ投稿・枚方通信(その)]

憂鬱な関西           丸中 正量 

 
 はじめに  

「枚方」からメッセージを発信する「シリーズ投稿」の第3号をお届けします。

前回は、東海道57次の56次に当たる江戸時代の「枚方宿」について、旅人が上りを陸路、下りは安い料金で早い船便を利用した結果、陸路は上下の比率が10:1の一方的に上りに偏る「片宿」の宿命を持っていたことを報告しました。今回は、その枚方での暮らしを通して見た「関西の経済の現状」について報告します。

時代が変わり、今は京都―大阪間を結ぶ「京阪電鉄」がその交通の一部を代替する役割を有するわけですが、その電鉄の年間交通量が、ピーク時には年間3億人だったものが今やその三分の一になっているといいます。この減少はいかにも極端で俄かに信じ難いものがあり、何とかこの数字の裏づけを取りたいと思っていますが、果たしていません。ただ、電車の車内広告は一般企業からの減少が目立ち、その分を広告料が取れない沿線案内と子会社の広告が埋めている印象が否めません。とうとう、株主への中間配当を2期連続でゼロにしてしまいました。京阪沿線の憂鬱なテーマですが、これは、関西経済の地盤沈下と無関係ではあり得ません。  

関西の地盤沈下  

12月27日総務省発表の11月の失業率は、全国平均が5.3%に対し、府県別に最も高かったのが 沖縄県 9.3%で、これに続くのが 大阪府 8.6%、 兵庫県 7.4%、 京都府 奈良県 7.0%などで、関西の失業率の高さが目立っています。関西(近畿2府4県)平均は7.5%と全国平均を2%強も上回り、全国10ブロックで最悪。いきおい、大阪城公園をはじめとする大阪市内の公園や河川敷には野宿者の青テントが目立つという訳です。  

関西の経済力を総生産指標で見ても、関西の域内人口と域内総生産の全国シェアはともに17.1%で、域内総生産シェアが人口シェアを上回っている関東(域内総生産36.7%、人口32.4%)、中部(域内総生産14.0%、人口13.4%)に比べ、地盤沈下は歴然としています。  

関西はもともと、造船、製鉄などの重厚長大産業が臨海部に立地し、戦後はインスタントラーメンやプレハブ住宅など、新商品、新産業を次々に生み出し、一時はアルサロが大阪発のシンボル産業と揶揄されたほどです。

ところが、自動車や情報技術(IT)などの成長産業の育成に失敗。また、家電や繊維産業などの生産拠点とそれらを支える中小企業が次々と中国へ移転し、その前から関西系大企業が挙げて東京へシフトするという、いわば「二重の空洞化」に直面しています。  

起死回生のための貿易立国と観光立国  

関西経済の地盤沈下の危機意識から、起死回生のため産業構造の変換政策が図られていますが、大阪湾の埋め立て地区を利用して人を呼び込もうとする、いわば貿易立国と観光立国のための政策が目立っています。まさに集客産業と呼ぶべきものでしょうが、これまで流出した人材と企業の数を吸収するに足る力強さに欠けています。

前者(貿易立国)の代表に「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」という箱物がありますが、このまま推移すると閑古鳥が鳴いてしまいそうな雰囲気です。
 一方の後者(観光立国)では、の代表的な施設である「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」と「大阪舞洲(マイシマ)スポーツアイランド」を取り上げてみたいと思います。  

USJは、ハリウッド映画を核とした総合エンターテインメント会社「ユニバーサル・スタジオ社」の米国外進出第1号で、2000年3月にベイエリアにオープンしたテーマパーク。国内はもちろん東南アジアからの集客力もあり、2001年度に大阪市を訪れた観光客が1億人を突破したと言われています。観光客は対前年3.4%の伸び、宿泊客にいたっては33.5%の大幅増加で、1993年の調査開始以来初めての、まさにUSJ効果と見られます。この上は、“アジアを中心に積極的にプロモーション活動を展開するとともに、さらにリピーター増加を図りたい”と気色ばんでいた矢先、2000年7月から8月にかけて、直営の食堂での賞味期限切れの食材使用に始まり、上下水道の混用やアトラクション用の火薬(量)の不正使用に至る不祥事が発覚、7〜9月の入場者数は前年同時期比で約三分の二に減少し、完全に黄信号が灯ってしまいました。  

「舞洲スポーツアイランド」は、リクリエーション施設や各種室内競技場が整ったエリアで、特に国際競技を狙って設立されました。2008年のオリンピック招致をめざしてでしたが、歴史的、地理的、政治的のすべての観点で中国に完敗しました。その躓きは大きく、果たして取り返せるでしょうか。大阪湾に浮かぶゴミ山を中心とした人工島の集客力は、もともと砂上ならぬ護美上の楼閣ではなかったでしょうか。  

オリンピック招致の尖兵を務めた我がボーイスカウト  

 200283日〜7日、その年に創立80周年を迎え、私自身枚方地区の役員として関わっている日本ボーイスカウト連盟は、第13回日本ジャンボリー(13NJ)をこの舞洲スポーツアイランドで開催しました。アジア23カ国を含む世界37カ国からの招待スカウト927名を含む、総計20,589名の参加がありました。通常山間丘陵地に張るテントが、水位零に近い所、しかも日中は焼け付いた石ころや砂地の上に。そこに2万人がひしめき合うテント場は異様で、まるで難民のテントのよう。それでも、ここをベースにして、大阪城、海遊館、天神橋筋・千日前道具屋筋、日本橋電気街などの都市型集客施設を探訪するプログラムをこなしたキャンピングは、世界初?のユニークなもので、かつ、大きな成功を収めました。

 

 大阪市としては2008年のオリンピックのリハーサルであったはずで、キャンプ会場難のボーイスカウトにとっては渡りに舟と、当初両者の利益は一致したのでしたが、結局、スカウトのひとり勝ちに終わりました。  

おわりに  

 関西経済の不振の背景には産業構造転換や金融政策の失敗がありますが、これは関西ばかりでなく、今の日本経済にも当てはまります。迷走気味の現政権の経済政策は、逆に今こそ関西の失敗に学ぶべきでしょう。また、関西が苦境を脱すれば、きっと日本経済再生の先導役になるはずです。  

 田中耕一さんのノーベル化学賞受賞。もろもろの停滞や行き詰まりで関西や日本が自信や希望を失いかけているその時に、しかも、京都に本社のある企業人の潜在能力に光が当たったことが何より嬉しい。  

注:ボーイスカウト(BS)の組織
 ・   世界のBS:100年前に創立、2900万人、154カ国加盟
      日本のBS:80年前に設立、2002年7月現在180,066人(前年比、-33,571人)
   ジャンボリー(Jamb-O-Ree): 大きな集会の意、世界ジャンボリー・日本ジャンボリーは4年毎開催。上記の13NJは、スカウト人口の約10%が参加

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