中央線の踏切問題 黒木 靖生
JR東日本の株が、最近ぐっと下がりました。株と言っても「株価」ではなく、「評価」のほうです。きっかけは、9月27日から28日にかけて行われた中央線の高架化のための線路の切替工事が予定よりも8時間も超過して、休日の行楽を楽しみにしていた何万という人に迷惑をかけたことですが、最近は、小金井街道踏切のトラブルが大きく報道されています。
この小金井街道踏切は、中央線・武蔵小金井駅の東に隣接していて、以前から朝のラッシュ時には1時間のうちに4回くらいしか踏切が開かず(しかも開いている時間は15秒程度)、「開かずの踏切」との悪名が高かった踏切です。この踏切を渡る距離が、以前は17mだったのが、今度の線路切替で36mと倍以上長くなったため15秒間では走らないと渡り切れず、お年寄りや体の不自由な人は、最初から渡るのをあきらめるか、踏切の中に取り残されるのを覚悟で渡らざるを得ないというわけです。もちろん、踏切に沿って歩道橋が設置されているのですが、足の不自由な人とか自転車の人は、歩道橋は利用できません。
それでは、何故この踏切はこのように開いている時間が少ないのかと言いますと、武蔵小金井駅に隣接しているため、電車が駅に停車しているときも踏切は閉まっているからです。また、駅に停車する時も駅から発車する時も電車は低速度ですから、駅と駅の中間にある踏切に比べれば、駅のそばにある踏切は3倍くらい閉まっている時間が長くなると思います。この武蔵小金井駅の西側にも踏切がありますが、当然同じように「開かずの踏切」となっています。
こういう問題を解消させるために中央線の高架化を進めているわけで、その過程でこのような問題が起きることは不可避とも言えます。とは言っても今回のトラブルは、JR東日本の「読みは甘かった」と言わざるを得ません。
今回のケースでは、大きくは二つの問題が予見できたでしょう。その一つは健常者に発する問題です。踏切を渡る距離が17mでも、健常者が渡りきるためには急ぎ足で10秒くらいはかかるでしょう。それが倍以上の36mになったわけですから、渡りきるためには20秒くらいかかります。渡り始めて4〜5秒後に踏切の警報が鳴り出しても、急いで渡ってしまおうと考えるのが普通の人です。渡り切る前に踏切の遮断機が下りるなんてことが日常茶飯事になるのは目に見えていた、と言っても過言ではないと思います。
もう一つは、高齢者や身体の不自由な人に発する問題です。このような人が36mの距離を歩くためには40秒以上かかるでしょう。このような人は朝のラッシュ時には渡らないと思いますので、踏切がずっと閉まっているような事態には遭遇しないでしょうが、昼間に渡り始めて間もなく踏切の警報が鳴り始めたら、踏切の中に取り残されるのは必定です。このような事態に備えて、踏切の中央に小テントの避難所を設け、踏切の中に取り残された人は、警備員がその中に一時的に保護するようにしていますが、高齢者や体の不自由な人は、先ず渡り始めることに勇気を鼓舞しなければならないと思います。
この踏切のある地域は、民主党の菅さんの選挙区ですが、小泉首相がAPECの会場から国土交通省に改善策の検討を指示したりして、一躍総選挙の人気取り合戦の材料になったようです。この指示が効いたのか、JR東日本では、18日から、高齢者や体の不自由な人には、武蔵小金井駅に入場して駅の中のエレベータと跨線橋を使って反対側に出られるよう、入場券を無料でお渡しするようにしたそうです。
このような解決策を聞くと、最初から何故そのようにしなかったのかと不思議に思うのですが、「想像力(このような踏切にした時にどのような事態になるだろうかということに思いを馳せる)の欠如」あるいは「お客様は駅の構内に入った人という固定観念が支配していた」としか考えられません。
今回の踏切の問題は、本稿の最初に書いた「8時間オーバー」のバッシングとして必要以上に騒がれているような気もしますが、民営化の模範生のような言い方をされて来ていますJR東日本も、まだまだ「道半ば」なのでしょうか。 (以上)
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