4歳半児との「じじ&まご」付き合い
      辻 淳二  


 この10月から、長女の娘である孫っ子を保育園に迎えに行くのを、月に数回の頻度で手伝っている。この児の父親、つまり娘婿が地方拠点勤務になり、これまで二人でシェアしていた迎えの負荷が長女一人に掛かることになった負担を一部肩代わりするためである。
 その日は、夕方からの約束を入れずに早々に仕事を切り上げ、途中駅の地下街などで夕食のおかずを買い込んで、6時前に着くように保育園に向う。

 私にとっては、これまで3ケ月に2回程度、休日に娘夫婦から預かって遊びに連れていくことで持っていた「孫っ子との密着機会」の形が変わっただけで、未知の体験ということではない。ただ、こちらは子供の家近くだったり夜だったりなど接するシーンが異なり、別の切り口から「幼児の成長過程」が見えるので、興味を持って付き合っている。そこで本稿では、その一端を書くことにしたい。

 先ず、彼女の「友達との付き合い方」に自立性が出てきたこと。保育園に着いて児たちが待っている部屋の入り口に顔を出すと、彼女は走ってきて持って帰る荷物を私に教え、さっさと玄関に出て、靴を履いて前庭に出る。そのまま帰るかと思いきや、そこで「Kちゃんがまだだから、待つ」と言って、同じマンションに住む仲良しの女の子がお母さんと赤ちゃんの妹と一緒に出てくるのを、暗いのも寒いのも気にせずに待ち続ける。皆が揃うと、300メートルくらいの帰路を二人でかけっこしながら、話をしながら、私たちを先導するように帰っていく。マンションに着いても、玄関にあるソファーの所に座って、その日に保育園で作ったものを出したり絵本を開いたりして、すぐに別れようとしない。毎回ほぼ同じパターンで、Kちゃんと居るのが楽しくて仕方がないらしい。

 次に、「意思疎通」がより深いレベルでできそうになってきたこと。以前にも数回、保育園への迎えを引き受けたことがあったが、その時は娘に、保育園から持ち帰る荷物は何と何でどこにあるとか、家で食事の用意に使うサランラップの類いや海苔などのしまってある場所とかのことごとを前日に電話で確認して出掛けていた。ところが今回は、孫っ子に聞けば彼女が殆どのことは教えてくれるので、そういう手間を全くかけないで済ませている。
 
ただ、これらはごく初級レベル。それが今、2人の間の会話が中級のレベルに進もうとしているのだ。具体例で言うと、彼女は好みの食べ物の幅が狭く、私は買っていく食材でそこを広げようとトライしているのだが、その歩留まりがまだ芳しくない。途上でおかずを買い込む時に、3品買うとすれば2品は好きと分かっているものを選び、あと1品は当るか外れるか未知の品を選ぶようにしているのだが、それを嫌いな野菜系の中から・・という選び方をするので、あまり当らないのである。そこで、直近の外れだった日に、「Mちゃんお野菜食べないから、食べられそうなものを買ってきたんだけどまたダメか。おじいちゃん困ってるんだよ」と本人に語りかけてみた。すると思いのほか、いつもは「野菜は食べない!」と言っていたのが、「緑色のおやさいは、大体食べるよ。ニンジンもダイコンも食べられるよ」と神妙な答えが返ってきた。一瞬目からウロコが落ちた感じになり、「これからは、気持ちを伝える会話をもっとしよう」と教えられたのだった。

 もう一つ、すごく面白かったのは「好奇心に基づく行動」に付き合ったこと。ママの帰宅が遅いと分かっていた日の夕食が終わった後の時間帯に、彼女がフト「コピーをとりに行こう」と言い出したのだ。両親との会話か、保育園での友達との会話か、何かのキッカケで、コピーという面白いものがあり、絵本の絵のページをコピーすれば塗り絵の原画ができる等、自分が楽しむのにも使えることに気が付いていたらしい。意表を突かれた感じだったが、駅前のコンビニまで行って30〜40分で帰れることなので、「よし行こう! 何をコピーするか絵を選んで、それを持って行かないとね」と応じた。すると彼女は、およその心積りはしていたらしく、あちこちから絵や本を集めてきて、あれもこれもと抱えて、暗くなった道を駅前まで歩いて行った。そして、二人でコンビニの機械の前に立ち、どの2枚を一緒にとるかを決めたり、機械に慣れなくて失敗したりしながら、初めてのコピー体験を楽しんだのだった。これは、彼女にとってワクワク体験だったらしく、次に迎えに行った時は会ってすぐに「後で、コピーとりにいこうね」と言っていた。そして、この時のコピーの対象には、自分用のものだけでなく、Kちゃんにあげるためのものも含めていた。かくしてこれは、幼児が知的に一つ成長していく姿を目の前で見た、私にとっても貴重な臨場体験となったのだった。[03.11.30


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