定点観測                       

   

             辻 淳二

 

我がオフィスは、JR線御徒町駅南口を出て、昭和通りを越えてやや秋葉原に寄った位置にある。そこで、日々の往来で「ここを世の中を見る鏡にしよう」とウオッチングしている店をたどってみよう。御徒町といえば、先ず連想されるのは「宝石店街」だが、ここは今、この不況下にじっと身を潜め、フト輝きを見せるのはクリスマス・セールの一時だけという感じで、観測の対象にはしていない。

先ず、改札口を出た真ん前の「100円ショップ」、ガード下なのに明るい照明なのがいい。朝10時から夜9時半ころまでやっているので、前もって何があるか頭に入れておくと結構ちょっとした用が足せる。同じ思いなのか、お客も入っているが、「駅前の一等地で、この位の売り上げで成り立つのか」と気になっている。

昭和通りに出ると、向かい側に安売りデパートで知られる「多慶屋」の紫色のビルが林立している。ここには朝9時過ぎからお客が入っていて、なかなか活気がある。品揃えは狭いが、何でも(例えば、車椅子やウオーターベッドも)ある感じで、店員もキビキビしている。ちょっと値がさなものを(靴とか、運動着とか)週日に買う必要が生じた時などに買いに行くが、およその用は満たせる。気に入ったものがない時に買わないようにすれば、役に立つお店だ。ただ、流通業界の売り上げランク15位くらいという位置、厳しい競争の中でどう生き抜いていくのか、時に客として出入りしながら期待を持って見続けて行こうと思っている。

次は、我が社から歩いて一分もかからない近くにある弁当屋だ。間口二間くらいの両側に幟が立っていて変哲もないが、正午過ぎに通るといつも5人から10人位並んでいるのがこの店だ。元は仕出し屋らしく、おかずを選べる、その場で調理するので出来立てが食べられる、季節のまったけ等を使った特売品を出す等でお客を掴んでいる。私も、よく買ってきて貰って食べるが、普通の食堂に入って定食などを頼むよりは内容も味も当たり外れがなく、値段も600円未満と手頃である。下町の人情味が感じられる店で、今の不況程度ではビクともしないように見える。

駅の反対側に出ると、親しい訪問先に軽い手土産を持っていく時に買う「おいも屋」がある。ここの一推しは、季節ごとに精選したさつまいもにスキッとした甘さの蜜をからめた「大学芋」だ。耐熱性の袋を使っていて、電子レンジでそのまま温められるのもいい。店の人に聞くと「不況の影響は出ている」と言うが、私のようなファンが程々にある感じで、ゆったりやれているようだ。他に、上野広小路近くにドラ焼きの「うさぎや」、豆大福の「岡埜栄泉」があるが、どちらも一番の名物が「賞味期限は今日」とこだわり派なのが私には却って買いにくい感じになっている。

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