「我が家の住み心地の改善」のその後      辻 淳二


 はじめに

 本ホームページの023月号に、017月に建て直した我が家が「夏も冬も快適に暮らせる住宅。冷暖房も省エネ」という謳い文句通りの住み心地にまだ到達できてなくて、住宅メーカー(以下、メーカーと略す)の協力を得て改善努力中であることを書いた。まさか、この話の後日談を待っている人も居ないと思うが、あの時点では見えていなかったことが効いて状況の改善が進んでいるので、また報告することにした。

 最初に、当時(022月末)と今(04年1月末)との比較で見た改善度を数値化して示しておこう。私は、我が家の住み心地を「快適さ」と「省エネ効果」の2つで捉えている。そしてこれらが、当時は「快適さ」「省エネ効果」ともに50~55点くらい(つまり、合格ラインに達していない)だったのが、今は「快適さ」70点、「省エネ効果」80点くらいまで向上したと認識している。本稿では、かかる改善に至る経緯や「何が突破口になったか」について、簡潔に記すことにする。

 前稿の時点の状況

 我が家は、窓以外の壁部を分厚いウレタン系の(断熱性の高い)ボードで囲んでしまい、さらにその外側に狭い通気層を設けて、夏は外壁の熱を室内に入れないで逃がし、冬は冷たい外気と室内を遮断するというタイプ(「外断熱・三重通気工法」と呼称)の住宅である。「夏でも冬でも、室温が適温の前後に容易にキープできて、快適に暮らせる」が謳い文句で、私がこれに飛びつく感じで、この工法で先駆していたベンチャー型のメーカーを選んだのだった。それが、肝心の夏と冬に、具体的には、夏には主として2階で、冬には主として1階のリビングルームで、期待通りの住み心地にならないという問題に直面してしまったのだった。この予想外の状況に、家人をはじめとするわが家族はこの工法を選んだ私にブーイングを発し、「建て替えたら、一家の主としての責任を全うして左団扇」の積りで居た私が、問題解決の矢面に立つことになった。これが、前稿の時点の話だった。  

 「状況改善」への歩み

 その後、02年の夏は、前稿に書いた温度/湿度レコーダーをまたメーカーから借り受けて、夏期の我が家の各所の温度/湿度データを収集した。その結果、夏場は、温度を冷房で下げると同時に湿度も下げないと快適にならないのに、我が家は、一旦「快適な温度/湿度圏」を外してしまうと圏内に引き戻すことが意外に難しいことがデータではっきりと示された。その主因となっていたのは2階の東側の私の居室で、東側のガラス窓から入る輻射熱が強く、盛夏時には朝の起床時に既に30を超える温度になり、(一旦室温が上がってしまうと断熱性が高いのが裏目に出る!)冷房を入れ続けないと2階を快適に保つことが難しくなっていた。この東側のガラス窓には、2階ということもあって、2重カーテンだけで、雨戸のような輻射熱対策をしていなかったのだ。ただ、この問題点ははっきりしたので、「来夏には輻射熱をカットするスクリーンを窓外に設置する」ことでメーカーと合意した。

 次いで02年の冬は、最大の懸案だった「1階のリビングルームの住み心地」の問題を解決しようと、メーカー側のベテラン幹部にも参加を求めての臨戦態勢で臨んだ。この問題には、リビング空間がそこだけで閉じているのではなく、2階への階段や踊り場を経て東側の私の部屋、さらにそこから小屋裏までが一繋がりの、縦長でかつ曲がりくねった空間であることが関係している。熱容量が大きいので、暖めるのに空調機のパワーがいる。これは省エネに逆行し、さらに、空調機の風や“2階の気温の方が低い時に起こる1階からの空気流”が快適さの阻害要因になった(これが、予想外だった!)。これらが複雑に絡んで、「快適さと省エネの両立」がうまく行っていなかったのである。そこで、問題を絞り込むために、リビングから2階に通じる階段をカーテンで遮蔽したり、リビングの上部に溜まる暖気を動かす送風機をメーカーから借りて取り付けたりなどの準備をして、あらためて温度/湿度レコーダーによるデータ収集を行い、データが集まると当方とメーカーとで作戦会議を持って分析と対策検討を行うこととした。双方にかなりの負担が掛かるやり方だったが、結果的にこれは有効に働いた。この交流の中で、メーカー幹部の助言がヒントになったり、当方が気付いたりで、解決に向う流れを掴むことができたのだから。

 先ず、暮れに近い快晴の休日の昼頃、リビングの南側窓辺に置いていたレコーダーが、(何と!)輻射熱で40度に近い温度を記録しているのに、私が気付いた。そこで、南窓のカーテンを開け放って陽射しを目一杯入れてやると、リビングとその周辺空間で夕方まで暖房なしで暖かさが保たれた。これと、その前にメーカーから「冬の間に何回か、暖房を24時間入れっ放しにするといい」と云われていたこととがシンクロした。「天気のいい日に陽射しを入れてやると、実質的に暖房の入れっ放しと同じになる!」と。特に2階は、外から覗かれる心配もないので、開け放ちやすい。かくして、2階は「東側の私の部屋の東窓と南窓のカーテンを、晴れの予報の日の出勤時に開け放って出掛け」(夏場に大きな欠陥だった所が、ここではプラスに機能した!)、1階は「日中室内にいる人が、陽射しを見て開け放す」という運用ルールに行き着いた。

 次に、
24時間暖房の話から夜間電力の活用へと話題が及んで東京電力(東電)に問い合わせたところ、「電化上手」という契約形態があり(当時の我が家の契約形態は、一般電力と深夜電力の併用)、夜間利用が多い家庭ではそれが有利と分かった。東電からは時間帯別に消費電力を計測できるレコーダーを一週間取り付けるサービスの紹介を受け、早速依頼した。その結果、我が家(もともと夜型の暮らし方の家庭)は、その時点の電力消費のパターンでも「電化上手契約の方が得」と分かった。この契約は、一日の時間帯を朝晩、昼、夜の3つに分け、時間帯により1kwh当たりの料金が違う、しかも昼帯と夜帯(23:007:00)では5倍近い差がある(夜帯が安い)という、私たちはこういう契約タイプがあることさえ知らなかったもの。思わぬ情報を得て、我が家は即この契約に切り替えた。これにより、「朝7:00前の安い電力の時間帯にタイマーでリビング及び2階の私の部屋の暖房を入れ、朝起きた時の室内空間の温度を適温圏(リビングにある温度計で20度以上)に近づけておく」というもう一つの運用ルール”に行き着いた。

 「改善策に沿った運用」の結果

実際に、このように運用してみて、朝7時頃に家族が活動を開始する時にほぼ適温圏にあり(20度前後、厳寒の日で17度前後)、晴れの日には日中は暖房が殆どいらず、雨の日でも適温圏を下回った時に一時間程度の暖房を断続的に入れることで、「以前より楽に快適圏内にキープできる」との見当がついた。また、省エネ面でも、3月に東電から届けられた電力料金の請求が、(うまい具合に!)月の途中で契約の切替えになったための2本立てになっていて、一日当たりの料金で見て、契約切り替え後の方が前の契約時に比べて3割近く安くなっていたので、「確かな省エネ効果が得られる」メドも立った。ただ、この時には、もう冬が過ぎてしまっていて、きちんと検証するまでには至らなかった。 

その後の約一年は、上記のように捉えた「我が家の特性にadjustさせた運用」を行い、その成果を確認する期間だった。結果は、およそ次のようだった。

1 「快適さ」に関して

(1)   夏は

・ 2階の東側/南側の窓外にメーカーにスクリーンを取り付けて貰った
これで、2階の温度が(夏期を通して)2〜3度下がった。

・ 早朝7時前に12時間、1階のリビングと2階の東室で冷房運転
室内で快適圏(温度:27.5以下、湿度:65%以下)を外れる時間帯が大幅に減少。

・ 湿度が50%以下のさわやかな日は、南北の窓を開けていい風を通すことも併用
→「冷房を入れて閉めっきり」の閉塞感から開放され、快適感に貢献。

(2) 冬は 

 ・ 晴れの日は、陽射しの入る窓のカーテンを開放(主に2階東室、一部リビングでも)
     →これで、2階の温度が(冬期を通して)2〜3度上がった。

 ・ 早朝7時前に12時間、1階のリビングと2階の東室で暖房運転
 室内で快適圏(温度:20度以上)を外れる日/時間帯が大幅に減少。

       リビングにカーペット(2畳用)を敷いて、寒い時間帯での足温と補助暖房に役立て
→床暖房を入れていないので、そこを補う補助手段として有効だった。

       暖房による乾燥を加湿器(気化式=省エネ型)の連続運転で緩和。
→断熱性の高い住宅&暖房で乾燥し過ぎるので、地味ながら快適さの維持に貢献。

2 「省エネ」に関して

(1) 各月ベースでは(東電の電気料金請求額で見た対前年度比較で)

       空調機を(あまり)使わない月で平均3,000円/月の節減(前の契約時の「深夜電力料金分」に相当)

・ 空調機を(ふんだんに)使う月で4,0005,000円/月の節減
  (正月を挟んだ同期間1ケ月分の請求書で、昨年700円/日今年573円/日)

(2) 年ベースでは、
・ 上記により、前年に比べ2割強の節減を達成
  年間の金額にして4万円あまりに相当。

 以上により、私は冒頭に記したような評価をし、「先ずは合格圏に入って良かった」と判断しているのである。

 おわりに(ここまでの総括)

 さて、あらためて、この問題の「ここに至るまでのアヤ」を大局的に振り返ると、次のようになる。

1 一番の基本の「住宅の躯体の断熱性」について、メーカーの謳い文句を楽観的に信じてしまったのはまずかった。

       外気と接する部分でガラス窓等の開口部が、断熱性能上の弱点になっていた(ペアガラスではあったが)。

結果的に、一繋がりの縦長の立体空間にしろ、輻射熱のカットにしろ、空調機の大きさの選択にしろ、楽観的に判断して、解決に手間取った。勿論、これまでの住宅に比べれば、格段に良くなっているのだが。施主側では計画の時点では新しい住宅の特性が生活の目線で分かっていないのだから、「メーカーの適切で頼れるコンサルティング/助言が欲しかった!」とつくづく思う。

2 「住み心地」はハード、つまり「住宅躯体の性能」だけでは獲得できないことがよく分かった。

       住宅ができてから、躯体と暮らし方を摺り合わせ、「快適さ」と「省エネ」の折合いをつける努力が大切な事がズシリと分かった。

→私も随分と学習させられたが、結果として、この家のことが良く分かり、今後の改善に活かせると感じている。

3 「問題解決ヘのカギ」は、行き着いてみれば、以下のように簡明なところ(「“家庭の科学”程度の知恵」)にあった。

(1) 室内空間を快適な温度/湿度圏に保つには、

・ 夏場は、温度/湿度を下げるために相当量のエネルギーが

  ・ 冬場は、温度/湿度を上げるために相当量のエネルギーが

 必要。

(2) 「省エネ」とは、この“相当量のエネルギー”への対応を

       躯体の性能を良くして断熱/保熱力を高め、必要なエネルギーを減らす

       必要なエネルギーを、省エネ(お金がかからない)の方法で賄う

“合わせ技”で実現するもの。

(3) 上記への気付きから、我が家の場合は、次の策に行き着いた。

・ 夏場は、

1. ガラスからの輻射熱を遮蔽して、冷やすのに必要なエネルギーを減らす
2.
 冷やすエネルギーの一部を深夜・早朝の安い料金の電力で賄う

・ 冬場は、

1. 暖めるのに必要なエネルギーを主に深夜・早朝の安い料金の電力で賄う
2.
 ガラスからの輻射熱を取り込み、暖めるのに必要なエネルギーを賄う
3.
 クーラーの使用で乾燥が進むのを気化型(省エネ型)の加湿器で保湿する

 ことにより省エネ化。

(4) その結果、「我が家を適度に使いこなせる(コントロールできる)」ようになった。

・ 妥当な電力費用で、「室内空間全体の温度/湿度を“快適圏”近辺にキープ」し、
   (外出から夜帰った時等に)外れていても短時間で“快適圏”に戻せる状態のこと。
 

この現状を、私は「現実的な着地点」とプラスに捉えているが、まだ「通過点」だとも思っている。現時点を「快適さ」70点、「省エネ効果」80点と評価しているのは、まだ80点、90点と上げていく余地があると見ていることに他ならず、この問題にはこれからも興味を持って関わっていく積りなのである。[2004.2.1]


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