[シリーズ投稿・枚方通信(その
16
)]  

 曇りときどき雨の介護生活    丸中 正量


 はじめに
 

 このシリーズ投稿<枚方通信(その13)>で89歳の母の介護を報告してから、8ヶ月が経過した。昨年9月末、道端で転んで腰椎を圧迫骨折し、3週間の入院生活をしたのがきっかけで始まった介護生活。当時、友人のアドバイスは二つ。一つは、「二度とこけないようご注意を、今度転んだら完全に寝たきりになるよ」というもの。二つ目は、「いつまで続くかわからない介護という長期持久戦には、介護側が共倒れしてしまわない工夫が要るよ」ということだった。この二つの観点から振り返ってみたい。

居宅介護のための環境整備 

3週間の入院中に同病院のケアマネージャー(ケアマネと略称)に相談できたことが幸いだった。退院までに介護保険の要諦と自宅介護のポイントとこれを支援する社会的諸資源を頭に入れることが出来た。入院中に要介護度認定の申請手続きとドクターやケアマネとの面談まで済ませた。<要介護12>程度かなと判断し、その前提で退院後の自宅介護の環境を整えた。

区分

介護保険からの給付

準備した主なもの

保留したもの

住宅改修

要介護度・一律 上限20万円

手すり(居室、トイレ、風呂、廊下、玄関口、表階段)

車椅子移動用のスロープやバリア・フリーシステム

福祉用具

要介護度・一律 上限10万円

電動ベッド、ベッドテー
(レンタル利用)

車椅子(又は歩行器)

介護保険給付外

ポータブルトイレ(亡父が25年前に使用したもの)、天井吊のテレビ、ナースコール

 

自宅は介護生活には無頓着の設計で13年前に建替えたものである。要介護度(ランク)如何に拘わらず一定額が給付されるのは有難い。車椅子は母の屋外や病院や施設内の移動にはが必須だが、家では手引歩行(歩行介助)か手すりを持って何とか伝い歩きができる。廊下が狭い家であり、リハビリ名目のためにも車椅子を保留にし、手すり工事を優先して実施した。

要介護認定

判定結果は申請時の素人予想を上回る<要介護3>だった。母の負けん気の性格からくる受け答え、自主性(意欲)がもう少し評価されるだろうと思ったのだが、母の知力・体力・脚力の衰えが家族の認識以上に進んでいたことを意味し、それが元のトラブルが顕著になってきてその判定結果が納得できた。半年後の更新の際の判定も<要介護3>となった。

区分

決定通知

判定結果

認定の有効期間

初回

H16.11.8

要介護3

H16.10.8H17.4.30

更新

H17.4.16

要介護3

H17.5.1H19.4.30

<要介護3>のレベル・内容は下表の通りである。

要介護区分

身体状態と介護基準

介護サービス計画
(厚生省試案・
通所型の場合)

居宅サービスの
月額支給限度額
(自己負担は1割、
限度額超過分は
10
割負担)

要支援
(社会的支援を要する)

要介護状態になる恐れがあり機能訓練が必要

通所介護 週2回

61,500

要介護1
(部分的介護を要する)

排泄、入浴、清潔・整容、衣服の着脱等に一部介助が必要

訪問介護 週3回、    
訪問看護 週1回

165,800

要介護2
(軽度の介護を要する)

排泄、入浴、清潔・整容等に、一部又は全介助が必要

訪問介護 週3回
訪問看護 週1回
通所介護 週3回
短期入所 6か月に2週
福祉用具貸与 車イス

194,800

要介護3
(中等度の介護を要する)

排泄、入浴についての全介助のほか、清潔・整容、衣服の着脱に全介助が必要

訪問介護 週2回
+巡回週7回
訪問看護 週1回
通所介護 週3回
短期入所 6か月に3週
福祉用具貸与 車イス 
特殊寝台、マットレス

267,500

要介護4
(重度の介護を要する)

入浴、排泄、衣服の着脱、清潔・整容等の全般について全面的な介助が必要

訪問介護 週6回
+巡回週7回
訪問看護 週2回
通所介護 週1回
短期入所 6か月に3週
福祉用具貸与 車イス 
特殊寝台、マットレス等

306,000

要介護5
 (最重度の介護を要する)

生活全般にわたって、全面的な介助が必要

訪問介護 週5回
+巡回週14回  
訪問看護 週2回
通所介護 週1回
短期入所 6か月に6週
福祉用具貸与 特殊寝台 
マットレス、エアーパッド

358,300


 介護サービスの利用

H12年(2000年)に施行された介護保険のメリットは、住宅改修や福祉用具の謂わばハードウェアの充実はもちろんであるが、むしろ介護者の心身労を軽減もしくは補完するソフトウェアにあたる介護サービスにあると思う。わが家は、この内から、在宅サービス(訪問介護や看護)でなく施設サービスを受けることにした。どの施設を選ぶのかの選択肢も多い中で、最も近場で家族ぐるみで罹っている地域病院、S病院グループの特別養護老人ホーム「M」を利用している。

給付区分

サービス内容

補   足

<要介護3>の利用基準

わが家の利用状況

在宅サービス

訪問介護・看護

省略(利用せず)

省略

利用せず

 

施設サービス

通所介護(デイケア)

日帰りでリハビリや娯楽を享受

週3回

主に入浴サービスを目的に週3回利用している

 短期入所(ショートステイ)

宿泊生活

6ヶ月に3週

三つの目的のために、8ヶ月間で39利用した〜@骨折などで寝たきり状態が続く期間、A介護人が遠隔地の葬儀参列等のための遠出、B介護人の骨休め

母も週3回、銭湯気分の入浴や趣向を凝らした娯楽付きのデイケア(日帰り通所)を楽しみにしており、午前10時ごろの車の迎えを待てず2時間も前から身支度して待つ位だ。お陰で介護者は入浴介助という大きな労力から免れ、その間外出や溜まった用事を済ませたり骨休みができるというものだ。当初は家で入浴していたが、2度も転んでたんこぶをつくるなどこの危険作業が悩みの種となっていた。このようにデイケアは本人と家族双方にいい生活のリズムを作ってくれ、欠かせないものとなっている。

ショートステイ(宿泊型通所)は、今年の2月、坐骨骨折で寝たきり状態が続いたとき、病院には受け入れてもらえないのでやむを得ず利用した。これがきっかけで、友人の葬儀参列のための遠出や娘と孫の帰省への対応等介護側の緊急事態発生時に誠に使い勝手がよいものとわかった。母に了解をとると、「何度も行っているし、みんな親切だからいいよ」。短期ならOK、長期になるとお家が一番としきりに帰りたがった。これは、施設介護がどうしても集団的・画一的なケアになるためだろう。

七転び八起き

二度と転倒させまいという夫婦の悲願は一度ならず何度も敗れた。下表の通り、転倒はこれまで記録しただけで4回、同様なものを入れると倍以上になる。今年の2月には自宅の洗面所での転倒が原因でとうとう坐骨骨折と、2回目の骨折までさせてしまった。介護側としては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ベッドから離れられない生活を特養ホーム(ショートステイ)で17日間過ごすことになったが、幸い寝たきりにならずに済んだ。

文字通り七転び八起きの、この齢の回復力には驚きと感謝。戦中は畑仕事とカツギ屋で私たち兄弟を育て、長い苦労生活の後、還暦以降は毎日の牛乳1リットルとゲートボールで鍛えた丈夫な体のおかげだろうか。

転倒年月日

 回数

    内       容

入院 又は 入所

H16930

@

道路で転倒腰椎圧迫骨折で入院

→病院の特別計らいで
3週間入院

 1021

 

退院

 

H17 24

A

自宅洗面所で仰向けに転倒

 

 〃 27日 

 

B

前項の結果の痛みを訴え、救急車で入院。坐骨骨折

同日点滴中に病院ベッドから落ちる

→特養ホームの
ショートステイ
17

 〃 213

C

居室内ベッドから落ちる

 

家庭介護

要介護者、介護者双方の幸せのために施設介護を最大限有効利用させてもらっている。切れ目のない自宅での家庭介護生活があくまで中心で、スポットケアである施設介護は家庭介護を長期安定させるための補完的なものといえる。母の現況は、「1日のほとんどをベッドの上で過ごす、寝たきりではないが寝たきりに近い生活」といえよう。一日中(夜間も)つけっ放しのテレビを友とし、晩酌のコップ1杯のビールと週3回のデイケアへのお出かけを楽しみにしている生活である。入院前にはボケ防止のためといいながら、朝刊の「天声人語」を書き取りしていた日課はもうなくなった。

身体的には、次表の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」(厚生省)によると、<ランクB>といえる。

ランク

行          動

生活自立

ランクJ

何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で
外出する。

1.
交通機関を利用して外出する。
2.隣近所なら外出する。

準寝たきり

ランクA

屋内での生活は概ね自立しているが介助なしには外出しない。
1.   
介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する。
2.   
外出の頻度が少なく日中も寝たり起きたりの生活をしている。

寝たきり

ランクB

屋内での生活は何らかの介助を要す。日中でもベッドの上の生活が
主体であるが座位を保つ。

1.   
車椅子に移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う。
2.   
介助により車椅子に移乗する。

 〃

ランクC

1日中ベッドで過ごし、排泄、食事、着替えにおいて介助を要する。
1.
自分で寝返りをうつ。
2.
自力では寝返りもうたない。

見逃せないのは、痴呆症がすすんでいることであり、次表の「痴呆性老人の日常生活自立度(寝たきり度)」(厚生省)によると<ランク3A>に該当する。

ランク

判定基準

症状・問題行動例

何らかの痴呆を有するが、日常生活は
家庭内及び社会的にほぼ自立している。

日常生活に支障を来すような症状・行
動や意志疎通の困難さが多少見られて
も、誰かが注意していれば自立できる

 2a

家庭外で上記Uの状態が見られる。

なれない場所で道に迷うとか、買物や事務、
金銭管理などそれまでできたことにミスが
めだつ等

2b

家庭内でも上記Uの状態がみられる。

服薬管理ができない、電話の応対や訪問客
との応対など一人で留守番ができない等

日常生活に支障を来すような症状・行
動や意志疎通の困難さがときどき見ら
れ、介護を必要とする。

3a

日中を中心として上記Vの状態が見ら
れる。

着替えができない排便・排尿を失敗する
食事することができない。

同じことを何
度も聞く、やたらに物を口に
入れる、物を拾い集める、徊、失禁
大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行
為、性的異常行為等

3b

夜間を中心として上記Vの状態が見ら
れる。

ランクVaに同じ

日常生活に支障を来すような症状・行
動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

ランクVに同じ

著しい精神症状や問題行動あるいは重
篤な身体疾患が見られ、専門医療を必
要とする。

せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神
症状や精神症状に起因する問題行為が継続
する状態等

 *上表中の赤ペイントは、母の該当症状又は問題行動

転倒防止を旨としながらも、これまでは本人の自主性、自立性を出来る限り尊重しながら生活をしてきた。母にはわれわれ付き添いなしに単独行動をしないよう(歩かないよう)に言い含めた。本人から何度も「わかた、わかった」の返事を取り付けるのだが、それを直ぐ忘れるというより、新しいものは何も記憶に入らない痴呆という悲しい現実の故にこれまで、単独行動→転倒の繰り返しが続いた。

徘徊という問題行動がある。痴呆に伴う不安や焦燥感がヒトを動かすものらしい。施設介護で、ヒトを紐で縛る、ベッドに括りつけるという、安全確保のための手段が非人間的と責められる。母の単独行動も痴呆度進行による一種の徘徊行動ではないかと睨んでいる。母の場合は、幸か不幸か、体力や運動機能の弱体化により徘徊には至らないが、転倒の危険がいっぱいというもの。母の安全確保のための鈴の付け方に今後ますます悩みそうだ。

最後に

母は皆からケアを受ける一方となった。この母の何にも代え難いところは、誰に対しても、何事に対しても「有難う」と声をかけることだ。ただ、私と同じDNAを持つ母の頑固さだけはいつまでもしぶとく変わらない。頭にくることが多いのだが、この母をあやし諭す「介護主任」はまるで天使のようだ。ともに感謝している。この両人にアテンドする私は、今後ともサンドバッグになりたいと思っている。

 腰重き 夫の代わりに 姑を看て いつの間にやら わが母となりぬ    美津子

               孫・曾孫と母2005.5.20) 
 
お世話になっている人たち

S病院・地方連絡室・主任

鈴木 孝子

生活相談(ソーシャルワーカー)

〃 ・居宅介護支援事務所

香川 幸一

ケアマネ(介護福祉士)

特別養護老人ホーム・M

岡田

生活相談(ソーシャルワーカー)

  〃

横山

(看護師)

  〃

徳永・米田

(介護福祉士)

  〃

北本・大寺

送迎(介護福祉士)

KB社・在宅事業課

松井 麻吏

福祉用具相談(営業)

                 * 茲に記して感謝申し上げる次第です

マルナカ・ファミリー  

丸中キミヨ(89歳)

主役(丸中家のボス)
H16/9 腰椎圧迫骨折 ・H17/2坐骨骨折

丸中美津子(65歳)

脇役・介護主任・天使

丸中 正量(65歳)

アテンド・サンドバッグ

05630日記)  

 
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