パ・リーグのプレーオフ制度に思う     黒木 靖生

 

 プロ野球の日本シリーズは、大方の予想を裏切って、千葉ロッテ・マリーンズが阪神タイガースを初戦から4連勝で破って、31年ぶりにチャンピオンフラッグを獲得しました。私は、当研究会ホームページの本年5月号にも書いたようにマリーンズを応援しているのですが、今回のマリーンズの日本シリーズ優勝には何かシックリしないものを感じます。と言うのは、マリーンズはパ・リーグのペナントレースでは福岡ソフトバンク・ホークスに次いで2位であり、プレーオフの結果、日本シリーズに進出できたからです。  

パ・リーグのプレーオフは、先ずペナントレースの勝率2位と3位のチームが戦い(第1ステージ)、先に2勝したチームが勝率1位のチームと戦う(第2ステージと称し、先に3勝したチームがパ・リーグ優勝チームとなる)方式です。今年は、第1ステージで勝率2位のマリーンズと3位の西武ライオンズが戦ったのですが、ライオンズはピッチャーに全日本のエース松坂(今シーズンは14勝でしたがパ・リーグ最多三振奪取投手)と今シーズン17勝(最多勝利に1勝及ばず)の西口を擁しており、3試合のマッチレースではライオンズが勝ち抜く可能性も大きかったと思います。  

ところが、今シーズンのライオンズの成績は勝率4割9分3厘と5割にも達しておらず、勝率2位のマリーンズとのゲーム差は18.5でした。もし、第1ステージと第2ステージをライオンズが制した場合、勝率5割以下のチームがパ・リーグの覇者として日本シリーズに出場するという椿事が現出することになったのです。第1ステージは、マリーンズが松坂と西口を打って2連勝したため、日本プロ野球界にとっては幸いなことに、椿事を見る可能性はこの時点で消えました。  

第2ステージは、10月12日から勝率1位のホークスと第1ステージの勝者マリーンズとの間で行われたのですが、マリーンズが先に2連勝したあと逆にホークスが2連勝し、最後の試合でマリーンズが逆転勝利を収めて日本シリーズ進出を決めました。この第2ステージでマリーンズが2連勝したとき、マリーンズが第1ステージを戦っているときにホークスは試合が無いので「試合勘が鈍って不公平だ」との批判がありました。しかし、私はこの批判は的を外していると思います。と言うのは、第1ステージは10月8日から始まっており、第2ステージの開始日との間には4日の差しか無いからです。むしろ、エース・ピッチャーのローテーションを考えれば、第2ステージから開始するチームのほうが有利と思います。  

 私は、パ・リーグの全試合日程が終了したのは9月28日であり、プレーオフとの間に2週間近い休みがあったのがホークスの試合勘が鈍った原因と思いますが、これは10月8日から第1ステージを開始したマリーンズも同じような条件でした。むしろ、ホークスにとって痛かったのは、攻守の要であった城島捕手が、シーズン終盤の怪我でプレーオフに出場できなかったことだと思います。それから、ホークスは、去年もパ・リーグの勝率1位でありながらプレーオフの第2ステージでライオンズに破れて日本シリーズへの出場を逃しており、「昨年の轍を踏むのではないか」との心理的圧迫も大きかったと思います。特に、ホークスの主砲の松中選手は、昨年は3冠王だったのにプレーオフでは全く打てず敗戦の責任を一人で背負う格好になったのですが、今年も2冠を取ったのに、プレーオフではほとんど打てませんでした。  

 逆にマリーンズは、31年ぶりのリーグ優勝が懸かっていたものの、ペナントレースでは2位だったので、第2ステージでは「勝てば儲けもの」という気楽さがあったかも知れません。マリーンズはむしろ、第1ステージのほうが「負ければ最後」と緊張したと思います。一方のライオンズはペナントレースの成績も芳しくなく「負けてもともと」の気持ちで戦えますし、昨年もプレーオフを制していて、短期決戦の勝ち方を心得ているという評判だったからです。  

一番可哀そうなのは、ホークスの選手です。昨年も今年も、ペナントレースの勝率は1位だったのに、プレーオフに負けて日本シリーズには出場できていません。私は、ペナントレースの勝率1位のチームが、2年も続けて日本シリーズに出場できない結果となる制度は、根本的に間違いであると思います。1年間で営々と積み上げてきた勝率1位の成績が少ない場合は3試合で覆されてしまう制度は、バクチ以外の何者でも無いでしょう。  

パ・リーグのプレーオフと同じころに新聞を賑わしていたように、米国のプロ野球(メジャーリーグ)にもプレーオフ制度はあります。メジャーリーグは、アメリカンリーグ、ナショナルリーグともに東地区・中地区・西地区の3地区に分かれてペナントレースを戦い、各地区の勝率1位のチームと、3地区の勝率2位のチームの中の最高勝率のチーム(ワイルドカード)がトーナメント方式でワールドシリーズ出場権を争う仕組みです。そのため、今年のように、ナショナルリーグのワイルドカードのヒューストン・アストロズがワールドシリーズに出場するような事態も起こりますし、ワイルドカードのチームがワールドチャンピオンになることすら有り得ると思います。したがって、この方式も余り優れたものであるとは思いません。  

 私は、パ・リーグがプレーオフ制度を存続させるのであれば、1973年から10年間行われた「前期・後期制」が良いと思います。それは、前期・後期の「勝率1位のチーム」のどちらかが日本シリーズに出場できるからです。記録を見ると、この10年間の日本シリーズ出場チームは、前期優勝チームが5回、後期優勝チームが3回、前後期優勝チームが2回と、後期に調子を上げたチームが有利という結果になっていないのが面白いところです。ちなみに、31年前(1974年)に、当時のロッテ・オリオンズがパ・リーグの覇者になったのはこの制度の期間で、プレーオフの相手は前期優勝の阪急ブレーブス、そして日本シリーズで勝利した相手は中日ドラゴンズでした。

なお、現在のパ・リーグのプレーオフの制度の中に「勝率1位と2位のチームのゲーム差が5以上であれば、勝率1位のチームに1勝のアドバンテージを与える」というルールがあるのですが、今年はホークスとマリーンズとのゲーム差は4.5であったため、ホークスにアドバンテージは与えられませんでした。このゲーム差が「5以上」でなく「4以上」であったならば、ホークスが2勝した時点で日本シリーズへの出場権を獲得していたことになりますので、この数字を見直すべきという議論もあるようです。その場合は、現在は有りませんが、勝率2位と3位のチームの間にも同じようなルールを作るべきでしょう。  

それから、日本シリーズではマリーンズがタイガースに4連勝したのですが、昨年もパ・リーグのライオンズがセ・リーグの中日ドラゴンズを下しています。すなわち、プレーオフを戦ったチームのほうが日本シリーズで有利という結果が出ています。今年の場合、タイガースの公式試合が終わったのは10月5日ですが、日本シリーズが開始したのは10月22日で、タイガースには2週間以上のブランクがあったことになります。  

いっぽう、マリーンズは10月8日からプレーオフの第1、第2ステージの7試合を戦って、連戦の疲れはあったにしろ4日休んで心地よい緊張感を堅持しながら日本シリーズを迎えたことになります。両チームのこの差は大きかったと思います。もし、パ・リーグが来年もプレーオフ制度を存続させ、セ・リーグが今の制度を継続するのであれば、セ・リーグの試合の最終戦がパ・リーグのプレーオフの第2ステージの最終戦に近い日程になるように、両リーグの試合日程の調整が必要であると思います。

と書いたものの、今年のセ・リーグの最終戦(ヤクルト・スワローズと横浜ベイ・スターズとの試合)は10月14日に行われており、この時点ではパ・リーグのプレーオフの第2ステージは開始されていました。つまり、セ・リーグ全体の試合日程ではなく、優勝チームが決まったらそのチームの試合日程をパ・リーグのプレーオフの試合日程に合わせなければならないことになり、現実的にはかなりむつかしそうです。  

 最後に、来年こそは、千葉ロッテ・マリーンズがパ・リーグの勝率1位でプレーオフを制し、なおかつ日本シリーズで優勝することを祈るものです。(終わり)


 投稿広場 目次へ