[シリーズ投稿・枚方通信(その
18
)]  

 曇りときどき雨の介護生活(そのB)    丸中 正量


 はじめに
 

 極めて私事ながら母の介護を過去2回報告してきたが、今回もその続編である。

昨年9月末、道端で転んで腰椎を圧迫骨折し、3週間の入院生活をしたのがきっかけで始まった在宅介護生活は1年経過した。多くの友人、知人から母の具合を訊かれるが、「全くの寝たきりではないが、朝夕の2回洗面所に立つことと週3回のデイケア通いを除いて、一日中ベッドの上の生活を余儀なくされている。概ね小康状態が続いているが、長期的には足腰の衰弱と痴呆が進む一方でしょうか」と答えるのも前回と変わらない。

 現  況  

 母にとって時間の概念は最早失せたかに見えるが、介護側にとっては長い一年だった。8年前に上顎腫瘍の摘出に関連して3回手術を繰り返したことから元々飲食にハンディのある母の食事作りから山のような洗濯まで、妻にとっては大変な家事と介護ではあるが、それなりに安定(高位安定)していると言える。現在の介護生活の状況を整理すると下表の通りになる。10月から訪問マッサージを開始し、週3回(月、水、金)のデイケア通いの合間の(火、木、土)の3回組み込んだことが大きな変化となる。  

 区  分

  現   況

   内  容

月額費用
10月支払分)

変 化 点

 

在宅介護

ベッドの上の生活

身体介助(移動・
歩行・食事・洗面・着替え等生活のす
べて)(入浴はデイケアで)

 

電動ベッド他のレンタル      

2,750円(介護保険適用により実額の10%)

 

 

おしめ他の消耗品

 

9,470

 

デイケア
(週3回)

リハビリ・作業療法・娯楽・入浴・
昼食・おやつ

デイサービス

24,590円(介護保険適用により実額の10%)

 

*訪問マッサージ
(週3回)

10月から開始

マッサージ
(生活リハビリとも呼称)

3,000円(介護保険適用により実額の10%)

足腰の痛みや床ずれの解消足腰の硬直化と衰弱化の進行の防止(または順延)

病院
(月
1回)

診療・ 検査 ・薬・
補助栄養剤

 

3,540円(老人医療適用)

 

*ショートステイ
(緊急発進)

8月、34日利用

特養ホームへ短期入所・宿泊

15,000円程度)

8月利用時、本人が懲りて二度と泊まらないと宣言

痴呆度

受け答えははっきりしている。新しいことの記憶ができない

テレビチャネルの選択もしなくなってきている

 

 

 

月額費用合計→

43,350

介護保険のメリットを最大限享受している

ゲートボール以外全く趣味を持たない母のベッドの上の楽しみは、テレビを措いてない。朝から晩まで、そして夜通し、寝ても覚めてもテレビをつけっぱなしにしている。当初は相撲番組など自分の好みの番組にチャネルを回していたのが、最近はその選択もしなくなってきた。
 <家では専らベッド、週
3回のデイケアでは車椅子>〜の生活ではますます足腰が弱り、これがまた痴呆の進行に結びつくと判断せざるを得ない。ケア・マネージャーと相談の上、10月からリハビリのため訪問マッサージを受け入れた。一人で歩くまでには程遠いが、お陰で腰痛を訴えることがなくなり、又、床ずれの心配は全くなくなったと言える。

今年の夏休み、次男一家の里帰りを受け入れるため、特養ホームにショートステイ(短期入所生活介護)を34日でお願いした。自宅のいわばマンツーマンの介護と異なり、一定のスケジュールにそった団体の介護生活、特に軟らかいものしか噛めない、嚥下できない身にとって、施設の統一メニューには馴染めず、なお又、単独行動をすると注意されたり叱られたりで嫌気が差して、荷物をまとめて帰ろうとしたらしい。ベッドから車椅子へ勝手に移動しようとして室内の箪笥をひっくり返し、額に傷をおった。いたく自尊心を傷つけられ、私たちの前では、「二度と泊まらない」と宣言した。それまでにも妻の友人の遠隔地の葬儀参列時などにショートステイを利用したが、これで緊急発進の道が絶たれてしまった。

ショートステイで骨折事故の事例が見られるのは、要員不足(入居者数に対する介護要員数の一定数)に起因することが多い。このため施設は施錠をした閉鎖型で、生活は禁止型となり勝ちである。夜間帯に当直する介護人が1名体制で起った老人虐待事件は耳新しいが、入居者の勝手な行動を抑制するために椅子に縛って拘束するといった古典的な事件や逆の骨折事故は少なくない。その点、デイケア(託老所)は開放的で、ボランティアによる慰問も相次ぐ交流型で、母ならずとも皆に好まれるものらしい。

枚方大菊人形展と卒寿の母

1110日、母が90歳の誕生日を迎えた。ベッドの上で誕生祝もやり、曾孫たちからのメッセージも届いたが、丸中ファミリーの中で最長不倒の長寿を感謝して祝うにはそれだけでは物足りなさを感じていた。9月末から124日まで開催されている枚方大菊人形展が今年で96回目を重ね、菊師の継承困難の事由のため今回限りで幕を閉じるというので見納めの観客で賑わっていた。23時間の待ち行列が出来ているという情報に接し、母も介護側もこれまでまともに観たことのない菊人形に連れて行くことにした。病院や施設との往復以外で初めての外出イベントになった。

地の利をいかして枚方公園の開園30分前到着を狙ったお陰で、都合1時間待ち位で入場できた。車椅子(10台)の貸出制度があり、わが方同様のお連れも見かけた。パーキンソン病の方と思しきベッド仕様の車椅子の持込には驚いた。NHKの大河ドラマ「義経」の登場人物の等身大の菊人形の前は、デジカメ撮影会の様相を呈していた。ただでさえスムースには動かない行列の間に割り込む車椅子は、前の人の足元にも接触し、言語道断と断罪されてもおかしくないが、意外なほど柔和でな親切な皆さんに大変恐縮した。

 介護日記(短歌風)

  <母のこと>

・大洪水今朝もおこせしわが母は メンメと言いてその尻叩く

・買出しと肥桶(コエオケ)かつぎに明け暮れし 戦後の母は今何の夢見ん

・食前に手合わせ祈り忘れぬは 天地の恵み感謝の心

・押入れに捨て切れぬもの詰め来たる 母に代わりていま大掃除

・夕食に出されたる魚見て 鮮度を言い張る主婦の目戻る

朝窓に野鳥の見ゆる汝が庭に 出でて水遣り草取りさせたし

・病死せし父と別れて二十年 母は卒寿を迎え給いぬ

卒寿祝(ホ)ぎ色紙を贈るみちのくの 曾孫の名前読むも分からず

・子を3人産みし母には孫7人 曾孫5人を授かりし今

九十六年重ねし枚方菊人形 卒寿の母と見納めに行く

・「義経」の菊人形に魅入る列 車椅子にもいとと優しき

・神からの恵みとぞいう母のボケ わがまま放題長く生きよと

・生命のあらん限りに母らしく 生きるを願いて「めでたし」唱う
  

  <主任介護人のこと>

・ABの波長の夫に嫁ぎ来て その母看んとは思わざりしも

・家を継ぐ夫に嫁いで我妻は 子育て終わるも介護始まる

・子育てをようやく終わり訪れる 妻の平穏無きが哀しも

われ洗いきみ拭く皿の片付けが 妻の唯一の憩いとなりぬ


 おわりに

今回も三十一文字の介護日記を試みたが、なかなか歌にはなり難い。今後とも、下手ながら指折り数え、母と介護人の日記をつけたい。
                                                                    051130日記)  


 
    訪問マッサージ師によるリハビリ中
 

  同左(05.11.08)


  卒寿の祝い
 



 
  同左(05.11.10)

 
    枚方大菊人形展で
 





    同左(05.11.14)


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