[シリーズ投稿・枚方通信(その
19
)]  

 啓光学園高校ラグビー、全国大会5連覇ならず    丸中 正量


 はじめに
 

 毎年、歳末から年始にかけて花園ラグビー場に詰めるようになって5年目となる。毎年選手が入れ替わる高校スポーツで、連覇なんてあり得ないと思いながらわが 枚方市 の啓光ラグビーを追いかけてきたが、結局、昨年4連覇という偉業を果たした。スター選手を擁せず、他のチームに比し体重、背丈の見劣りのするチームがどうして勝ち続けるのか、その秘訣と魅力を、昨年2月、この[シリーズ投稿・枚方通信(その14)]「枚方の小さき戦士たち〜啓光学園高校ラガーたちの活躍」で報告した。  


      啓光学園の玄関入口
  
(モデルはカブスカウトを借用)
 
   全国大会優勝記念碑
(前庭に6つ並ぶ〜内4つが4連覇)

大会史上戦後初といわれる5連覇のかかる今シーズンに入っても、啓光学園は昨春から各種大会に順当な成績を修め、さらに府大会も勝ち抜いて大阪第一代表をキープし、第85回全国大会になんなく(文字通り難無く)進出した。その顛末をお伝えしたい。

 毎日新聞の戦前評  

 大会の主催者である毎日新聞による参加51校の戦前評は、先ず見出しに「啓光学園軸に関西勢が有力」とある。

かねてより西高東低と言われている高校ラグビーだが、毎日新聞の今年の優勝候補は、いずれも関西の私鉄で一番営業距離の短い京阪沿線にある4校と言う。京都の伏見工とあとはすべて大阪の3校、計4校で、そのうち啓光学園が最有力と言い放っている。長くなるが、以下引用する。  

「第7回大会の同志社中以来、史上2校目の5連覇を目指すAシードの啓光学園(大阪第1)が優勝候補の筆頭王者の花園での連勝を止める候補としては、東海大仰星(大阪第3、近畿大会で啓光学園を破った伏見工業(京都)大阪工大(大阪第2)といったBシードの関西勢が有力で、例年以上に西高東低となっている。  

啓光学園はほとんどの選手が身長170センチ台と小柄だが、高校日本代表SO村田を中心とした展開力が持ち味だ。伝統の試合運びのうまさも健在。春の全国選抜大会も制するなど完成度も高く、死角は少ない。  

打倒啓光の最右翼は選抜準優勝の東海大仰星だろう。特徴は平均体重90キロを超える大型FW。両プロップは100キロを超え、モールもうまい。予選4試合で計3失点の防御力も魅力だ。

選抜大会では準決勝で啓光学園に敗れた伏見工業だが、力は十分にある。SH伊藤、SO文字のHB団がともに高校日本代表。リズムの良い攻撃を仕掛けたい。 大阪工大は予選4試合の平均得点が95。高校日本代表ナンバー8の浦田がFBに入ったバックス陣の攻撃力は脅威だ」。05.12.27付毎日新聞、太字は京阪沿線校に筆者が表示)

 85回(2005年度)大会の啓光学園の戦績                             太字は京阪沿線校)

日    程

  対 戦 結 果

概       況

1回戦

051227/28

試合
    なし

シード校のため

2回戦

051230

啓光学園
 (大阪第1
  15
3 
  
荒尾(熊本
  

啓光は浮き足だってミスが目立った。試合には僅差で勝ったものの、荒尾の好ディフェンスに阻まれわずか3トライ。今後に反省の課題を背負った初戦。(薄氷の勝利スタートは、薬になっていいと思った。)

3回戦

0611

啓光学園
 (大阪第1
   395  
  高鍋
(宮崎) 

前回の試合からが学んだのか、ミスがなくなり、やっと啓光らしい安心して観ておられる試合を回復した。

準々決勝

0613

啓光学園
 (大阪第1
  1
229 
大阪工大
2 

啓光は序盤からミスが目立ち、大工大の鋭い出足とスピーディな集散に圧倒されて攻め手を失った。逆に5トライを許し、完敗した。

 

かくして啓光学園の戦後初の5連覇は成らず(ベスト8)、4連覇の始まる第81回大会から続いた花園での連勝記録も22勝でストップした。これまで啓光の4連覇を許してきた他校の包囲網が取り巻く中で、連覇を更新続けるという重圧で押しつぶされながら戦ってきたロイヤルブルーの啓光フィフティーンは、この瞬間大地に崩れ落ちた。22連勝に立ち会ってきた私も共に泣いた。

 京阪沿線校の活躍  

準々決勝以降の戦績を以下に表記すると、毎日新聞評のとおり、すべて京阪沿線校が絡んでいる。
                            (太字は京阪沿線校)

 

日  程

対  戦  結  果

 

準々決勝

0613

茗渓学園(茨城) 8−27 桐蔭学園(神奈川)

啓光学園(大阪第11229 大阪工大(大阪第2

伏見工大(京都) 24−20 長崎北陽台(長崎)

東海大仰星(大阪大第355−7 大分舞鶴(大分)

 

 

      

準決勝

0615

大阪工大(大阪第210−12 桐蔭学園(神奈川)

伏見工業(京都)15−10東海大仰星(大阪大第3

決勝

0617

伏見工業(京都)36−12 桐蔭学園(神奈川)

 

桐蔭学園は5回目の出場で初の決勝。勝てば、関東勢としては第77回大会の国学院久我山(東京第1)以来、8年ぶりの全国制覇となるはずだった。

 

81回大会から啓光学園の4連覇が始まったが、直前の第80回大会を制したのが伏見工。同校の深紅のジャージが5年ぶり、4度目の全国優勝を飾った。(“泣き虫”の山口良治監督(現在総監督)がかって荒れに荒れたた学校を“ラグビー”で建て直したという逸話は、「プロジェクトX」などに詳しい。)

 毎日新聞の戦前評は、優勝候補の筆頭、啓光学園の軸が揺らいだことを除けばほぼ満点に近いと言える。ラグビーに番狂わせはないと聞いたことがあるが、世評の強豪が順当に勝ち進んだようだ。しからば、啓光の軸が揺らいだのは何故だったのだろう。

 啓光ラグビーの、期待値より早い敗退の原因

私は前回、強い啓光ラグビーを育てた背景を3点に集約して説明した。一つは、激戦の京阪地区であり、二つは、記虎敏和・前監督(現総監督)のラグビーを通じた人間教育とリーダーシップ、三つ目は、知力と体力のバランスのとれた、社会のよき指導者を中・高一貫して育成うることを標榜するカトリック・ミッションを挙げた(詳細は、[シリーズ投稿・枚方通信(その14)])。

前項を背景にした啓光フィフティーンの持ち味は、「個々人の弱さを認識し、それをカバーするため相手を倒す鋭いタックルと組織的な防御を旨とし、その防御から切り返して展開する攻撃」であった。また、「高校3年生が抜けたあとの弱体チームが年初来弱い弱いと言われ続けながら、花園での試合毎に学び、一戦一戦強くなること」であり、それが多くの人をこよなく魅了し、私もその虜になった。

 今大会は、その様子ががらっと変わった。これまで鉄の壁と呼ばれたディフェンスが押し戻され、破られ、出足を許し、容易に先制を許し、攻めに転じる積りのパスがミスとなり、攻め手を失い浮き足立ちの状態のまま、結局時間切れ。敵陣ゴールの10メートル前をターンオーバーされてトライを許したことがあったが、過去4大会では見たことのない失態だった。

5連覇目標の重圧もあってか、先ず、いつもの啓光を失っていた。

昨年、記虎前監督から監督を引き継いだ初年度に4連覇を果たした杉本誠二郎監督。監督の今年の自チームの評価は、「個性の強すぎるチーム。個々の能力は高いが、意思統一の部分で昨年に及ばない」。弱い弱いと言われた続けたこれまでのチームとは逆に、強い強いと周りに言われ続けたのではないか。その大方の期待値が毎日新聞の啓光への戦前評となったに違いない。

重圧と前評判が、啓光の強みの「小さきラガーたち」というチャレンジャーの強い結束と鉄の防御を微妙に揺るがせたと言えそうである。

 おわりに

啓光学園ラグビー部は、「戮力一心」(りくりょくいっしん)を部訓にしている。技術より先に人と人のつながりと協力、そしてそのため心を一にすることを強調するものと思う。杉本監督のチーム評の反省にも「意思統一」という言葉が発せられた。

今年の厳冬は骨身にこたえたが、間もなく立春。高3を送り出した後の新人戦が始まる頃だと思う。先ず、部訓に戻って、啓光らしいのびのびラグビーを心がけ、また来春には 枚方市 民の前でニュージーランド遠征仕込みの勝利の踊り、“ハカ”を披露してもらいたい。(06131日記)


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