防衛施設庁の談合事件 黒木 靖生
ここ一週間、ライブドア問題に端を発した「堀江メール」問題と共に、防衛施設庁発注の建設・土木工事を巡る官製談合事件がマスコミをにぎわせています。2月25日の毎日新聞の朝刊によると、過去2年間の談合の対象になった予定価格5億円以上の建設・土木工事の件数は68件で落札総額は891億7600万円、談合によって上昇したと思われる落札額は公正取引委員会の推計で18.6%とされていることから、165億8673万円もの巨額の税金が無駄に使われたことになるそうです。
私は、防衛施設庁や他の公官庁の発注工事にかかわる談合事件は決して許されるべきものでは無いと思いますが、このような談合が起きる背景を無くすことが先決のような気がしています。それは、官公庁の職員の「再就職」問題です。一般企業においては、「親会社」の下に幾つかの(大企業の場合はかなり多くの)「子会社」が存在することは普通です。そして、親会社の役員や上級管理職になった人は、子会社の役員に送り込まれることがごく普通に行われています。このようなことが行われるのは、子会社に送り込まれる人々が子会社の社業をますます発展させるという観点もあるのですが、「雇用延長(収入保障)」の意味合いもあるように思います。
ところが、官公庁は一般企業のような「子会社」を持っていません。数年前までは「外郭団体」を作ってそこの「理事職や職員」に送り込むこともできましたが、「構造改革」全盛の現在においては、外郭団体は減らされる一方です。上記の防衛施設庁の談合事件で逮捕された技術審議官は、同庁においてはNo.2の地位にあります。一般企業においては、親会社の副社長まで上り詰めた人が、辞めた後に子会社の社長などに迎えられるケースは多いと思いますが、防衛施設庁にはそのようなルートは用意されていないのではないかと思います。
「子会社に行けるのは、一般企業においても親会社の役員や上級職員だけではないか」との批判もあると思いますが、一般企業の社員においても「定年後の再雇用」の道があります。私の見るところ、一般企業においては、一般社員は定年後も比較的自由に再雇用されていると思います。企業が一般社員を再雇用しても、それは(会社の慈善活動ではなく)営利活動の一環として行われていると理解されますから、何ら社会的に非難されることはありません。ところが、官公庁が一般職員を定年後に再雇用したら社会的に大いに非難されると思います。
一般会社の人が子会社の役員になっても「天下り」という言葉は使われませんが、官公庁の上級管理職が一般企業に「再就職」すると、その人の持っている知的資産がその会社にとって価値あるものであっても、それは「天下り」という言葉で非難されます。つまり、一般の会社の行為は、結果的には利益を出す(会社を存続させる)ことで評価されるのに対し、官公庁の行為は、収入(予算)が税金という公共財であり、その執行には公正・公平の原理が求められるとの違いから来るものでしょう。
しかし、「再就職」や「定年後の再雇用」という給与所得者にとって一番と言っても良いほどの大事なことが、一般の会社の従業員には比較的緩やかに運用されているのに対して、官公庁の従業員には極めて厳密に運用されていると言うことは、公平性の観点からも再考する必要があると思います。防衛施設庁の役人さんも、本人だけでなく部下の定年後の雇用が何らかの形で保証されていたら、談合などという「精神的に惨めになる行為」には走らなかったのではないかと思います。
(以上)