新技術の怖さ      黒木 靖生



 
NTT東日本の「ひかり電話」が、9月19日の朝から9月21日の夕方まで3日間も障害を起こした(およそ9時〜19時のあいだ非常につながりにくい状態になった)ことは、9月22日の日本経済新聞の朝刊で比較的大きく報道されていましたし、9月25日のNHKの夜のTVニュースでは、NTT東日本の社長さんの謝罪会見の様子が映し出されていましたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。実は、私の職場も、被害を受けた80万加入者の中の一つでした。  

 NTT東日本の「ひかり電話」は「IP電話」の一種で、その名の通り、NTT東日本の提供する「光回線」を使い、1本の光回線に最大で8本の電話回線を乗せることができて、しかも電話番号は従来の番号を継続して使うことができるというものです。

その経済的メリットは、

@従来の電話回線の基本料金(例:ISDN回線で3,530円/月)が不要になる。

A固定電話への通話料金が割安(例:全国どこでも8円/3分)になる。

B携帯電話への通話料金が割安(例:ドコモへの通話は17円/60秒)になる。

等があります。

 ただし、IP電話の世界で良く言われている「IP電話同士の通話が無料になる」メリットは、8回線以上を使うユーザ同士でなければ享受できません。  

私の職場は、電話交換機が職場だけの独立したものであり、またインターネット接続用にNTT東日本の光回線を引いていましたので、この光回線を使い、今年の8月14日の会社のお盆休みを利用して、電話として使っていたISDN回線3本(6回線)を廃止し、「ひかり電話(6回線)」に変えました。この変更で、「ISDN回線の電話」と「ひかり電話」の基本料金の差額だけでも月額で6千円近くコストダウンできました。  

ところが、「ひかり電話」に変えてほぼ1ケ月後の9月19日の午前9時すぎに、使っていた電話が突然切れるという事象が連続して発生しました。最初はNTTの障害だとは夢にも思いませんでしたので、光回線のルータを調べたり、職場の電話交換機を調べたりしたのですが、特に異常は見当たりません。また、NTT東日本の「ひかり電話」のサイトの障害情報のページを見ても何も掲載されていません。  

そこで、何らかの情報を得るべくNTT東日本の当社担当の営業窓口に電話をしようとしたところ、電話が全く発信できません。仕方なく携帯電話を使ってやっと連絡を取り状況を話したところ、「ひかり電話」に障害が発生しているらしい(詳しい状況は不明)ことが判明しました。このころになると、「ひかり電話」による発信も受信もほとんどできない状況で、発信は携帯電話を使えば何とかカバーできましたが、受信は発信先が不明なので携帯を使って下さいと言うわけにもいかず、電話のベルの音がほとんど無い静かな(不気味な)職場が現出しました。  

この障害に関しNTT東日本のホームページに最初の掲示が出されたのが19日の正午頃で、電話がかかりにくい原因は「連休明けで通話が増えているので規制しているため」と出ていました。それでは間もなく収まると予想していたのですが、予想に反し、かかりにくい状況は夕方まで続き、やっと20時頃に「通話量が減ったので規制を解除した」との掲示が出されました。私は、「(夜になって)通話量が減ったので規制を解除した」のであれば、「つながりにくい真の原因は解明されていないのだから、明日も同じ状況になる」とNTT東日本の営業窓口の人にメールを送ったのですが、この予想は当たり、つながりにくい状況は翌日も翌々日も続き、私の職場の業務にも大きな影響を及ぼしました(私の職場では社内のコンピュータシステムのヘルプデスク的な業務も行っており、その業務に関してどれくらい迷惑をかけたか想像するしかありませんが・・・)。  

今回の「ひかり電話」の障害の原因は、NTT東日本の発表によれば「通話を制御しているサーバのソフトの不具合」だったとのことです。ハードの障害であれば交換すれば直るので比較的対応が楽なのですが、ソフトの障害は不具合箇所を特定しなければ対応ができず、その特定に時間が取られ回復が長引いたようです。しかしながら、ハードの障害の発生は究極的には予測不可能ですが、ソフトの障害はテストを十分に行えば事前に検出可能であり、NTT東日本は「なぜソフトの障害が事前に検出できなかったか」、その原因を究明し公表する義務があると思います。また、今回の障害期間中、障害の原因解明状況や復旧予想の情報開示も極めて不十分で、NTT東日本には「危機管理のありかた」について根本から考え直してほしいところです。  

19日に障害が発生したとき、私は「NTTほどの会社だから、午前中には解決してくれるだろう」と楽観していたのですが、20日になっても解決の目処が立たないため、その日の夕方にはNTT東日本の営業担当の人と「元のISDN回線に戻す」相談も始めていました。ただし、かかりにくいと言ってもウィークデイに職場の電話交換機を停止して回線を戻すわけにも行かず、23日(土)に工事を行う心づもりにしていたのですが、やっと22日になって「ひかり電話」が正常に使えるようになったため、回線を元に戻す決断はせずに済みました(ただし、22日の夕方になっても、NTT東日本から「障害の原因」がなかなか開示されなかったため、本当に回復したのか不安な面もありました)。  

私は、個人的には、自分の家の電話はADSL回線のIP電話を使っており、IP電話の技術に対しては余り心配していなかったのですが、今回の「ひかり電話」の障害で、「新技術の怖さ」を改めて思い知った次第です。特に、コンピュータシステムのヘルプデスク的な業務も持っている私の職場は「電話が生命線」であり、電話に関しては「安定した技術」を使うべきと反省しました。

 一方では、「新技術は使われないと進歩が無い」と強がりも言って、依然として「ひかり電話」を使い続けています。
                                       (以上)


 
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