小百合さんは何故一人? 黒木 靖生
私は通勤にJR東日本を利用している者ですが、最近見た駅構内のポスターで不思議に思うものがあります。それは、横140センチ、縦100センチくらいのかなり大きなサイズのポスターで、女優の吉永小百合さんが写っているものです。私が見たポスターは、次の3種類です。一つは、温泉街らしい町並みに架かっている小さな橋の真ん中に吉永さんが一人佇んでいるもの。二つ目は、温泉旅館の和室で浴衣の上に羽織を纏った吉永さんが座卓の前に座り湯呑みを持ってにこやかに笑っているもの。三つ目は、同じ衣装の吉永さんが湯殿で湯加減を見ているものです。その何れのポスターも、登場人物は吉永さん一人、そして「ふたたび、旅へ。大人2枚」というキャッチ・コピーが付けられています。
このポスターは、JR東日本の「大人の休日倶楽部」の会員を募集するためのものです。そして、この倶楽部には、男性・女性共に満50歳以上の人が入会できる「ミドル」というクラスと、男性は満65歳以上、女性は満60歳以上で入会できる「ジパング」というクラスがあるようです。したがって、この倶楽部には「一人」でも十分に入会資格があるわけですから、ポスターに吉永さん一人が写っていても論理的には齟齬はありません。また、1945年生まれの吉永さんは、「ミドル」・「ジパング」両方の入会資格をお持ちですから、モデルの醸す年齢のイメージでも問題はありません。
しかし、「大人2枚」というキャッチ・コピーが付けられているからには、このポスターが主として熟年の夫婦を狙ったものであることは確かでしょう。ところが、温泉街らしい町並みに架かっている小さな橋に吉永さんが一人佇んでいる姿は、「温泉の宣伝ポスターかな」とは思えても、熟年の夫婦が温泉を訪ねてきている姿を髣髴させません。また、吉永さんが湯殿で風呂の湯加減を見ている姿も、熟年夫婦が温泉旅行している一齣であるとはなかなか想像できません。
JR東日本には、これ以外にも吉永さんがローカル線らしい車両の座席に一人座っているポスターがありますから、列車を使った旅行の広告・宣伝において吉永さんと専属契約を結んでいるものと思われます。もちろん旅行には、一人旅から団体旅行までいろんな形があり、中には吉永さんの一人旅の姿とイメージがフィットするものもあると思います。しかし、今回の「ふたたび、旅へ。大人2枚」のキャッチ・コピーにはその姿は全くそぐわなく、吉永さんを生かせないことを承知しつつ「専属契約しているから」といった理由で起用したとしか思えません。JR東日本の宣伝部門は沢山の社員を擁しているのではないかと思いますが、誰もこのような疑問を抱かなかったのでしょうか。
(以上)
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