あけましておめでとうございます 高嶋 宏尚
21世紀になっても相変わらず先が見えず、前世紀と同じ愚行を我々は繰り返しております。重苦しく、悩ましいことの多い世の中だとは思いますが、こういう世相・時代だからこそ希望を持ちたいと考えます。干支にちなんで、「天馬空を往く」という年にしたいものです。
[初 夢]
新年早々こんな荒唐無稽な夢を見ました。
200×年には、高齢者や身体的なハンデキャップを負った一部の人を除いて自家用車の所有が法律で禁止されました。大気汚染、地球温暖化、交通渋滞・事故などの防止を旨とするものです。もう一つ、全ての道路が「カート道」と呼ばれるものになりました。これは自動車の走行を制御するためのレール様のものを道路に敷設し、車はこれに導かれて走行する、という仕掛けです。諸外国も日本に倣うことを検討し始めたようです。
自家用車の所有は禁止されましたが、バスやタクシーなどは大幅に増やされ、24時間様々な需要に十分応えられますし、生活には何ら支障のないようになっています。道路も混雑しなくなり、バスやタクシーの時間はとても正確になりました。救急車などもこれまでの十分の一程度の時間で役目を果たせるようになり、急病人は殆んどが助かるようになっています。後段で述べるように、自動車事故は皆無になってしまったので、実は救急車の出動回数も大きく減少してはいるのですが。
喘息などの排気ガスによる様々な問題も激減しました。幹線道路でないところでは、子供達がキャッチボールをしたり、サッカーボールを蹴る姿が頻繁に見られるようになりました。汚れの無い空気のもとで活発に運動をするようになり、子供達は本当に丈夫になりました。体力に自信が出来てくると、精神面も逞しくなるのは必然です。おぞましいいじめや少年犯罪は無くなってしまいました。
丈夫になったのは子供達ばかりではありません。青白くブクブクと太っていた大人達も、歩く機会が増え、体形が引き締まってきました。健康と精悍な顔つきを取り戻し、家庭や社会を支えていくとの自信に満ちてくると、一層子供達からも頼もしく見られるようになります。親の背中を見て育つ子供達への好影響は計り知れないものがあります。この結果、いくつかのフィットネス・クラブでは転業を余儀なくされる事態にもなっているようです。
一方、趣味で車を運転したいという人も当然おります。それも、オートマティックではダメで、マニュアル車でないといけないとか、制限速度を守らずに走ることにしか興味が無いとか、マフラーを外し、他の車の邪魔をしながらでないと走った気がしない(昔、暴走族と呼ばれた連中のようですが)などなど 本当に様々です。それに応えるため、富士山の裾野だとか、大雪山系だとかにいくつものマニア専用のサーキットを造りました。好きな人は、ここで思う存分に爆音を響かせればいいし、猛スピードで走って思いを遂げればいいという訳です。勿論、サーキットは「カート道」にはなっていませんから、事故を起こしてしまうこともありましょう。しかしそれは全て自己責任で対処ということになっているのです。渋滞マニアにも、それ専用のサーキットがちゃんと用意されております。そこでは、サーキット全体が壮大な駐車場の如く車で埋め尽くされており、信号は殆んどいつも「赤」のままで、これ以上ない渋滞が楽しめるということです。勿論小生は行ったことは無いのですが。
少なくとも普通の市民生活に車が害を及ぼすことは全くなくなってしまいました。
「カート道」のことです。ゴルフ場のカート道路からの発想でこう呼ばれていますが、勿論愛称です。法令上の名称は、「交通監視管制衛星自動制御電磁誘導装置敷設道路」といいます。文字通り従来の道路に車の走行をガイド、コントロールするレールを埋め込んであり、自動車はこのレールから常時発信されている電磁信号により方向や速度などが制御されるという仕掛けです。国土全体のトラフィックは、宙に浮かんだ交通監視衛星が制御しています。
運転者が車に乗り込みエンジンを起動させると、ナビゲーション・システムが自動的に立ち上がります。これに行き先と到着希望時間(これはオプションですが)を入力します。すると、電磁誘導に従い、やおら車が走り出すという訳です。交通監視衛星とコンピュータに制御された完全なオートドライブで、行き先や道路の混み具合、到着希望時間などを管制システムが瞬時に判断し、最適な経路、最短の時間で車を動かしてくれます。
ナビゲーション・システムに入力を終えたあとは、ドライバーは何もする必要はありません。携帯電話でおしゃべりをしようが、読書をしようが、居眠りをしていようが一切かまいません。車間距離もスピードも自動制御システムにより完璧にコントロールされ、安全が保証されています。ですから、本当はかまわないのですが、さすがに車中での飲酒だけは未だに禁止です。「カート道」システムが導入される前、飲酒による事故も多かったし、酒により理性を失ってしまうことへの畏れや警戒感は相変わらず根強いということでしょう。
もともと自家用車はないので、車の運転者はトラックなどの流通関係か、バス、タクシーに限定的ですから、トラックの運転者は目的地での荷持の積み下ろしに備え、居眠りなど体力の温存に努めている人が多いようですし、バスやタクシーの運転者はお客様と談笑していることが多いようです。目的地に到着すると、勿論ナビゲーション・システムが知らせてくれるし、運転者が居眠りをしているとちゃんと起こしてもくれます。
と、こんなところで目が覚めてしまいました。自分自身は自動車そのものには何らうらみがある訳ではないし、普段からバスやタクシーなどに随分お世話になってもいますが、この狭い日本にこんなにも大量の車は必要なかろうと思っているし、一部の人間だとは思うけれども信号を無視したりゴミを置いていくような性質の悪いドライバーも目にするものだから、こんな夢を見たのだと思います。