私の新人の頃 松村 好高
国立工業大学の電子工学科に入学し物性物理講座で卒論を終えた私は、半導体などの素子開発関連作業に従事したく、通信機器メーカに就職しました。
ところが、最初の配属先はコンピュータ工場の周辺機器装置の設計部門であり、作業内容は希望とは異なり入出力装置の回路設計やその実装設計が中心であり、ここでのプログラム開発は装置をテストするための機械語命令によるものでした。配属先で最初に従事し数ヶ月担当した作業がプリント基板の実装設計でしたので、この作業のことを今でも思い出すことができますが、中でも鮮明に覚えていることとしましては、つぎの2つのことがあります。
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先輩から指示された条件での実装に悩み、図面が夢にまで出てきたこと。これは、夢から覚めた後ほんの少しだけ条件を変えれば解くことができることに気づき、無事解決することができました。
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回路設計者から渡された設計図面どおりに実装設計を終えた後、設計変更があり、対応せねばならなかったこと。新人の私は一度設計されたものに変更が生じるとは思ってもおらず、やっと作業を終えたと思ったら実は完成ではなかったことに驚きとほんの少しの無念さを感じた次第です。
しかしながら、実はハードウェアの世界での設計変更はいつも発生するため、実装設計においてもこれに耐えうるような工夫を行っておけば比較的容易に対応できるということに後で気づき、この工夫に気づいた後では気楽になりました。
この工場では、周りに電子回路設計者だけではなく機械設計者や工業デザイナーの人達もいましたが、過去に設計された図面の管理と図面の再利用の頻度の多さも実体験することができました。
その後、中央研究所配属となり、今度は半導体素子関連作業かと期待したものの、配属先はLSI・CAD研究室でした。ここでは、LSI設計や製造のための故障検出・診断、実装設計のための配置・配線アルゴリズムの開発、電子回路・論理回路シミュレータの開発が目的でしたが、最終的に実現するのがコンピュータ・プログラムであるため、アルゴリズム開発のための線形・整数計画法のみならず、プログラミングの基礎であるグラフ理論、クヌース大先生のFundamental
Algorithmの原著などを輪読会形式で学ぶことができました。この研究室で初めてコンピュータ・プログラミングを経験し、実際にも多くのプログラムを自分で作成したりしましたが、同時にコンピュータメーカの方に発注することも経験しました。当時は標準的な設計書もありませんでしたし、通常の事務処理アプリケーション・プログラムではなく自分で考えたアルゴリズムをプログラム開発者の方に分かってもらう必要がありましたので、自分一人での作業では最後に作成していた設計ドキュメントを発注先の方に理解しやすいように記述するにはどうしたら良いかで頭をかかえたことがあったことを記憶しています。
このLSI・CAD研究室での作業には満足していたのですが、当時の通産省からの研究資金が削減されて研究室のメンバーも縮小されることになり、私自身もLSI回路設計の研究部門に配属替えになることを申し渡されましたので、これを契機に敢えて学生時代にはもっとも関心がなかったコンピュータ・ソフトウェアの世界で働くことにしました。上記のとおり、プログラミングの経験はありましたが、当初ソフトウェア業界での実作業スタイルはこれまでとは大きな相違し愕然とした時期もありましたし、工場や研究室では余り他社の方々と会話をしなくても良かったのにソフトウェア業界では多くの人達とのコミュニケーションをとることに戸惑いを感じた時期もありました。そんな時思い返していたことは、自分で決意して入った業界であるため自分の決意を大切にしよう、ソフトウェアだけではなくハードウェアの世界でも学んだことを大切にしよう、というものです。今振り返ってみても、ソフトウェアだけではなくハードウェアの世界も経験したことが役立ったと思っています。
[2002.04.26]
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