私の健康法 新田
謙治郎
過去の大病からの反省
私はこれまで3つの大病をしている。17歳のときの肺結核、42歳の時の甲状腺癌、61歳に発病したアスペルギルス。後者二つは、今も私の日常生活に影響を与えている。病気から学んだ反省点を先ず書いてみよう。
結核の発病の最大原因は、中学校のときは卓球部で毎日3時間以上練習していたのに、高等学校に入ってから勉強に専念すると決めて運動をばったり止めてしまったことだと医者に言われた。環境を急に変えることの体への影響の大きさを体験した出来事だった。
甲状腺癌が見つかったのは昭和54年の夏だが、あとで振り返ると昭和48年の健康診断の時に「首に小さなしこりがあるようだから、定期的に検査するように。」と言われていた。けれど、仕事の忙しさにまぎれてすっかり忘れてしまっていた。昭和54年になって、ある徹夜明けの仕事場で、なんとなく首を触って、ゴルフボールくらいの大きさの塊りがあることに気がついた。一緒に徹夜した部下が、「新田さん。その瘤は数ヶ月前からありましたよ。」という。帰って写真を見たら、正月に家族と一緒に撮った写真で、すでに大きな瘤があったことがわかった。早速病院に行くと、即入院そして手術ということになり、甲状腺の全摘出を行ったが、既にリンパ節に転移していて、それ以降殆ど毎年のごとく、14回もリンパ節摘出の手術を受けることになった。自分の健康状態を自分で把握し、対処していなかったことが、このようなツケになって跳ね返ってきた。
平成8年11月、米国駐在中にアスペルギルスを発症した。といっても、すぐに病名がわかったわけではなく、微熱が続いた原因がアメリカの病院では突き止められず、年末に一時帰国したとき高熱を発して入院し、様々な検査の末の1月末になってやっとアスペルギルスと診断された。結核の後の石灰化した空洞の中に生えたカビ(アスペルギルス)が肺に侵蝕することで発病するこの病気は、極端に体が衰弱した時に発病するらしい。思い当たる原因の一つが、風邪を引いた事にある。即ち、この年に限って、いつも7月の暑い時にしてもらっていたリンパ節癌の手術を仕事の都合で11月に受け、1週間で帰米した。すでに零下まで冷えるボストンの気候に手術後の衰弱した体がついて行けず、風邪を引いてしまったことが引き金になったようだ。以後2年間、死亡率70~90%という難病と、時には死線を彷徨いながら戦うことになる。この病気を良く知っている友人が「お前、よく生きているな。」と言ったのが、妙に頭に残っている。
ここ3年間は、お陰でアスペルギルスも落ち着き、休火山の状況にある。とはいうものの、アスペルギルスに左肺を食い荒らされたため、慢性気管支炎が残り、毎日激しい咳と痰に苦しめられている。
このように、それぞれの大病にかかったきっかけを考えると、反省すべきことが多々ある。健康維持には、病気になってからの治療よりも予防ないしは早期発見が大切だといわれている。その意味で、私は落第生だったなと思わざるを得ない。
健康を保つ7か条
10年前、ボストンで「健康を保つ7か条」という日本人の医者の講演を聞いた。
1 バランスのとれた食事をする。
2 睡眠は7時間とる。(少なくとも6時間。)
3 週に2回は運動する。
4 生活を楽しみ、愉快に暮らす。
5 煙草は人を灰にする。(肺がん患者の80%は喫煙者。)
6 酒は上手に飲む。(グラス一杯の赤ワインなら最高。)
7 年に一回は人間ドックに入る。
大病をする前に一番欠けていたのは、2、3と7だ。酒も上手に飲んでいたとは思えない。
アスペルギルスの再発を防ぐには、「体力、免疫力の強化が勝負」といわれている。最近自分の健康を考えるとき、上記の7か条が一種のチェックリストになっていることに気付く。
健康維持のための心がけ
自分は煙草は呑まないので、チェックすべきは6項目になる。それに、人間ドックの方は、アスペルギルスの予後のため、2週間に一度病院に通い、レントゲンや血液検査を始終しており、後のチェックは胃カメラと腹部のエコー検査だけなので楽である。
「バランスのとれた食事」に関しては、幸い家内が十分配慮してくれていて、ほぼ理想的な食事が続けられていると思っている。食事とはちょっと違うが、健康のためにと飲んだり食べたりするものを多くの方々が進めて下さった。筋肉と黒ゴマと鶏卵を混ぜた物、クコと黒豆と山芋を煮込んだ物、朝鮮人参、ロイヤルゼリー、活性酸素水、等々。それらの中から今も飲み続けているものは、アガリクス(これはリンパ節癌対策)、プロポリス、ビフィズス菌(整腸剤)、ビタミンEC(TVで、免疫力強化と血液さらさらに良いと聞いたから)である。これに医者から処方されている薬を加えると15種類にもなる。毎週日曜日は、1週間分の朝、昼、夜の薬を分類して袋に入れるのに1時間は費やされる。
「酒は上手に飲む」については、晩酌に焼酎の水割りか赤ワインをグラス一杯。これは、私にとっては食欲増進に大いに役立っている。おかげで、退院時に入院前より7キロ減っていた体重を最近5キロも取り戻した。元々酒は好きな方なので、たまに外食すると同席者に釣られてつい何杯も飲みたくなるが、ぐっと我慢することを体得したようだ。
「睡眠」については、通常少なくとも7時間はとっているが、土、日など9時間ぐらい寝ることがある。我ながら良く眠れるなと思うが、それなりに昼間消耗していて体が睡眠を欲しているのかも知れない。特に昼間激しく咳き込むと、相当に体が消耗するのを感じる。
問題は「運動」だ。気候の良い夏から秋にかけては、家内と1時間程度の散歩はする。近くの、恩田川という水がきれいで鯉や鴨が住み着いている川岸に、格好の散歩道がある。但し、冬とか春先の花粉症の季節には、どうしても外に出る気がしない。スポーツクラブにでも入ればよいのだろうが、今のところ入っていない。家でストレッチ体操をやったり、朝6時半の3チャンネルの朝の体操をやったり、階段を上がったり降りたりしているが、とても十分な運動とはいえない。今後の課題だ。家内は、退職したら一緒に社交ダンスをやろうと言ってくれているが、それも悪くないなと思っている。運動ではないが、辻さんに勧められて「気功」を2年間やってみた。但し、自分が意志薄弱なために長続きがしなかった。やるならもっと徹底してやらねば駄目だと反省している。
「生活を楽しみ、愉快に暮らす」について思い当るのは、健康維持あるいは病気回復に大変重要なのが「心の持ち方」だということ。家内はよく、「貴方の『病気なんかに負けてたまるか』という精神力には感心する」と言ってくれる。但し、本人にはそれほどの自覚がなくて、「どうせたいしたことは無いだろう。」という「ノー天気」というか、楽観的なところがある。それも、健康維持には良いことかも知れない。但し、自分の病気に無関心ということではなく、病気についての知識の吸収には貪欲な方なので、医者もいい加減にあしらえないと思っている節がある。重要なのは、病状についての正しい知識を持つことと、「その後どうなるか」と心配することとは、区別すべきということだ。いろいろ心配してくよくよしても何のプラスもなく、むしろそのストレスで免疫力を落とす結果となると思っている。幸い楽観的な性格がプラスして、「そんなことは考えまい」と思うとすっかり忘れるくらいになれるのはありがたい。
現に、今も、手術を受けるために入院ベッドの空きを待っている状態だ。5年間放りっぱなしになっていた頸部の腫瘍が肥大し、手術が必要になったためだ。今回の手術は大がかりなため、1ヶ月の入院、さらに3ヵ月後に10日間の再生手術のための入院が必要となる。いつ入院が決まるかという落ち着かない日が続いているが、手術を受けることに対する不安感は全く感じない。
明日にも入院が決まる可能性もあるので、この投稿文を急いで書いている。
[平成15年3月12日]
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