「私のリラックス術」 高村 賢治
記憶が定かではないのですが、「煎った豆を囓りながら、豪傑の評伝逸話を読む楽しみにまさるものなし」と言ったのは荻生徂徠ではなかったかと思うのですが、私のリラックス術?の一つにその類の読書があります。
イーリアス、オデュッセイア、トロイ戦記、などとつい格好をつけたくなるのですが、本音を言えば、ドラゴンボールやバガボンド武蔵、蒼竜伝といった漫画の方が、気楽にリラックスできます。ドラゴンボールは全巻買って揃えていたのに、子供が勉強しないという女房殿が次第に怖くなり、古本屋に売ってしまったのを今となって後悔しています。
二つ目は「笑いに勝るリラックスはなし」というわけで、昔は新宿の末広亭に良く出かけたのですが、今は週に一度テレビ番組の「なんでも鑑定団」と言う番組で、大事にしてきた掘り出し物のお宝が、なんと真っ赤な偽物と鑑定されてしまう、極々人の良い、あるいは多少欲のなんとかも張った人の「不幸」を見ては喜んでいます。およそ今までの人生で値の張る買い物で成功した試しがないせいか、同情しつつも癒されてしまいます。
三つ目は「 体を動かすリラックス」ですが、これは週に一度スポーツジムに出かけて、弱った足のリハビリ歩行と軽い筋トレ&ストレッチ、最後に水泳と約3時間汗をかいています。特に、水泳は浮力があるおかげで、筋力が弱ったなりに泳げるので楽しみです。隣のコースに若鮎のような女性スイマーが入り、水中ですれ違う機会があったりすると、予定の距離を無理して伸ばして泳いだりしてしまいます。普段は、元気いっぱいのおばあさんスイマーに(85歳の方も居ます)あおられながら、マイペースで泳いでいます。
四つ目は昨年から始めたもので、リラックス術といえるかどうかという代物なのですが、映画のシルバー夫婦割引で、夫か妻が50歳以上であることを提示すると、一人千円で封切り映画が見られるという「特典」の活用です。去年この特典を活用して家内と見た映画には、ハリーポッター、アーサー王、トロイ、ピーターパン、ラバーズ、ハウルの動く城、などがあります。そういえば、結婚前に女房殿とは寄席には何度か行ったけれど、映画を見に行った記憶が定かでないので、新発見の楽しみでもあります。
五つ目は、息子を運転手にしたドライブ&ディナーです。息子は漸く運転免許を取得し、運転するのが楽しい。息子が運転してくれると、ドライブ先のレストランで、私も女房もビールが飲める、と言う訳なのです。運転手つきで外で酒を飲みながら食事というのは、なかなか応えられない楽しみです。行き先は埒もなく、皇居一周で近場のデニーズだったり、お台場、海ほたる、など東京近郊の子供、若者がおおぜい集まるところだったりしますが、リラックス術としては、子供の多い所のほうが勝れているような気がします。自分の子供が大きくなってから、トンとそういう所へ行く機会が少なくなりましたから。
六つ目は、学生時代の友人との飲み会です。高校時代、大学時代の親しかった友人が、東京在住だったり、東京に戻ってきたことも幸いしているのですが、気の置けない友人と政治談義や経済談義で気炎をあげるのは実に楽しいです。クラス会で大勢集まるのも勿論楽しいですが、気の合う友人2,3人で好きな話題を肴にゆっくり飲むというのは、確かにリラックス術の一つに違いありません。
七つ目は、会社の倶楽部活動です。その倶楽部は 「蝉丸くらぶ」というクラブで、月に2回ほど夕方の6時から小一時間、色々なルールで「坊主めくり」をするクラブです。クラブ員はそれぞれ源氏名を持っていて、小生は「柿本鷹麻呂」を名乗っておりますが、「千恵蝉丸」「佳代猿丸」「信野小町」など、源氏名から伺えるようにクラブ員には若い女性社員が多く、のほほんとした遊びに華やかさがあり、少ない男性社員クラブ員はその雰囲気に酔うばかりです。今年からは30人一首のカルタ取りも始まるようで楽しみです。(いきなり百人一首では覚えるのも大変、時間もかかるというのが理由のようです。)
八つ目は、下手の横好きの短歌作りなのですが、本研究会の創作欄に投稿するようなちゃんとした短歌は滅多に作れず、もっぱら言葉遊び的な短歌をつくることや、大好きな李白の漢詩の「反歌」としての短歌を詠んだりとかですが、集中している時間はとてもリラックスできているのだと思います。
最近頑張ったのは単母音だけで詠む短歌で、
・たわやかな様あたたかな貴方から華やかな文(あや)爽らかな和歌(アの母音)
・威儀ひしぎ紫衣ひきちぎり道に行き虹に入り日に聖(ひじり)生き生き(イの母音)
などと遊んでいます。
九つ目は、全身の機械マッサージです。実はこれは、三つ目で述べたスポーツジムに新しく備え付けられたマッサージ機なのですが、その進歩たるや以前のものとは隔世の感がある精巧なできばえで、マッサージを始める前に機械が背骨の位置や体型を確認したうえで、個人にあったマッサージをしてくれます。この機械で15分間のマッサージを受けるのは至福の時間です。家が広ければ、本当に買ってしまいたいぐらいです。
十番目は語るも恥ずかしく、健康にも良くないと思うのですが、夜中に食べるチョコレート味のラクトアイス?風のアイスキャンデーです。酔って帰った夜は体もほてり、胃も火照り、水を飲むだけではどうも満足感が足りずに、女房殿にせがんでこれを出してもらいます。つくづく餓鬼だなあと思うのですが、夜中にアイスキャンデーを楽しんでる50男もそうは多くないだろうと思いつつ舌鼓をうつのは、密やかな楽しみです。夜中に水飴をなめた坊さんの気持ちが「分かる分かる」などと思いつつ食べています。
以上、リラックス術とは言えないものばかりですが、これだけ手を変え、品を変えても、布袋様のようににこにこしていられないのだから、徳がないものだとつくづく思ってしまいます。